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美しの王女と死の帝王  作者: クイーン・ドラゴン
第1章 復活した帝王
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3.レイチェルとロウ




ラディウスとクラウスが地下室から、出て行き、レイチェルとロウは二人きりになる。

「ロウ様。わたくし、貴方あなたに会ったことがある気がいたします。会ったことがありますか?」レイチェルは、ロウに聞いた。

「……さぁな。勘違いじゃねぇのか?」ロウは、レイチェルをジッと見たが、それも一瞬で興味無さげに言った。

「勘違いではありません。確かに会ったことがありますわ。いつだったかを覚えていないだけです。」レイチェルは、ロウの推測をきっぱりと否定した。

「そ。俺は知らねぇ。」ロウは、やはり興味無さげに言う。

否。

興味無さげに見せているだけのようだ。

内心は、レイチェルと会ったことを覚えているのだろう。

「本当にそう思うなら、自分で思い出してみな。」ロウはレイチェルを辛辣(しんらつ)に突き放した。

「はい。ロウ様は教えてくれ無さそうなので、そうすることにいたしますわ。」レイチェルはそうため息をついて、言った。

「あー、ロウ様はやめろ。ロウでいい。」ロウは、レイチェルに様づけされるのが、慣れなかったようで、そうレイチェルに言った。

「はい、わかりました。ロウ……こ、こうですか?」レイチェルは恥ずかしそうに、頰を赤らめて言った。

「敬語もやめろ。」ロウは続けて、レイチェルに注文する。

「無理です。わたくしの敬語は、癖なのですから。」レイチェルは、ロウの2つ目の注文には、応えなかった。

「何故だ、小娘。」ロウは不機嫌そうに眉をひそめると、言った。

「それよりも、わたくしのことは、レイチェル、とお呼びくださいませ。小娘と呼ばれるのは、不快でなりません。」レイチェルは、可愛く拗ねて見せ、言う。

「……レ、レイチェル……?」ロウは、困惑してレイチェルの名を呼んだ。

その時。

「思い出しましたわ!」レイチェルは突然叫んだ。

ロウは、変なものを見る目で、レイチェルを見る。

「ロウ、貴方わたくしに嘘をつきましたね?」レイチェルは、ロウを睨みつけた。

が。

全く怖くなく、むしろ可愛い。

「何の話だ?」ロウは、それでもやはり惚けている。

「わたくしと会ったことがあるかの話です!」レイチェルは、大きい声で言った。

(そう、あれはわたくしがまだ幼い時。)


レイチェルが、まだ幼い頃の話だ。

レイチェルは、その日、ロウの封印されている地下室に迷い込んでしまった。

そして、ロウに触れ、ロウの意識を覚醒させてしまったのだ。

ロウは、封印を解け、と強要する訳でなく、()()()()()()()()()()、泣くレイチェルを慰めたのだった。

その姿は、冷酷無慈悲な“死の帝王”などでは、なかった。

ただ一人の優しい人間だったのだ。

当時、よく人見知りをしていたレイチェルが心を開いたのは、言うまでもなかった。

レイチェルは、ロウと話した。

母のこと。

父のこと。

兄のこと。

様々なことを。

ロウは、レイチェルの話を黙って聞いていた。

だが。

ロウは、レイチェルを城へ帰した。

まだ帰りたくない、と駄々をこねるレイチェルを諌め、また会えると言って。

レイチェルを帰したあと、ロウは、レイチェルの汚点に自分がならないように、自らの意識を、自らの意思で手放した。

もう、レイチェルに会うことはない、と思いながら。

レイチェルは、それからロウに会いに行くことが出来なくなった。

ロウの封印されている地下室に行ったことがバレたからだ。

そして、今に至る。


「ロウ、貴方はもうわたくしと会わない、と思っていたでしょう?」レイチェルは、拗ねて言う。

「あぁ。もう、ここにお前は来ないと思っていた。ガキほど言ったことを実行しないのはいないからな。」ロウは、少し寂しそうに笑って言った。

「また会えましたね、ロウ。」レイチェルは、花のような笑顔で、言った。

「そうだな。チビだったガキがこんなにデカくなりやがって。」ロウは、そう嬉しそうに、そして、悲しそうに言った。

「……どうして、そう悲しそうにするんですの?」レイチェルは、不思議そうにこてん、と首を傾げて、聞いた。

「………さぁな。レイチェル、お前には、わからんよ。」そう静かにロウは言ったときだった。

ラディウスが、二本の黒と白の刀を持って現れた。

「やっと持って来たか。待ちくたびれたぞ。」ロウは、ラディウスから嬉しそうに刀を受け取った。

「大事なものか?」ラディウスがそう聞くと、ロウは、コクンと頷いた。

「俺がクライスと……いや、何でもない。」ロウは何かを言いかけたが、途中で口を噤んだ。

「出立は、早い方がいいだろう。金と宝石を準備してくれ。明日か明後日の夜に出る。小型竜(ラグ)がいたら、小型竜(ラグ)がいいな。あと、レイチェルが使っている化粧品類も欲しい。レイチェルの変装に使う。ウィッグも欲しい。全部違うやつだ。あとは、何も望まない。」とロウは次々に決めていった。

「…わかった。明後日までに準備する。それまで、待っておくといい。」とラディウスは、言った。

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