戌神
お久しぶりです。
もう少し投稿ペースあげなきゃだめですよね()
ギルド
それは世界の秩序を守るために生まれた組織。
ギルドメンバーは主に対人、対魔族の2種類に分けられているのだが、唯一
ギルドのトップ3だけは両方を兼任している。
一人は『史上最強』を欲しいままにする幻の存在『イブリース・アシャ・ソマノフ』
一人は『カリスマの老兵』と呼ばれる指揮、戦闘共に優れる『雀 李玉』
そしてもう一人は
「ビャッコさん、本当にこっちで合ってるんですか?」
「150年前はここに道があった筈なんだけどなァ…ミスったみたいだわ」
一人で会話を続けるこの少年。
一つの体に無数の魂を宿す神童。
しかしその魂は元からその体に入っていたわけではない。
つまり霊魂
その役割は死した魂を霊界に送るために一度集中させるアンテナの様な物である。
「偉かったのかなんなのか知りませんけど…今ってかなり緊急事態なんですよ⁉︎ 」
「悪かったってェ…」
「ビャッコさんも反省しているみたいですし許してあげてくださいよ。 そこを右に曲がれば確か近道になったと思いますよ」
彼に力を貸す存在。
その殆どが神や物の怪。
人の身でありながら神霊を宿す者。
「ククリカさんありがとうございます…」
「構いませんよ。それよりも早く戦場へ向かいなさい。 貴方の仲間が苦しんでいるでしょう」
「はい!」
「いいカッコばっかしやがって……」
足早に駆けていくその少年。
名を『戌神』
彼はこの戦いの後、一切を語る生存兵として世界から持て囃される。
その裏に潜んでいた無数の暗躍者を知らない者はおそらくギルド生き残りの中でも最もランキングが高いこの少年を讃えるであろう。
これからの世界の未来を担うと期待するだろう。
彼はあくまでもアンテナの役割に徹していただけだというのに。
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ケインズ=メイソンはギルドの中ではかなり特殊な部類に存在している。
決して彼の持つ異能力がが優れているわけでは無い。
決して彼自身の戦闘能力が極めて強い訳では無い。
現に、基本的には雑魚の魔物を殲滅する。
しかし、彼の本質はそこでは無い。
彼は、言葉に優れている。
ハッタリに優れている。
心理戦に優れている。
交渉に優れている。
故に重宝される。
「んで、そのマドゥって奴の所為でそこの嬢ちゃんの寿命が短いってコトだな」
「はい」
エミという少女はマドゥが作ったウィルスにより既に死に瀕していること。
治す方法は現在不明で、マドゥの操縦者を探していること。
ウィルスの進行を止めるためにゼロは自らの異能力を行使し続けていて、既にゼロ自身も死に瀕していると言っても過言では無いほどに体が蝕まれていること。
その全てをシリウスという老人は独断で打ち明けた。
既に消えた劉 神鸞の存在を聞く者はいない。
「じゃ、俺はここから別行動を取る。 つっても独自にそのスカリアって所に向かうだけだから互いに生きてたらすぐに会えるが。 着いてくるかは自由だ。 少なくとも俺は付いてくるのは勧めないけどな」
「どこに行くんですか?」
「なんてことはねェ、仲間も連れてったほうがやり易いと思っただけだ。 それにお前らよりは付き合いが長いし信用できる」
「じゃあ」
声をあげたのはグレイ=ホーリーデイズ
謎の多い灯火の中でも特に謎に満ちた女。
その自らを仲間含め誰にも明かさないスタイルは彼女自身の出生が原因とも言われているが。
「お姉さんが一緒に行ってもいい? こう見えても『ウデ』には自信があるんだけど」
「…自由だ。 来るなら黙って付いてくれば良い。 ただ言っておくが、バレないように遠回りするから利益を考えるなら確実に俺に着いていかない方が…」
「アリガト。後悔はさせないから★」
「…そうか」
それだけいうと、ケインズ=メイソンは自らの目的地に向かって歩き始めた。
グレイ=ホーリーデイズもまた、数度こちらに向かってひらひらと手を振ったかと思うと、直ぐに彼の後に付いて行った。
「シリウスさん」
「どうされましたか?」
「あのまま勝手に行かせて良いの? スパイかも知れないよ?」
「その時はその時です。そもそも我々は既に数の面で圧倒的に敗北している。 これ以上下手に規制を厳しくして人数を減らす位ならある程度自由行動をさせて各地でゲリラ戦的に戦わせた方がこちらとしてはやり安い。 スパイだとしても先程の話など密告するにも値しない様なものばかりですし」
一番の問題はその少数の中の一人が自分なんだけどな、と勇者は心の中で自重気味なツッコミを入れながら次の一手を考える。
リオンでシリウスと名乗る老人に出会い、地下に運ばれた方向と時間を考えるに、あの場所は最初に自分がクレッタとあった場所の辺りだろう。
現に、次に地上に出た時は医者のいた森の付近……
否。
問題はそこでは無い。
否。
これは『この戦い』の問題では無い。
否。
これはこの戦いの根幹に関わりうる問題である。
否。
これは自らがこの戦いに参加『せざるを得なかった』原因の問題である。
否。
これは自らが何の疑問もなく存在していた問題である。
否。
否。
否。
「あれ……?」
「どうされましたか? クレッタ様なら恐らく…」
「そうじゃない」
「…と、申されますと?」
「…いや、何でもない…です……」
「大丈夫ですか? 突然色々なことが起きて疲れが出てきているのでしょう。 少しだけ休まれますか?」
「大丈夫です。 大丈夫ですから……」
自らに生まれていた重大な欠陥。
あまりにも大きすぎて存在していたという事実すらも忘れていた重大な欠陥。
自分の記憶には『穴がある』
いや、そう括るには穴が大きすぎる。
寧ろ逆
(僕の記憶には…)
『魔族に襲われた』という漠然とした過去と『クレッタと会ってからの記憶』以外
勇者の存在を確かめるモノが無い。
親の顔が思い出せない。
あの森までどうやってきたかが思い出せない。
魔族に襲われたのがいつかが思い出せない。
思い出せるのはまるで絵の様な光景。
燃える家、殺される『他者』、魔物の姿。
否。
そこにすら必要なものが存在していない。
そこに自らが存在していた証拠はあるのだろうか。
その絵の様な光景に自らは写っていない。
そこに
消え行く家に
消え行く『他者』に
伸ばす手がない
目を覆う腕がない
現実を濁らせる涙がない
現実から駆け出す足がない
そもそもこの『絵の様な光景』は『光景』なのだろうか。と
だとするならこの戦争のトリガーは自らの誕生では無いか。と
魔族に恨みを持つ人間が何の兆候もなく。
何の記憶も持たずにこの世に生まれ落ちるのと
同刻
魔族が人間領に侵攻する。
そんな偶然が起こり得るだろうか。
両者ともに存在し得ぬほどの偶然。
誘発したと考えるのが当然では無いだろうか。
この戦争は『マドゥが世界を変えるために起こした』のだろうか
『マドゥに世界を変えさせるために何者かが起こさせた』のだろうか
否
そもそも
『マドゥ』を倒してこの戦争が終わるのだろうか。
(僕は……)
この戦争は
『誰の為に誰が起こしたのだろうか』
やっぱりこういうタイプの物語が一番好きです。
自問自答や自己嫌悪の先にある力への意志であったり超人思想であったりに憧れているのかもしれません。




