灯火
「リオン支部で戦闘が起きた様です。 如何なさいますかゼロ様?」
「構わん。 エミも戦闘に関した情報は聞かず伝えずで問題ない」
灯火の本部には基本3人だけを入れることにしている。
私、そして忠実なる私の秘書、あとは幹部を一人。
「ですが、灯火の団員の全てを報告する様に堕天使神書には伝えてしまいました…どうしましょう……」
「それなら今回はもうしょうがないが…そもそも灯火の活動に戦闘行為など必要ない。 今後は一切反応するな」
「分かりました‼︎」
秘書が笑顔を見せ、奥の部屋へと消えていく。
彼女と入れ替わる様に、アグトゥスが現れる。
「マドゥの奴が到着しましたぜ旦那」
「分かった。一応レーノンに門前にいるように伝えておいてくれ」
「承知いたしました」
私は今からある男に会う。
私が最も憎むべき相手であり、灯火を単なる戦闘集団に成り下げさせた張本人に。
奴の暴挙を許し続ければおそらく灯火は残り一月を待たずしてギルドとの全面戦争に発展してしまうだろう。
そして、そうなればおそらく私の狙いは…
その道を阻止するために私は向かうのだ。
既に手遅れだということも知らないままに。
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「さて……」
地下深く。
マドゥは忙しく目と手を動かしながらそこにいた。
モニターには軽く100を超えそうなほど大量の映像が同時に流されている。
「ゼロには伝えた。 ドロシアン達には伝えていない。 プロジェクトΣの警戒はまだしなくていい。 あとは…例のウィルスの進捗か」
不意に手を止めると、マドゥは立ち上がり、暗闇の中に紛れていた『彼等』に声をかける。
それは人でありながら人ではない者。
いや、一方では人が追い求めた究極の形というべきなのだろうか。
「お前ら、仕事だ。 外出るぞ」
彼等が何者で何の為に動くのか。
それはマドゥ以外の人間には分からない。
ただ一つ理解できることはそれが人間の為ではないということだけだろう。
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「奴らはもう動き始めたのか……」
異端なる『神』はその世界の行方を静かに追っていた