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誰かのそら似  作者: 風祭トキヤ
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伊丹家の侍女

こんにちは。

久しぶりです。

先日、真夏の全国ツアー福岡公演を両日配信という形で見させていただきました。

乃木坂を知らない人でも楽しめるような作品にしますので、よろしくお願いします。

今日で私はここから去る。伊丹家の侍女としての最後のお仕事を終えたところだ。

先日、伊丹家の人たちからお疲れパーティーを開いてもらった。カラオケでたくさんの歌を歌ったり、侍女の先輩からのお手紙をもらって少し泣いてしまった。

この家から出て行った人たちも私に会いにきてくれた。久しぶりに会えて嬉しかった。


「このカーテンともお別れかぁ…」


5年間手入れをし続けたカーテンに触れて、風に揺れるのを感じた。

ここで同期の子とたくさんお話しした。男子には話せないようなガールズトーク。

今までどうだったと結構聞かれるけど、楽しかったとだけ答えたけど、本当は一言では表せないくらい激動の日々だった。

あの時先輩に背中を押されてここにいて、同期のみんなと会わなければここまで続けることもなかった。

大好きな先輩に出会い、色々なことを教えてもらった。大好きな後輩にはいつも甘えてばっかで先輩らしいことは何もしてあげられなかったことはごめんね。


「終わったよ〜」


親友が私に駆け寄る。ちょっと水に濡れていたので、多分お風呂の掃除をしていたのだろう。


「なんでシャンプー持ってるの?」


「なんかきれててさ〜、変えとかないと先輩にキレられちゃう」


「先輩いつも怒るよね」


こんな他愛のない話をするのももう終わりなのかと思うとまた泣いてしまいそうになる。

同期も笑っているけど、きっと悲しいんだと思う。そんな顔をしている。

当初は長い髪だったけど、今はショートの親友。本当に綺麗で可愛い。

実は私はロングの方が好きっていうのはここだけの話。


◇◇◇


親友は仕事に戻り、私は一人で中庭に出た。

いつきてもやっぱりここが一番好きだなと思う。

もうすぐこの庭にも紅葉が見れる。毎年見て、毎年紅葉をしおりにすることが密かな趣味。

ここにきて、こういった趣味が増えた。ドライフラワーとかも先輩に教えてもらった。

少し前の話だけど、伊丹家から出て行った人で一人結婚した人がいた。

その人はまだSNSをやっているけど、子供も授かり、幸せな家庭を築いている。

正直私はまだ恋愛をしたことがない。

彼氏がいて、ここを出るわけではない。地元に帰って、地元で働きたいからだ。

けど、家庭に憧れはある。同期や先輩からも幸せになってねとありがたいことに言ってくれた。

好きな人と出会い、子供を授かり、おばあちゃんになってもその人と一緒にいるような人生を歩んでみたい。

けど好きはどう違うんだろうか。同期、先輩、後輩に思う好きと男性に思う好きの違いはなんだろうかと考える日々。


友情と恋愛はどう違うんだろう。


けどこれを考えるのも人生の一部なんだと思う。

高校を卒業して、大学に行かずにこの場所に来た。

なぜかというと特にやりたいこともなかったからだ。

高校の制服というのが私は好きだ。

なぜかというと人生の一部で、高校3年間の思い出が私にとって大切なもので、今でも制服を部屋に飾っている。

高校の時はできなかったなあと思うものも今ではできるようになっている。

お掃除や洗濯、お料理などできなかったんじゃなくて、やってなかっただけなんだなと今は思う。

生まれ変わらせてくれてありがとう。


◇◇◇


わたしがあなたを綺麗だなと思ったのはわたしたちが初めて伊丹家にきた6月。

一人が伊丹家を出て行く時だった。わたしたちにしてみれば初めてのお別れだった。

その人とわたしたちが出会ってまだ短かったが、とても優しくしてくれた。

わたしもあなたも泣いていたよね。

その時に伊丹家で先日と同じようなパーティーをした。

次女見習いだったわたしたちは参加していいのかわからず、部屋の隅でそわそわしていたが、出て行く先輩がわたしたちを呼んでくれた。

少しお酒臭かったけどとても楽しい思い出だ。

朝起きるとその人の部屋からには何も無くなっていて、空っぽだった。

それを見て、初めてわたしは泣いてしまった。

あの人はもうここで生活することはないのだろうと思うと出会った時からの記憶が込み上げてきた。

一人で泣いていた時、あなたがきて慰めてくれたね。


「だめだね、こういう機会何回もあるのに…」


「そんなことないよ。私もとても寂しいし、昨日泣いちゃった」


「けどさ、やっぱ悲しいし、こんなに毎回泣いてたら、お仕事に支障が出ちゃうよ」


「さよならに強くなる必要ってある?」


あなたのあの言葉を聞かなかったら、お別れの印象が変わらなかった。

今までありがとう。こんなにも誰かを愛おしくなることはなかったよ。

その微笑みは忘れない。

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