生きてまた、とある朝
生きてまた
また、行かなければならない。
静けさから離れなければならない。
あなたから遠ざかるのが辛い。
どうしようもないことに戻るとき、
あなたの香りを体いっぱいに、
吸い込んでゆく。
生きてまた戻るために。
あなたの悲しみを癒やし、
あなたの全てを抱きしめるために。
他に何がある。他に何もない。
あるのはあなたと、あなたとの日々と
あなたとの思い出だけ。
戦争に行くわけではない。
恵まれている、そんな国ではない。
たけど、命がけはある。
知らないからやってこれた。
知ってしまって、怖くて震える。
静かな暮らしにも、命がけはある。
生きてまた戻れたなら、
あなたの喜びを浴びて、
あなたの全てにこの身を置こう。
他に何がある。他に何もない。
あるのはあなたと、あなたとの日々と
あなたとの永遠の詩だけ。
とある朝
そろそろ行くよ。
仕事でしばらく帰れないけど、
できるだけ、早く帰るように
するから。
帰ってきたら、
森の湖に行ってみないか。
あそこからの夕日は格別だし、
しばらく行ってないから。
秋になる、そう、夏の端っこ、
ちょうど今ごろかな、
茜色のトンボが飛び交うだろ。
でも、もういないかな。
あの風景、好きだったよね。
ああ、休んでていいよ。
まだ早い、まだ暗いよ
うん、行ってきます。