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断罪後の公爵令嬢  作者: まるや
12/61

12、行方

「殿下、殿下が仰っていた場所にレティシア様と思われる方を発見致しました!」

「よし! 話はできたか?」

「いえ、それが…こちらの気配を従者に気づかれ気配のない方に逃げてしまい、追った先には誰もおらず足取りを終えませんでした。」

「やはりそうか。追われていると認識させてしまったか…。」


「我々と気づいてはいないかもしれません。実はある宿で殺人事件がありました。

そこに泊まっていた男女がいたらしいのですがその内の女性がレティシア様のようでして……殺人事件があったその日に消えたそうです。殺されていた男たちはその街では有名なゴロツキで人身売買などかなり悪どい事をしていたらしいのです。街の人間の話ではレティシア様に目をつけ後を追っていたと言うのです。

恐らく殺したのはレティシア様の従者?共にいる者ではないかと思われます。その従者もかなりの美丈夫らしくかなり2人とも目を引いているようでした。」

「変な連中に目をつけられ逃走中と言う可能性もあると言う事か……。」

「はい。」


「ふぅー、今回は目撃情報ではなくうちの者が直接見たのだろう? どうだったのだ間違いないか?」

「はい、間違いございません。」

「そうか! 陛下に報告しよう。」


「あの…殿下…差し出がましい事ですが……もし…レティシア様の連れている者が…従者ではなかった場合…恋仲だった場合 殿下はどうなさるおつもりですか?」

「本当に差し出がましいな。

ふっ、私はレティシアを信じているよ。

だがこれだけは言える、レティシアは優秀だが公爵令嬢だ いくら勉強が出来て知識があっても1人で旅はできない。

その従者の様な男がいなければとっくにレティシアは危ない目にあって旅など続ける事は出来なかったと言う事だ。


そしてあの…ノーマンが引き起こした事件は偶突然の出来事でレティシアには事前には準備出来なかった。

あの森のレティシアの痕跡には他人が近寄った痕跡はない。

つまりは転移した先で会った者か共に転移した者か……、それは分からない。

だがレティシアは私の婚約者だ、命を救われたからと言って共に旅をする様な愚か者ではない。理由があって共にいるのだ。」


「……出過ぎた事を申し訳ありませんでした。」

「いや、心配してくれたのだろう? 有難う…ただ信じたい そう言う部分も正直あるのだ。私たちの12年は確かに信頼関係を築いてきたと、ね。」

「ふふ 勿論です! きっと大丈夫ですね!」


各地から寄せられるレティシアの情報はやはり王妃教育などで学んだ地に行っていると確信した。『自分の目で見てみたい』そう言っていた事を思い出して、やはりレティシアは真面目だな、そう思うと笑みが溢れた。


早く見つけてやらねば。

心新たに決意した。




グレッグ・ハーマンは将来有望視されていた騎士候補だった。

順調にいけば騎士となり数年下積みすればグレッグの実力であれば近衛騎士にもなれただろう。近衛騎士は王族の警護やヴァルモア王国の守り神である竜神様の警備、それらに関する秘匿されし事項があり身元を保証されない者は上層部には食い込めない。

つまり出世は見込めないと言う事だ。


ハーマン伯爵家は代々騎士の家系で過去には騎士団長を務めた者もいる。騎士道を尊び正しき精神を重んじている家柄、 

『自分に打ち勝て、欲に負けず正しくあれ、勇敢であれ、名誉を重んじ、弱き者を救え 死を恐れず誠を貫け』小さい頃から幾度となく言われてきた言葉。


あの断罪の場で王宮から出せれた後、一度父の元を訪れた。


「父上…この度はご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした。」

「……………、レティシア・マルセーヌ公爵令嬢にありもしない汚名を着せたとは事実か?」

「ですがあれは! テレーズが虐められていると言うので彼女を救うつもりで!」

「レティシア様を嵌めようとしたのは事実か、と聞いている。」


「・・・・・事実です。」

「浅はかだな。国家の重要機密ゆえ お前は知らない事が沢山ある……、私はレティシア様を間近で拝見した事があるが とても真面目な方だ、そして努力の方だ。その身に重責を負い その責任と期待に必死で応えて来られた。幼き頃からずっと……。

仮にテレーズ嬢が助けてくれと訴えた事に対しお前は… お前の目で事実を確認したのか?  一方の意見だけを鵜呑みにし確認を怠ったのではないのか?

お前はそれで騎士を目指していると言えるのか?


お前は6歳から12年間も休みもなく努力し続けてきた 無実の女性を貶め誘拐し殺害した。お前は胸を張って騎士を目指していると言えるのか?

レティシア様の影武者が学園に通っていると知ってお前はどう思った? 影武者は国の暗部の者だ、その者が何の為にテレーズという者に嫌がらせをすると言うのだ?

全てはその女 妄言に踊らされたのだ。


私はあの時 家を取り潰されてもやむ無しと思ったのは本心だ……この国は一部の犠牲の上に築いた平和なのだ。感謝を忘れてはならないのだ! お前は騎士になる資格はない。


お前はもうこのハーマン家とはなんの関わりもない。

二度とこの門をくぐることはない。お前とは他人だ、そして平民のお前とは今後関わることもないだろう。

だがこれだけは言っておこう、達者で暮らしなさい。さようならグレッグ。」


「ふっぐ…ふっぐ 父上! 父上!! 許してください! 許してください!! ああ 私が愚かだったのです! 許しでくだざいーーー!!!」


最後に言葉を交わした後、二度とグレッグの父は振り返ってはくれなかった。


グレッグも家に立ち入る事は許されなかったので結果 身一つで追い出されたカタチとなった。暫く門番の前で泣くグレッグに屋敷にいた騎士見習いたちも切なそうに見つめた。

だが、ハーマン伯爵に申し渡された通り誰も声をかける事はなかった。


トボトボ歩き出し、昔 よく剣を振る稽古をしていた森の中へ歩いて行った。

そこは小さい頃と何も変わっていなかった。


グレッグは1本の木の前に来ると木肌を優しく撫でながらまた涙を流していた。

ここなら誰かに見られることもない。心を開放して思い切り泣いた。


小さい頃からひたすらに騎士になる事だけを目指して頑張ってきたのに、自分の愚かさで全てを台無しにしてしまった!!

父上の言う通りだ! テレーズの言葉は何とかしてやりたいと思わせたが冷静に考えればおかしな事ばかりだった。

レティシア様の取り巻き連中に叩かれたり突き飛ばされたりされたと言っていたが、そもそもレティシア様が取り巻きと一緒にいるところを見たことなどない。

教科書を何度も破かれたり捨てられたりしたと言っていたが、普段はロッカーにしまい鍵をかける…机は位置は早い者順で座る為 場所を固定されていないのにどうやって盗むと言うのか……。制服を破られたと言った、確か4回いや5回か? その度にテレーズは『もういいの。この通り新しいのを買ったから』そう言った。……よく考えればテレーズの実家がそんなに何着も制服を買えるほど裕福とは思えない。

はっ! 令嬢たちにテレーズが囲まれていた時! レティシア様の取り巻きだと思い込んでいたが一緒にいるところを見たこともない…と言うかあの者たちは テレーズにレティシア様が虐めをしていたと証言した者たちだ!!目立たず雰囲気を変えていたから気づかなかったが…なんて言う事だ! 何もかもテレーズの自作自演だったのだ! テレーズの言葉に一片の真実もなかった!!

はっ!……こちらが行ったレティシア様の反応が思う様なものではなかった、そうあの時も、あの時も!影武者なのだから当然だ!職務で成り代わっているのだから! あー、なんて事だ……父上の言う通り冷静な目で! 自分の目で事実を冷静な見ればおかしい事に気づけたのに!!


あ゛あ゛―、私は自分で自分の夢を潰し、武門一家のハーマン家を貶めたのだ!!

今更 後悔しても取り返しがつかない!!


どんなに後悔して懺悔しても元に戻る事はない…、死んでしまいたいほど辛くても 喉も乾くし腹も減る…だが金もない。

あるのは体とボロボロになった夜会服だけ、惨めだ。騎士を目指しながら無実の女性を殺そうとしたのだ、その思考が何よりも今は恐ろしい。


グレッグは気力を失った。

木洩れ日から差し込む光をただ見ていた。

学園での日々を思い出していた。それから懸命に剣を振っていた昔を思い出し自分の剣を撫でながらこの剣を買ってもらった日のことを思い出していた。

失ったモノが大切すぎてただ涙を流していた。




王宮では待ちに待っていた報せに安堵の笑みが溢れた。

「レティシア様が生きておられたのですね!!」

「ああ、目撃情報だけではなく今回はうちの兵が見かけたとの事だ。」

「良かった…良かった本当に良かった…。」


「でもお逃げになっているのでしょう?」

「う゛っ ああ。スタンビーノの見解ではヴァルモア王国に戻れば殺されると思っているのではないかと言うのだ。レティシアは断罪と称しスタンビーノも含む側近たちから国外追放を申し渡され崖から落とされ 普通であれば死んでいた、つまり本気で殺されると言う事だ。

しかもレティシアは今 ならず者達からも逃げている様で追いかけるとすぐに転移で逃げてしまうらしい。」

「なんと……。困りましたな 我々が敵ではないとどうしたらお伝えできるものやら。」


「ああ、どうにかしてレティシアにあれはノーマン達の謀略だと伝え……我々をもう一度信じて貰えればいいのだが。」

「話しが出来なければ 信じていただくのも難しい。

スタンビーノ王子殿下が接触して説得できれば…いえ 理解いただき戻ってきてくだされば良いですね。」

「うむ。」




ヘルラド国のカチャック街にレティシアとシエルは来ていた。

「シエル…カチャックは思ったより寒いのね。」

「ティア様 まだお寒いですか? もう一枚羽織るものをご用意致しましょうか?」

「ううん 平気よ、でも手を握ってもいい?」

「…勿論です。これで良いですか?」

「うん 温かい有難う。」


この寒さであの山を思い出していた。

霊峰と呼ばれ人が容易に近づける場所ではない。ただ、その頂上から見る御来光は格別と言う。高く険しい山を人の足で登るには命を賭けるほどに厳しく登頂は難しい。なれどその山頂から見渡す景色は格別で、『この世の支配者になったかの様』と言う者もあれば、『ちっぽけな自分を顧みる場でもあった』と言う者も、『その世界に吸い込まれそうになって身を預ければ落ちて真っ逆さまにあの世行き 怖い場所だった』と言う者もいた、それぞれが様々な感想を胸に抱いたが一貫して言われているのは、『あのご来光を見て生まれ変わった様な気がした』と言うものだ。


私がそれを見る事はないだろうけど 私だったらどんな事を思うのだろう?

そんなふうに思った。

スタンは『支配者の様な気持ちにはなりたくないな』そう言った。

何故?と聞くと、『自分が王家の人間だからじゃない、眼下に広がる世界には私たちが守るべき人々の生活がある。それを踏みつける様な感想は持ちたくないってだけ。竜神様に頂いた加護で私たちはこうして生きてこられたのだ、ただそれが有難いって思うから。』

それを私も肯定した。王妃教育を受けなければ知らなかった秘密。1000年以上も見返りもなくただ私たちを庇護下におき守ってくださっている。

今もこうして私が旅をできる様にシエルを遣わせてくださっている…本当に有難い。何故竜神様はこんなにも寛容なのかしら?私にできる事はないのかしら? いつかシエルは消えてしまうのかしら? ふぅ………今は考えても仕方のないことね。


それにしても 生まれ変わる……か。


「どうかなさったのですか?」

「ううん、次はどこに行こうって考えていただけ。うー寒い。今夜は一緒に寝てもいいでしょう?」

「ふぅー、ティア様は次期国王になる王子の婚約者って覚えてます?」

「意地悪! ……だってシエルはとっても温かいんですもの。」

「後で部屋の状況を見てから考えます。」

「うふふ 有難うシエル!」


私の睡眠についても考えて欲しいな。

ふーーー、最近夢を見ると泣いている事が多いようだ。夢については覚えてないと教えてくださらないが…、まあ一緒に眠れば悪夢から起こして差し上げられるか……言い訳か…な?


宿に着くと普通の部屋だった。

2人で1つの部屋、もう何の抵抗もない。

着替える時困るぅ〜なんて心配はない。だってシエルの指パッチン1つで全て解決だから。

あ〜、でも日本人として湯船にゆっくり浸かって目を閉じてだらーーんとしたい。

『うぃーーーー』なんて声がつい漏れてしまうほどリラックスしたい。


「シエル もう寝る?」

「ええ、構いませんが…少し髪をとかしましょう。よし これで寝ている時に邪魔にならないですね。 そうだ、ここは寒いのでホットミルクを飲んで寝た方がいいかもしれませんね。 パチン はい ゆっくり飲んでくださいね。」

「シエルは 本当の従者じゃないのだからここまで気を遣わなくていいのよ?

竜神様に申し訳ないわ。私はシエルを大好きなお友達って思っているのに…寂しい。」

「有難うございます。 私も大好きなティア様のお世話をしているだけです。気になってしまうからつい口出ししてしまいます。嫌ならやめますが?」

「嫌じゃないわ! 嫌じゃない、ただ居心地が良すぎて…いつもシエルにはして貰っている事が多くて 何も返せていないから…。」

「なるほど。ではティアって呼んでもいいですか?」

「勿論よ!」

「ではティア…友人として貴女の助けになりたいだけだ、気にするな。」

「うふふ その口調良いわね。お兄様みたい。」

「兄…か、うん 良いかもな。飲めた? ほら体を冷やさない様に布団に入って、ゆっくりお休み。」

「シエルは?」

「…ふー、了解そっち詰めて。」

「うん。やっぱりミルクよりシエルの方が温かい。」

「お休みティア。」

「お休みシエル。」



カチャックへは樹氷果を見に来た。

吹き荒ぶ雪と風で出来た樹氷にごく稀に美しい氷の実がなるのだ。

勿論 食べられる物ではない、時間をかけて凍った樹液が色を纏い透明な球体になる事があるのだ、それを樹氷果と呼んでいる。

ただ樹氷果は樹氷のどこに出来るかもわからず、吹雪いていればまず見つける事は出来ない。風が強ければ落下してしまう…。運が良ければ偶然 雪や風が止み 広大な見渡す限りの樹氷に中から見付けられる事がある、と言うレアなもの。故に見られた者には幸運が訪れると言われている。


今まで見たと言う者は殆どが琥珀色をしていたと言う。1人赤い色のものを見た事がある者がいたらしいが、琥珀色の光の加減ではないか、とも言われている。


教科書を見た時は『わぁ〜 素敵ぃぃぃ浪漫だわぁ〜!』なんて思った、ここを選んだ時も深く考えてなかったけど……こんなに寒いだなんて書いてなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


目もまつ毛が凍って瞼が重い、鼻は息を吐くと鼻毛が解凍吸うと鼻毛も鼻の内部も凍る。耳の穴もちょっと凍ってる気がする痛い! 皮膚は切れる様な感じで痛い!! 手足も感覚がない! うぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!! やめておけば良かったーーー!!!

樹氷果見る前に死んじゃうよぉ〜!

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