表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美しの王女と死の帝王  作者: クイーン・ドラゴン
第1章 復活した帝王
3/13

2.解かれた封印




石柱に磔にされたロウは、烏の濡れ羽色と言ってもいいほど美しい黒髪が、肩で刈りそろえられている。

ロウの衣服は、数百年以上たつと言うのに、破れることもないまま、綺麗な状態を保っていた。

そして。

スラリとした体躯。

引き締まり、身体に薄くついている筋肉で、美丈夫とは彼のためにあると思えるほど美しい。

レイチェルは思わず感嘆のため息を出してしまった。

ロウは、それほどまでに美しかったのだ。

「お父様。どうやって封印を解くのですか?」レイチェルは首を傾げて聞く。

「クライスの手記によると、封印に触れることで、ロウを目覚めさせ、石柱の上に書かれている魔法陣にクライスの血縁者の血を垂らせば、ロウの封印が解けるらしい。レイチェル、封印に触れてみてくれ。」ラディウスは、そうレイチェルに言った。

レイチェルはコクリと頷くと、そっと石柱に触れた。

だが、変化はない。

「ロウ様の身体に触れなければならないなのかしら。」レイチェルは小さく呟くと、ロウの髪に手を通した。

サラリとした、心地よい手触りがする。

その時。

ロウの固く閉じられていた瞼がゆっくりと、開けられた。

その瞳の色は、炎のような深みのある深紅だった。

瞳には、知性と野性の光が感じられる。

「……小僧。クライスの縁者か?何故、故意に意識を目覚めさせた?」深みのある美しいテノールの男声でロウは聞いた。

その瞳は、クラウスとレイチェルを写さず、ただ、ラディウスを写しているだけだ。

「私は、クライスの遠い子孫だ。もう私たちの一族にはお前を守る力が無くなろうとしているため、お前の封印を解くつもりだ。」ラディウスは包み隠さずにロウに打ち明けた。

言っていないこともあるが。

「……お前たちが俺を守るだと?何故、クライスの子孫が俺を守らねばならない?俺は、アイツにとって、邪魔な存在でしか無かったのに。」ロウの言葉には、少しだけ、寂しさが混じっている気がした。

「今やお前は、伝説に語られるような人間だ。戦争の兵器として国々は欲している。そして、この国が戦争の兵器としてロウを使()()することを、他の国の者達は心の底から恐怖しているのだ。私は、私たちは、お前が戦争の兵器として使()()()()ことがないように、守っていた。」ラディウスはそう言った。

「なるほど。邪魔な存在だったって訳か。」そうロウは、顔をしかめて言った。

「で、俺に何をさせようってんだ?タダで封印を解いてくれる訳じゃねぇんだろ?」ロウは、ため息をついて、言った。

「そうだ。私の後ろに娘のレイチェルがいる。レイチェルをこの国から逃がし、追っ手から守ってもらいたい。」そうラディウスはロウへ言った。

「へぇ。」ロウは、今レイチェルに気づいたらしく、その美しさに感嘆の声を出した。

「美しいな。その小娘を俺が守れ、と。」ロウはじっくりとレイチェルを見て、薄く笑いながら言う。

「俺が小娘を守らず逃げたら、どうする?俺を討伐する力は残っていないのだろう?」ロウは、目をスッと細め、言った。

「お前が逃げたら、今、私たちと戦っている国がお前を追うだろうさ。」ラディウスはロウへ言った。

「……面倒だ。いいだろう。小娘のお守りをしてやる。この国の住民として戦ってやってもいいのだぞ?」くつくつとロウは笑い、言い放った。

「それでは、もっと面倒なことになるではないか。」ラディウスはロウとの会話で初めて、顔をしかめた。

「で、小娘のお守りをいつまでしてればいい?」ロウは聞く。

「この戦争が終結し、相手の国が追っ手を放たなくなるまで。それからは、好きにしていい。」ラディウスは言った。

「意外に短いな。一生とか言われると思った。」ロウは珍しく、驚いたように言った。

「私もそこまで、理不尽ではないぞ。」ラディウスは再び顔をしかめた。

「……俺の刀。黒と白は何処にある?」ロウは突然、低い声で脅すように言った。

「私の部屋だ。封印を解いたら、持ってこよう。」ラディウスは、頷きながら言う。

そして。

小瓶に入った真紅の液体を魔法陣に垂らした。

すると。

魔法陣が輝き出す。

パキンッ!

音が鳴って、輝きが治るとそこには、凛と佇むロウの姿があった。

「……やっと……自由だ。数百年もの間待っていた自由……。」ロウは、天を仰ぎ言った。

「さて、私はお前の刀を持ってこよう。レイチェル、ロウを見張っていなさい。クラウス、行くぞ。」ラディウスはそう、ロウ、レイチェル、クラウスの順に呼びかけた。

「見張らなくても、逃げねぇよ。まぁ、いいが。」ロウは、そう言うとどっかりと腰を下ろした。

顔は、美しく格好いいのに、無造作な行動がそれを台無しにしていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ