プロローグ
この話は不定期になります。
血と肉と土のにおいが辺りに広がった戦場の跡地に血を撒き散らした骸の山の上で一人の漆黒の髪の男が立っていた。
体に返り血をべっとりと付けているその男の視線の先には、若く美しい黄金の髪の男がいた。その腰には長剣が帯剣してある。
黒髪の男は金髪の男を警戒した瞳で見る。
金髪の男は鞘から長剣を抜いた。それを見て黒髪の男も血に濡れた漆黒の刀と純白の刀を持った。
「覚悟しろ、『死の帝王』!」金髪の男はそう黒髪の男に叫び、突進してゆく。黒髪の男も無言で、金髪の男へと突進した。
剣と刀がガキィンと音を立ててぶつかりあった。弾いては、攻撃し、攻撃しては、弾かれるという攻防が続いた。
最初に膝をついたのは、黒髪の男だった。金髪の男が来る前に万の軍を蹴散らした黒髪の男も疲れには勝てなかったのだ。
「ぐッ…あ、はぁはぁ…」黒髪の男は肩で息をし、ちらりと金髪の男を見上げた。
「これで終わりだ、『死の帝王』。あの世で己の所業を悔やむがいい。」金髪の男はそう黒髪の男に言った。
「……これで、終われると思うなよ?」黒髪の男はそう言うと金髪の男に放射状の炎を吹きかけた。
慌てた様に金髪の男は、それを避ける。その間に、黒髪の男はスゥっと立ち上がり、金髪の男を倒すために、刀を振り上げた。
疲れの見えた黒髪の男に遅れを取るほど金髪の男は弱くは無かった。だが、金髪の男が簡単に勝つことが出来るほど黒髪の男も疲れは無かったのだ。
そこで、金髪の男は奥の手とも呼べる術を行使した。金髪の男は短く詠唱をすると右手を黒髪の男の前に突き出した。右手に溢れんばかりの光が集まっていく。
「な、なんだと?」黒髪の男はその術を知っているらしく、驚いたように叫んだ。
金髪の男から発せられた光は優しく辺りを包み込んだ。光が終息すると辺りに散らばっていた骸は一つも無くなり、代わりに巨大な石柱に磔にされた黒髪の男が項垂れていた。金髪の男が先ほど使った術は封印と浄化の術だったのだ。
「…後悔…するな…よ?この…俺を封印…したのだ。この先…数百…年の…間、平和は続くかも…しれん。だが、いずれ…俺は…復活する。…その時代…俺に…対抗できる奴が…いると…いいな。」そう黒髪の男が言うと固く瞼を閉じた。
その後、金髪の男は黒髪の男が封印された土地に城を建て、王になった。この物語はそれから数百年後の話である。
私の別の小説「聖女に転生した私は彼の迎えを待っている」もよろしくお願いします。