想定外
どちらかというと前衛的なものに仕上げたいが、なんら才能を持ち得ない人間には不可能であるということを知り絶望。
頑張ります。
「私と一緒に魔王討伐をしないか?」
その言葉は何の抵抗もなくするりと喉から出てきた。理由は自分でも分からない。
だが、本当に抵抗なく発することが出来たのだからそうとしか言いようがないのだ。
「でも僕……弱いですよ?」
「構わん。素質さえあれば実力は道中で身につく筈だ。」
私は、この時はまだ信じていた。私の勘はこの男が実力はともかく才能が抜きん出ていて、魔王を倒すに足る人物になるのだ、と見抜いてくれているからこそ私の口にそう喋らせたのだ、と。
しかし、そんな自分の予想は才能を見定めてから1分と経たずに裏切られていた。勿論、悪い意味で。
「待て待て……お前はこの森に出てくる生き物一匹倒せないというのか⁉︎」
「だから言ったじゃないですか……弱いですよって」
「だが…素質がある筈……」
「そんなものもありませんって」
二人の切ない会話だけが静かに響く無人の森。
確かに男の言う通りだった。実力が無いのはまだ想定内だったが、戦いに関する素質を感じることすらも出来なかった。
自分が予定していたより遥かに弱かったのだ。
それどころか最弱にも等しい。この男が魔王討伐を成功させるなんて幸運があった日にはおそらくこの世界自体が滅ぶような未曾有の悪運も降り注ぐだろう。
戦いに呼ぶとなればどう考えても足手まといになってしまう可能性の方が高い。
だが、何かがあるはずだ。
私の勘が今まで間違えた事なんて無かった…筈だ。
「まぁ自分から頼んでしまったから仕方ないか……」
「いや…別に無理に責任持ってもらわなくても大丈夫ですよ……?」
自分の直感を間違いにしたくないという意地もあった。ただ、それ以上に何か感じるものがあった。何度も言うようにその理由を詳しく聞かれてしまうと『そう感じたから』以外にはこれといって言葉にすることはできないのだが。
だがしかし、自分の脳内が勘違いではない。と示すように警鐘を未だに大きな音で鳴らし続けている。
この男には確実に何かがある。
「とりあえず、明日からリオンという街に向かって行く予定だが……その前に親とかに何か言いに行っておくか?」
「僕の両親は…僕が幼い頃に死んだんです。一族全員魔王に襲われて……」
「そうか…それはすまなかったな……ッ」
一瞬、この世から万物が余すところ無く消えてしまったかの様な
否
この世『そのもの』が無くなってしまったかのような錯覚を覚える。
元凶はおそらくこの目の前の男から発せられる全てを飲み込んで尚広がってしまうような黒いオーラの様なもの。
その時、私はこの男の瞳の奥には自らの炎すらをも燃やし尽くすほどの絶望的な『炎』恨が燻っていることに気付いた。
きっとこれだ。
否
これしかない。
私が可能性を感じた理由は。
案外簡単に見つかってしまったが、物語でもない世界というのはそう単純な物なのかもしれない。
ただ一つ問題視するなら…
「だから正直嬉しかったんです……」
「え?」
「貴女に一緒に魔王を倒そうって言ってもらえた時に。 僕もあいつに復讐することが出来るのかもしれない。って思っちゃって……。まぁどう考えてもそんなこと果たせない実力だ。ってことは知ってるんですけど……」
否
素質すら感じることが無かったと考えた数刻前の自分の思考を恥じた。
問題ない。私の目に狂いはない。
そう確信した。狂気は時に才能を凌駕することもある程に重要な素質だ。
『それ』すらも狂気の一員となるのであれば、この男はこの世で何者をも凌駕すると思われる怪物へと進化を遂げるかもしれない。
「なら行くか。 善は急げ、とも言うしな」
「はい! 」
そんな直感のみを信じて始まった魔王を討伐するまでの『短い』戦い。
そう『軽視』していた世界『一つ』を救う戦い。
この時、まだ私はこれから始まる戦いが『この世界』だけで行われているわけではない、大規模な戦いであることなど、まだ知る由もなかった。
否
この時に私たちは無意識にそう選択してしまった。というべきだろうか。
【TIPS】クレフティス
勇者が作中で初めて出会う存在。
その直接生えた猫耳や異常な戦闘能力などが目立つ。
不自然な点が数多く見受けられ、違和感が存在しているが、そこに『繋ぎ目』はなく何者かの介入はないかと思われる。
所持している異能力は、自らが吐いた空気から物を作り出すことができる『二酸化運営』と█████を解放する『████』と、断絶された██との繋がりを一時的に██することができる『████』




