第2話 能力の戦い
私の名はネイ・ファスカ。歳は21で、アバランチという能力使いである。能力の内容は『九尾』。九尾とはもちろんあの神話に伝わる伝説の妖怪の事だ。そんな能力を私は15の時に身についた。だが、身についた私の代償は大きかった。私が能力が付いたおかげで色々な不幸が訪れていた。まず一つ目は両親を失ったこと。父親は私が殺し、母親は誰かに殺され、6年間私は孤独の人生を送っていた。孤独の人生を送っていく中で私は二つ目の失態を犯した。それは友人を傷付けてしまった事。友人、それはククル・ベルカの事である。彼女にはいけない罪を犯した。
2002年、6月3日、朝9時。
時は6年前に遡る。
「ネイ~~!?起きてる~~!?」
いつも通りながらうるさい怒声がドアの奥から聞こえてきた。うるさい女だ。相変わらず。
「ネイ~~!?いるんでしょ~!?」
いるに決まっている。当たり前だ。だが、行きたくない。ドアに向かう気力もない。
「もう!勝手に入るわよ!?」
「お、おいククル」
ドアが開く音が聞こえた。鍵をかけるのはめんどくさいからしていない。いやする必要も要らなかっただろう。
「ネイ~いるの~?」
「ネイ、お邪魔するぞ」
二人の声が聞こえてきた。
私の知ってる親友達だ。私の事を心配しに来たのだろうか。でもそんなの関係ない。もうこれで終われるのだから。
「ネイ~いい加減学校に来ないと先生におこられーー」
一人の少女は絶句した。なぜならベッドの上で少女が頭に銃を構えていたのだから。
「っ!!?ネイ!!!」
少女はすぐさま少女の銃を奪おうとした。
バンッ!
「うぐっ!!」
銃声が響いた。少女はギリギリ頭から銃を逸らさせたが自身の右目に当たってしまった。
「っ!?ククル!?」
一人の少女が怪我した少女のそばに駆け寄った。少女の右目は出血が酷くなっていた。
「ネイ!お前なにを」
もう一人の少女も絶句した。なぜならもう一度頭に銃を向けていたのだから。
「っ!!」
少女はすぐさま銃を逸らさせようと奪おうとした。
バンッ!
銃声が鳴り響いた。今度は上手く逸らせたようだ。少女は銃を奪い、そして手の届かない場所へと投げた。
「なにをしてるんだ!ネイ!」
「ハァ…ハァ…」
息が荒々しくなっていた。これまで以上に自分の精神が崩壊しつつあった。いや既に崩壊していると言っても過言ではない。
「死なせてくれ…」
「はぁはぁ…?いまなんて…」
「私はもう死にたいんだ!!
「…!!」
パシンッ!
少女はネイの頬を叩いた。それもこれまでにない怒りのビンタを。
「お前はそれでいいのか!?ネイ!」
「っっ!」
ネイは驚愕した。今まで誰にも顔を叩かれたことなんてなかった。親からにも。誰にも。
「お前が死んだら誰が悲しむと思っているんだ!!」
「っ!!」
ネイはハッと我に返った。自分がどういう状況におかれてるいるのかを。そして友人を傷付けてしまっていた事を。
「ううっ…ううっ…」
自分の不甲斐なさにネイは失望した。これまで以上に。人生で一番の屈辱を。
そんな過去が私にはあり、一度は心が折れかけてはいたが、ちゃんと前を向き、ちゃんと自分らしい生き方をしていくと決めたのだ。
そして私は、ある目的を作ることにした。キッカケは本棚を漁っている時に出てきたとある本だった。その本は『神』についての本だった。私の両親は元『神』なのだが、その頃の私は1ミリも『神』の事なんて興味がなかった。けれど、両親の事は好きだった。『神』という存在すら関係なく大好きだった。だが、そんな『神』という存在を持った両親はもう居ない。両親の居ない生活を私は6年間も続けてきた。そして私は決めた。他にも『神』が居ないかを探す旅に出る事に。
所変わって、6月4日午前11時。荒野を駆け巡る車がそこには居た。
「ううっ…ネイ~…」
「ったく…頼むから吐かないでくれよ…」
「ううっ…む、むり…」
ククルは今でも吐きそうな表情をしていた。そりゃそうだ、時速100kmの速度で回しているのだ。しかもアクセル全開。普通の道路なら高速違反で捕まっているだろう。だが、ここはアメリカ、普通の道路なんてものはあまりない。ある所はあるが、ネイの走ってる場所には道路なんてものはなかった。ただ荒野を駆け巡るだけの車がいるだけだ。
「せめてスピードもうちょっと落としてよ!」
「落とした所でお前の酔いが治るのか?」
「ううっ…それは…」
本当に面倒がかかる女だ。なんでついてきたのだろうか。
「はぁっ…ったく少し落としてやるよ」
ネイはそう言いながらスピードを100kmから80kmまで落とした。
「ううっ…ダメ…むり…」
ククルは我慢が出来ずこの走ってる中道路の外で吐いた。
「おいって…!吐くなって言っただろ」
「む、無理に決まってるじゃない!バカ!」
バカはお前だ。バカは。
「少しは人の気持ちを考えなさいよ!」
「考えた所で吐いた時点でもうおしまいだろ…」
全くもってそのとおりである。
「ん」
ネイはふと車に付いているナビを見た。
「おいっそろそろ着くぞ」
「えっ、ほんと!?」
二人が目指している場所がようやく到着するようだ。
「私たちの最初の旅の街だな」
「わぁ~楽しみ~!」
見えてくる風景は徐々に『都会』という言葉を表すかのようなでかい街だった。
「意外と大きい街だな」
「まさに『都会』って感じね!」
「だな」
「あぁ~楽しみだわ~!ネイ、早く急いで向かって!」
「お前なぁ…」
先程まで弱気になってた奴が急に早変わりするのはやっぱり好奇心というものだろうか、とは言っても、私自身も楽しみなのは正直な本音である。
「頼むからもう吐かないでくれよ」
「分かってるってば!」
ネイはもう一度勢いよくアクセルを踏み、何も無い荒野をもう一度駆け巡るのであった。
アメリカ、中央区オリオン街。この国で最もでかい街であり、最も有名な街でもある。この街を知らない人間はほぼ居ないと言っても過言ではない。ネイとククルはこれからこの街にお世話になるであろう。
「わぁ~でかい街~!」
「あぁ、ほんとにでかい街だな」
「ねぇ、見て!クレープ屋さんだって!!」
「へえ~意外な店があるもんなんだな」
確かにこんな街でクレープ屋があるのは珍しいと思う。普通の街でもあまりないと言える。
「私ちょっと買ってくるね!」
「お、おい、勝手に行くなよ」
まったく面倒のかかる女だ。それはともかく、私自身もクレープを食べたいのは本音だ。
「らっしゃい!いくつお買い求めだい?」
「3つ下さい!!」
「あいよ!」
「ったく、また太るぞそんなに食べたら」
「なによー!?いいじゃない別に」
女が太るというのは、如何せん嫌われやすいイメージが私にはある。ちなみに私の体重は40kg台で、ククルが60kg台である。
「あいお待ち!クレープ3つ出来たよ!」
「ありがとう!」
3つのクレープを受け取り、1つはネイの分、残りの2つはククルの分である。
「はい!ネイ!」
「ありがとう」
ネイとククルはお互いにクレープを分け合い、そして互いに一口食べ合った。美味い。流石都会の味と言えるべき美味さだ。
「ん~!!美味い!美味いわこのクレープ!」
「あぁ、美味いなこれ」
これほど美味い食べ物は他にないだろう。いや、例え他にあったとしてもこの味に負ける食べ物はないと私は思う。そんなクレープに夢中になってる二人に突然の出来事が起こった。
ドンッ、とククルが誰かとぶつかった。
「むっ!?」
クレープに食べてるのに夢中だったククルが誰かとぶつかったと同時にもうひとつのクレープを落としてしまったようだ。
「ああ!私のクレープ!!」
ぶつかった少女は咄嗟に自身の能力を解放し、床に落ちるクレープを寸前で受け止めた。
「っ!」
ネイはその光景と少女の能力に驚いた。私達以外にも他に同じ能力使いが居たことに。
「これ、あなたのクレープかしら?」
少女は受け止めたクレープをそのままククルに手渡した。
「あ、ありがとう」
「ったく、ちゃんと前見て歩けよな」
「ううっ、ご、ごめんなさい…」
「いいわよ別に。クレープ、無事に済んで良かったわね」
ぶつかった少女は何事もなく平然と話を続けた。
「あなたたちここらじゃ見ない顔ね、流れ者かしら?」
「流れ者?」
「あなたたちみたいな旅人の事を言うのよ。」
流れ者。他の地方からここに訪れることをそう呼ぶらしい。
「へぇ~そうなんだ」
「まあ確かにここに来るのは初めてではあるな」
「そう、ならこの街には気を付ける事ね」
「気を付ける?」
「ええ、この街は流れ者を狙う盗賊達が沢山いるから」
「と、盗賊?」
「なんでそんな奴らが私達みたいな旅人を狙うんだ?」
「さあ、それは私にも分からないわ」
「なんだそれ」
「ただ噂で聞く限りでは金を盗まれたり、物を盗まれたり、おまけには人の死体が出ることだってあるわ」
「し、死体!?」
「ええ、死体よ」
「え、えらく物騒な事件だな」
「だから一応、念の為にあなたたちにも忠告をしておいてあげるわ」
流れ者を狙う盗賊…一体何が目的でそんな事をするのか。
「忠告って、大体あんたは何者なんだ?」
少女はポケットから手帳らしきものを取り出し、そしてそれを開き二人に見せた。そこには『特務捜査課、ノア・メル』と書かれていた。
「け、警察!?」
二人は驚愕した。今まで話していた少女がまさかの警察官だった事に。
「あまり上から喋るような言葉は慎むようにしてもらいたいわね」
「す…すまないな」
「まあいいわ、今回だけ特別に許してあげる」
「えっ!ほんと!?」
「ただ、次からは容赦なくなにか変な事を起こしたりした場合その時は…分かってるわよね?」
二人は同時にゴクリと唾を飲んだ。この少女から呆気ない威圧感が漂ってくるのが二人には感じた。
「あ、あぁ」
「それじゃ、私はこれで」
ノアと呼ぶ少女はそのまま二人を置いて立ち去るのであった。
「こ、怖い人がいるもんだね、ネイ…」
「あ、あぁ…そうだな…」
二人は唖然としたままその場に残されるのだった。
夕方の18時半すぎの事。ネイとククルはオリオン街を満喫していた。
「はぁ~もう疲れた~」
「私も、疲れたよ」
オリオン街の広場を楽しく満喫した二人はつかれが溜まりまくっていた。
「あぁ~あのクレープまた食べたいなぁ」
「おいおい…まだ食べるのか…」
「だって~一番美味しかっただもん」
色々なものを食べてきた二人だが、ククルの中では最初に食べたクレープが一番美味しかったらしい。
「仕方ないな…ほら」
ネイは自分の財布からクレープ代をククルに渡した。
「え!いいの!?」
「ちゃんと私の分も買ってこいよな」
「まっかせて!じゃ、いってくるね!」
ククルはネイからクレープ代をもらい、すぐさまクレープ屋さんへと走り向かった。
「ったく、相変わらず忙しいやつだなあいつは」
全くだ。どうしてあいつが一緒に旅に付いてきたのか今でも不思議に思う。私一人でこの旅を終えたかったのが正直な本音だが、けれどあいつと一緒にいるのも別に悪くない。むしろ楽しいと今でも思っている。
「先にホテルのチェックイン済ませてくるか…」
ネイはオリオン街にあるオリオンホテルへと向かっていった。
ホテルの中は豪華でこの街で様々なホテルがあるが、それでも最も大きいホテルと言っても過言ではなかった。
「いらっしゃいませ」
「すみません、二人で泊まりたいんだけど」
「個室か共同ルームがありますがどちらに致しましょうか」
共同ルームなんてものがあるのか。けど今更あいつと一緒に寝る利点なんてあまりない気がするな。
「個室でお願いしてもいいか?」
「かしこまりました。こちらが個室の鍵になっております」
鍵の札には303と305の番号が書かれていた。
「ありがとう」
ネイは二つの鍵を受け取り、すぐさま時間を確認した。
「19時か…」
時刻はそろそろ夜を迎える時間となっていた。ここでふとネイはある事に思い出した。
「そういえばあいつ、帰ってくるの遅いな」
そう、ククルがまだ帰ってきてないのである。
「あいつまさか…」
ネイはそんな事ないだろうと思いすぐさまクレープ屋さんへと向かった。するとクレープ屋さんの前には誰も居なかった。
「いらっしゃい!嬢ちゃん!」
「すまない、さっきここでクレープを買いに来た女を来なかったか?」
「んん?あーそういや買いに来ていたねぇ。けど、その女の子すぐに消えたから結局買わずじまいだったよ」
「消えた?」
「あぁ。クレープを渡す頃には居なくなってたんだよ。」
ネイは一瞬冷や汗をかいた。まさか自分の勘が当たるなんて思ってもいなかった。
「あいつもしかして…!」
ネイはすぐさまククルを探そうとした駆け走った。
「あぁ!嬢ちゃん!どこにいくんだ!?」
クレープ屋さんの声は既に遠く、ネイには聞こえていなかった。
所変わってまだ居なくなる前のククルの場面。ククルはそのままクレープ屋さんに向かっていた。
「おじさーん!クレープちょうだーい!」
「あいよ!ちょいとお待ち!」
ククルはわくわくしながらクレープ屋の前で待っていた。というのもつかの間。ククルの視界が突然悪くなった。
「えっ!な、なに!?」
そして袋を被せられ、そのまま何処かに運ばれていった。ククルはすぐにもがこうとしたが時既に遅く、縛られていた。
「離してよ!ねえ!!」
必死に叫ぶが、声は彼らには届かなかった。いや、聞く気もなかっただろう。
何分経っただろうか。謎の集団達はとある場所に着き、そしてククルを袋から出した。
「ちょっと!何なのよ!」
「うるせぇ!」
一人の男が、剣を取りだし、ククルに刃を向けた。
「こ、こんな事してなんになるって言うのよ!」
もう一人の男が銃を取りだし、頭に銃口を向けた。
「黙って言うこと聞きやがれ!」
「ひっ!?」
ククルは一瞬焦った。自分がどういう状況に置かれてるかを今理解した。
「兄貴、こいつ大した金持ってやせんぜ」
兄貴と呼ばれる大柄の男がその姿を現した。
「あぁん?なんだと?」
「ただの貧乏野郎ですぜ、こいつ」
「けっ、ハズレを引いたって事か」
ククルは『貧乏』という言葉に少しイラついた。
「貧乏じゃないわよ!バカ!」
その言葉は兄貴と呼ばれる男にも届いた。
「てめぇ!今なんて言った!?」
「バカって言ったのよ!バカって!!」
小柄の男が怒りに触れたのか刃を更に近付け、紙を取りだした。
「おいお前、この方が誰と存じているのか分かっているのか!!」
「知らないわよ!誰なのよ!」
「てめぇマジで知らねえのか!?この手配書を見ても!!」
小柄の男はククルに見やすいように手配書を広げた。手配書の内容はこう書いていた。
『業火のボルケノ』と。
「ぼ、ボルケノ?」
「本当に知らないのか!?お前!?」
「し、知らないわよ」
大柄な男がここぞとばかりに前に出た。
「てめえ…この俺様を知らないだと…?」
「ま、まさか…」
「はっ!この俺様を知らないって事はてめえ流れ者か」
「だ、だったらなによ!」
「ハハハ!そうかそうか」
ボルケノが銃を取りだし、ククルに銃口を向けた。
「流れ者にはルールがあってだなぁ」
カチャリと銃を鳴らし、そして指先に引き金を構えた。
「この俺様に殺されるというルールがあるんだよぉ!!」
「い、いや!誰か!助けて!!」
「誰も来やしねえよ!ハハっ!」
ククルは震え焦った。このままでは殺されてしまう。このままなにもできずに終わってしまう。
「じゃあな、嬢ちゃんよぉ!!」
「っ!!」
そしてついに引き金は引かれた。
バンッ!!!
「ぐああ!!!」
撃たれたのは先程まで刃を向けていた小柄の男だった。
「えっ!?えっ!?」
ククルは状況が追いつけず、混乱していた。
「だ、誰だ!?」
その場にいた全員が銃声が鳴った方へと向いた。そこにいたのは紛れもないネイだった。
「女一人に男数人が囲うなんて卑怯にも程があるんじゃないか?」
「て、てめえ…何者だ!!?」
ネイはもう一発銃を取りだし、そしてこう言い放った。
「ただの流れ者だよ」
すぐさまネイは周りにいた4、5人を自身の銃で撃ちまくった。
「ぎゃああ!!」
弾は当たっていた。真っ直ぐに。ネイは高台から降りククルの縛られていたロープをすぐさま刀で斬った。
「逃げろ!ククル!」
「う、うん!」
「ちっ!逃がすかぁ!」
ボルケノはすぐさまククルの方へ銃を向け、そして放った。
カンっ!
だが、弾はそのまま床に当たっていた。
「な、なに!?」
咄嗟にククルは自身の『影』の能力を使い、そしてそのまま次なる影へと移動し、逃げていった。
「の、能力使いだと!?」
ボルケノは一瞬焦ったがすぐさま体制を立て直し、ネイの方へと銃を向けた。ネイはすぐさまボルケノの方へと向き、そして銃を放った。
バンッ!!
だが、弾はボルケノの体の空を切った。
「っ!!?」
ボルケノも引き金を引き、ネイに向けて銃を放った。
バンッ!ガキン!
ネイは来る弾丸を刀で捌いた。そしてネイは心の中で思った。なぜ弾丸が空を切ったのか。どうして体をすり抜けたのか。
「はっ!俺に銃は効かねえよ!」
やはりそうだった。こいつには銃は効かない。
「お前…なにかの能力使いか…?」
ネイはすぐさま思った。なにかの能力を持っているのではないのかと。じゃないと先程撃った弾丸が空を切った理由が通らない。
「フハハハ!よく分かったな!そう、俺様は能力持ちだ!」
思った通りだった。答えはすぐに見つかった。
「俺様の名は業火のボルケノ!俺様の能力は全てを燃やす力!だからお前の銃など効かねえんだよ!!」
要するにこいつの能力は『火』。燃やす力とはつまりそういうことなのだろう。
「今から俺様の力を見せつけてやろう!」
ボルケノは全身の力を引き出しそしてそれを解き放った。
「業火!!」
ボルケノの体全体が火になりそしてそれが爆発へと変わった。
「っ!!」
ネイはあの技が危険だと分かり、すぐさま後を引いた。
ドゴーン!!
大規模な爆発が起き、その場にあった地面、家、全てが焼け野原となった。
「ケホッケホッ、いくらなんでもやりすぎだろ…!」
ネイはギリギリ広場へ逃げる事に成功出来た。あのままあの場にいたら自分も燃やされてただろう。
「ネイっ!」
既に広場に逃げていたククルがネイの側へ駆け寄った。
「大丈夫?!ネイ!?」
「あぁ…大丈夫だ」
「なんなのあいつ一体」
「とりあえず逃げるぞ、ここに居るとまた奴が…」
安堵をしていたのもつかの間、突然の殺気がネイの背中に襲ってきた。咄嗟にネイはその殺気の方へと対応を行った。
ガキン!!
殺気を向けてきたのはやはりボルケノだった。
「てめぇら…生かして帰さねえぞ!!」
「ったく…往生際が悪いなお前…!」
ネイはもう片方の腕で銃を取り出しそしてボルケノの方へと向けた。
バンッ!バンッ!バンッ!
3発、ボルケノの体に撃ちつけた。だが、弾丸はまたしてもボルケノの体を空を切った。
「ハッ!まだ分からねえのか!俺様に銃は効かねえ!!」
ボルケノは続けざまにネイに攻撃をしかけた。
ガキンッ!ガキンッ!
ネイの刀とボルケノの炎の剣が互いにぶつかり合っていた。ぶつかり合ってる間にネイは1発ずつ銃をボルケノに撃ちまくっていた。効かないと分かっていてもそれでもネイは撃っていた。
「効かねえって言ってんだろうがぁ!!」
ボルケノは後を引きそして口から大きく息を吸い込んだ。
「火炎砲口!!」
吸い込んだ息は炎の球へと変わり、ネイに向けて発射された。
「っ!ククル避けろ!」
「えっ!?」
ネイは炎の球をギリギリかわした。ククルも咄嗟に自身の能力を発動し、それをかわした。
「ちっ!ちょこまかと動きやがって!」
ネイは銃を2、3発ボルケノの方へまた撃ちまくった。だが、やはり弾丸はすり抜けるようだった。
「さっきからパンパンと銃を撃ってきやがって…俺様に銃は効かねえって言ってるだろうが!!」
ネイはクルクルと銃を回し、そしてついに諦めたのか、銃をしまった。変わりに刀をもう一本を抜き始めた。
「確かにお前には『銃』は効かないようだな」
ネイの状態は現在左腕に刀、右腕にも刀と、両刀を持ち構えていた。
「ハッ!ようやく分かったか、だがなぁ刀に持ち替えただけでそれでも俺様を斬る事はできないんだよ!!能力を持っていないお前にはなぁ!!」
ピクリとネイの眉が動いた。能力を持っていない?
「へぇ…そうか、だけど」
一体いつ私が能力持ちじゃないと思われていたのか。
「いつ私が能力を持ってないと思っているんだ?」
「な、なんだと?」
ボルケノが一瞬その言葉を聞いた瞬間焦りがネイには見えた。そして。
「見せてやるよ、私の能力を」
ネイは静かに目を閉じ、そして自身の能力を徐々に高めた。そして徐々にネイの背中から黒い影のような存在が現れた。
「な、なんだその能力は!?」
ネイの背中には9本の尻尾。そして5本の爪。更には狐のような顔つきの形がボルケノには見えた。
そうこれこそ、ネイの能力『九尾』である。
「これが私の能力『九尾』だ」
ネイはそのままボルケノの方へ走り向かった。
「く、くそったれめがぁ!!」
ボルケノは再び大きく息を吸い込んだ。
「火炎砲口!!」
先程よりも大きい炎の球をネイに向けて放った。
高速に動いていたネイはすぐさまボルケノの火炎砲口をジャンプをして避けた。そして自身の能力を全開にし、ボルケノを斬りつけた。
「妖刀・燐炎!!」
ボルケノの体を両断し、そしてボルケノの体には斬られた跡が残っていた。
「ぐはあっ!」
斬られた跡からは大量の血が吹き出した。そしてそのままボルケノは地面に倒れた。
「こ、この俺様が…や、やられるだと…」
だが、息はまだ残っていた。ネイは刀を2本直し、そして銃を一丁取り出した。
「じゃあな、楽しかったよ」
「や、やめっ」
バンッ!
今度こそ弾丸はボルケノの頭を撃ち抜いていた。そしてそのままボルケノは息絶えた。悪夢の事件はこれにて終わった。
所変わって夜の21時半、オリオンホテル、共同ルーム。
「なんで共同ルームにしたのよ!」
「お前を一人にするとダメってことが分かったからだ」
「ううっ…反省してます」
「まったく…ほんとに反省してるのかぁ…?」
「次から気を付けるから、ね?」
「ダメだ」
「む~!!」
ククルは怒ったのかほっぺ膨らませた。まったく誰のおかげで助かったのか。
「ほら、さっさと寝るぞ」
ネイはくたくたになったのか、すぐに体を寝かせたいようだった。ネイは服を脱ぎズボンも脱ぎ、裸の状態になった。
「ちょ、ちょっと待って」
「なんだよ急に」
「あんたここでもその姿で寝る気なの!?」
「いいだろ別に、お前以外居ないんだから」
「いくらなんでもあんたねぇ…」
ネイはいつもこの裸の状態(下着付き)で寝る癖がある。それはククルでも知ってる事だった。
「はぁ…まっいっか。それがあんたらしいもんね」
「今更それを言うのか」
「はいはい、じゃあ電気消すわよ」
「ああ」
カチッと電気が消えククルも一緒にネイの隣へと駆け寄る。
「こうやって寝るの久々ね」
「いつぐらいだっけかなあいつとも一緒に寝たのは」
「レイのこと言ってる?それ」
「当たり前だろ、他に誰が居るんだ」
「ふふっ、そうだったわね」
レイ。過去に私をドン底から助けてくれた親友。共に戦い、共に話し、共にいがみ合った仲の人間だ。けれど彼女はある日、突如あの町から転校をしてしまった。別れも何も言えずそのまま消えてしまった。今彼女はどうしているだろうか。
「ふわぁ~私は寝るぞもう」
「はいはい、じゃおやすみ、ネイ」
「おやすみ、ククル」
こうして二人の最初の旅、一日目が終わった。