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美しの王女と死の帝王  作者: クイーン・ドラゴン
第1章 復活した帝王
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5.満月の夜に




ロウは、ちゅん、ちゅん、と鳴く小鳥の(さえず)りで、目を覚ました。

そして、ぼんやりと昨夜、泣き疲れて、寝落ちしたことを理解した。

ロウは、ベッドから起き上がり、大きな欠伸を1つする。

その時。

コンコンと、ドアをノックする音が聞こえた。

「開けていいぞ。」そう眠たさを噛み殺した声で、ロウはドアの向こうの人物に呼びかけた。

「ロウ、よく眠れましたか?」レイチェルがひょっこりと顔を出し、ロウに呼びかけた。

「嗚呼。だけど、眠り足りないな。」再び大きな欠伸をして、ロウは答えた。

「添い寝しましょうか?」レイチェルは、ふざけて、言う。

「いらない。もう寝ないからな。それより、本が読みたい。地図が載ってるのがいい。」と、ロウは、レイチェルに言った。

レイチェルは、小さく頷くと、小走りに出て行った。

しばらくすると、レイチェルは数冊の本を持って来て、ロウに手渡した。

手をひらひらと振って、出て行った。

ロウは、1番上の本を手にとって、読み始めた。

歴史書らしく、ロウの封印された後の時代の事が詳しく書かれているものだった。

(いい本を選んで来たな。)

ロウはそう思いながら、本を読み進めていき、全部読んだ頃には、すっかり暗くなっていた。

ロウは、風呂に入っていないことに気づき、浄化(クリーン)の魔法をかけた。

コンコン、とドアがノックされる。

すると。

ロウの警戒の糸が、ピィンと張った。

ドアの前にいるのが、ロウでも苦戦するような手練れの気配だった。

だが、ロウは首を捻る。

そんな気配は、封印を解かれた時、この国にはなかったからだった。

ロウは刀を帯刀し、ドアを開けた。

そこにいたのは。

レイチェルの兄、王太子のクラウスだった。

ロウは、驚愕に目を見開いた。

クラウスの纏うその気配。

それは、会いたいと願っていた。

ロウの親友、クライスのものだった。

「……ラース…?」ロウは、思わずクライスの愛称を呼んだ。

そして。

ロウは、魔眼を発動させると。

顔をくしゃり、と歪めた。

「……」ロウは無言で部屋へ、引き込む。

ドアを閉めると、ロウは怒った表情で、刀をクラウスに向けた。

クラウスも、笑顔で持っていた長剣をロウに向けた。

クラウスをロウは、鋭く睨みつける。

「……騙されねぇからな。」ロウは、そう言った。

「……どうでも、いいよ。ねえ、飲まない?」クラウスは、窓を指して言った。

「……用意周到な事で。」ロウは、クラウスが隠している酒を見て言った。

声色に少々、呆れが混じっている。

「妹の事で、少し話したくてね。」クラウスは、言うとソファに座った。

しばらくして、向かい側のソファにロウが座った。

トクトクと、クラウスがロウに酒を注ぐ。

そのあと、ロウがクラウスに酒を注いだ。

ロウとクラウスは、酒を飲みながら、レイチェルの話をしていた。

レイチェルの話は、一区切りつくと。

「……お前は、誰だ?」とロウが核心を突く問いを投げかけてくる。

「……君の思ってる通りなんじゃないかな?」とクラウスははぐらかす。

「答えろ。お前は……本当に……ラースなのか?」ロウは、今にも消え入りそうなか弱い声で聞いた。

「……う、ん。そう…だよ……。僕は、クライスだ……。」ロウのその声で、クライスは泣きそうになりながらも、言った。

「ッ!!……そう、か。」ロウは安堵した笑みを浮かべると、そう呟いた。

外では、満月が爛々と青白い光を放ち、あたりを照らしていた。




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