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アメフラシ  作者: 紀希
3/4

大人の事情



ある帰り道。


また雨が降った。


休日は井藤と居る事が多くなった。


週7の学校。


悪くはない。


コンビニとスーパーの玉子焼きを、


片っ端から週変わりに食べるのが、


ほぼ終わりかけてきた頃。


帰り道で、井藤の姿を見付ける。



その日も雨だった。



声を掛けようとしたが、


誰かと一緒に居た。


傘も差さずにずぶ濡れで


男性を抱える様に井藤は歩く。



しばらくそれを見ていた。


すると、一緒に居た男性が、


突然井藤の顔を叩いた。


私は思わず、駆けていた。


何でかは分からなかった。


心咲「井藤!!」


倒れる井藤を起こす。


心咲「井藤に何するの!?」


知らない男性は酒に寄ってる様で、


顔が赤く、アルコールの臭いがする。


男性「誰だね君は。



、、人の家庭の事情に


口を出さないでくれるかな?」


私は雨に濡れる。



心咲「私、確かに関係ないけど、、


井藤に手を上げるのは間違っていると思います。」


井藤「もう、いいから、、



大丈夫。


帰れよ。」


俯きながら井藤は立ち上がる。


男性「そうだ。


帰りたまえ。



君には分からないだろう。


これは、大人の事情だ。」


そう言い。


井藤は男性を抱える。



私は男性の手を取り、


頬をおもいっきり叩く。


心咲「これが大人の事情なのね?



うんざりよ、、


本当に。



大人だからって何でもしていいと思ったら


大間違いなのよ!!!



勝手に何でも決めて、


自分達の都合が悪くなると、


決まった様な文章を発して。



そんな大人。


大人なんて言わない!!」


私は井藤の手を引き、走った。



水溜まりの水が跳ね、


私の脚にかかる。


そんな事。どうでもいい。


雨が降る中ふたりは走る。


井藤「心咲!」


心咲「何!?」


井藤「心咲。結構やるな!」


心咲「まあね!」


ふたりは笑いながら、


ただ行く先も無く、走り続ける。



気付いたら私はあの公園に来て居た。


東屋に雨宿りする。


雨は止みそうにない。


井藤「心咲にカッコ悪い所。


見られちまったな。」


井藤は雨の降る空を見つめる。


心咲「まあ、うん。


私も泣いてる所。


見られちゃったしね、、」


雨の音は公園に響き渡る。



井藤「俺、転校するかな、、」


心咲「えっ、?」


不意を突かれた様に私は動揺する。


心咲「転校、しちゃうの??」


井藤「前々から離れようとはしてたんだ。


でも、父さんが心配でさ、、



母さんは俺を産んでから


少しずつ、体調が悪くなって、


小学校に上がる前に死んじまったんだ、、



それから父さんは酒を呑む様になって、、



元々酒は呑まなかったから、、


弱い癖に呑んでは暴れて、、



今じゃどうしようも無くなっちまった。



見兼ねたばあちゃんが来いってさ。


近所からもあまり良い目で見られてないしな。



心咲が叩いてくれて、何か吹っ切れた。」


心咲「そう、、、」



別に好きな訳じゃない。


ただ、私の隙間に埋まっていた、


欠けていた"ナニカ"が


再び失われてしまいそうだった。



井藤「心咲もさ、


俺ん時みたいにびしっと。



両親にぶつかってみれば?



何かが変わるかもよ?」


私が求めていたのは何だったんだろう。



私は何から逃げて居たのだろう、、



彼を引き留める言葉も見付からなく、


翌週。


彼は転校した。






































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