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その従抗

だいぶお久しぶりになります。

投稿が遅れた理由としては、ストーリーの一部に個人的な懸念事項がありまして、その辺りの関係の調整で時間がかかっていました。

『その辺りの関係の調整』については完全に終了した訳ではないので、これからもゆっくりとした投稿ペースになると思いますが、応援していただけると嬉しいです。

アイザック・ジレンマはどんなに過酷な戦場においてもその顔に負の感情を見せることがなかった。

強いてそれに準ずるとするならばそれは敵対する筈の相手に対する憐れみや苦悩。

だがそれは決して敵の有力を憂うものではなく、自らの無力を噛みしめるための表情。

あくまでも敵対という前提を覆すものであった。

彼女が常に持つ旗は明らかに攻戦用の代物ではなく

だがしかし目の前に存在する敵には一撃たりとも入れさせない。

彼女はそれ程までに強大な存在であった。


「貴方は能力を使われないのですか?」

「私も君と同じだ…人を不用意に傷付けられない能力でね」


アイザック・ジレンマは能力を持ち合わせている。

アイザックとして担う事になったその能力は『境』を司るもの。

『自身とその他との境界を無くす』という難解極まりながらも未だ見切った者はいない確かに強い能力。

自らの身に傷が宿ったことはない。


「それに君に攻撃を試みたところで徒労に終わるだけだろう…『非暴力(アラガワズ)にして不服従(シタガワズ)』だ」

「なら貴方はどうやって私と戦おうと?」

「展開がスムーズで助かるな」


イヴィルは悠々とジレンマに向かって歩いていく。

右腕を自らの体の前に突き出してはいるが、それはまるで戦闘の構えには見えない。

もしくはそれが既に彼自身の能力を活かした戦闘態勢なのかもしれない。

兎角、その時点で確かに分かることといえば

2メートルを超える彼から伸びる普通よりはそうであるが、一組織を束ねるには心許ない程に筋肉質な腕が低身長な彼女の首に位置しようとして…


「…‼︎」

「私としても君に危害を加えるというのは心が痛むが…安心したまえ、生命の危機は脅かさない」


その腕は決して首を締めない。

首筋を沿うようにして右腕でなぞる。

ただそれだけの行為の筈なのに


「う、動かない…⁉︎」

「君は気絶するだけだ、きっと次起きた時には世界はずっと平和になってい…」


イヴィルの声がそこまで紡いだその瞬間

アイザック・ジレンマの後ろから轟音が響く。

元々そこに位置していたのは『記憶』にて三番手とも名高いヘイムダル・トーンポエムが警備していた筈だ


「なんだか面白そうなことしてるじゃねぇかよォ」

「貴方は…」

「アイザックではないな…何者だ」

「お前達と同じ『強い人間』だ…それ以上に必要な情報があるか?」


チェイス

灯火最強にして制御不能な怪物はここでもう二人の怪物と邂逅した。

使命のために強く在ろうとした三人の三つ巴の戦いが人知れず始まろうとしていた


_________________________________________


「…ソレ、今戦わせるのマズイんじゃない?」


時を同じくして

全く別の場所からもまた同じ世界が観測されていた。

イブリースが指差すのはイヴィル

場所は違いながらも、そこには確かにイヴィル・アルカードが写っていた。


「ならどうするんだ? 今から俺が行って止めてこいと?」

「ン? そのつもりだったんだケド…」

「全く…人使いが荒いな」

「じゃあヨロシク…」


「アイザッククン♪」


イブリースと場所を同じくして

その隣に存在していたのはアイザック・モノ

アイザックファミリーの純血派にして最強の男がそこに存在していた。


「地上最強の名をここに轟かせてやろう」


曰く『人類史上最高の希望』

今一つ曰く『人類史上最大の破壊者』

破壊を以て全てを治める最強の男

その戦争への到来は即ち戦場の極致

かつて見たことのない

終末の予言と重なる程の圧倒的な混沌を迎える事と成る。


_________________________________________


「成る程…ではこの『存在』に真実を解明出来るほどの価値はないということですか……」


こことは遥か遠くに位置する世界に生きる二人組

ナルセとカネヒラはその電話と共に希望すらも全て奪われたようだった。

実際にそうであるのだろう。

不老不死の狂人

そもそもが噂でしかなかったそんな存在がこの騒動と共に複数箇所で発見されるようになった。

そしてそんな騒動は時間が長引くにつれて『一人の人間』が『各地』を『暴れて回った』というあり得る話から、『一人の人間』が『各地』で『同時』に『暴れ回っている』という怪奇へと変貌を遂げる。

それが表す事態は有り得ない可能性を生み出していた。

故に、

彼らはそれが『既存では』有り得ない可能性と定義していた。

要するに『枠組みの外』で何かが動いたのである。と

真実を求める彼らにとってそれは蜘蛛の糸のような僥倖であった。

この存在が真実を伝える『外』からの渡り鳥だと思っていた。

畢竟、彼等が望んだ有り得ない可能性は、決して有り得ないものではなく、人間の悪意によって増幅された可能性の中に収まっていたのであるが、それは彼等によって把握されずにその悪意の中に握り潰されたものであった。


「先程の自称『罪人』さんにもっと詳しく話を聞く必要があるようですね…」

「まだ暫く此処に留まるつもりか? あの男が鍵を握っているのは恐らく確かな事だろうが、それはつまり『アレ』がこの世界に留まる存在ではない可能性も考慮するということにもなる。 此処に留まるという事と同様に此処を離れる事も視野に入れるべき…」

「いや、それはありません」


メガネをかけたスーツと日本刀の男

ナルセはそう断言した。

その双眸は決して推測ではない。

確信、あるいは本能の類であった。

それ故に銃とフードの男

カネヒラはそれを推測で覆そうと試みる事はなかった。

こういう時のナルセの直感は賭ける価値が存在する程度には良く当たる。

それを長く共にしたカネヒラも知っていた。


「あの目は此処を楽しんでいます…彼がこんな素晴らしい戦場から離れる訳がないじゃないですか」


こうして戦場は無数の意図と

無数の偶然と

無数の想定によってかき乱され続ける。

此処に純粋は存在し得ない。

ただ一つを除いて。

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