地獄の先
がんばってルビ振りまくりました
わたしが空を見上げると
空はやっぱり青空で
わたしをいっつもくらくする
そばにかがやく太陽は
力いっぱい光ってて
わたしの肌をつきさしてくる
黒い雲がただようと
空をかくしてくれるから
少しわたしはあんしんする
雷ゴロゴロ
雨ザアザア
わたしは空が大きらい
パンパンッ
「さたを下す」
巨大な大男が、これまた巨大な槌をもっていきおいよく机をたたいた。わたしは自分よりも大きい机を、男を見ながら、これから男が話す言葉をまっていた。
「これからそなたを地獄へ落とす。そしてそなたには魔訶鉢特摩の業をうけてもらうーー」
大男の声は大きく、空気がふるえるほどだったけど、私が聞いていたのはそこまでで、そのあとは私はボーっとしていた。そして大男の声がきこえなくなると目の前がまっくらになる。足元がきゅうになくなって、下へ下へ落ちていく。くらいくうかんの中をからだがバラバラに回って、つめたいくうきが私を
切りさいた。私のいしきはふかいやみに落ちていった。
グギャーーー
目の前にいるかいぶつがおそってくる。かいぶつは鳥みたいな形だけど、黒くておそろしい形をしていた。でも、私はこわがらなかった。私はあいてのこうげきをひらりとかわした。そして、かわしながらかいぶつのおなかをおもいっきりグーでたたいた。
ドスッ
グギャーーー
かいぶつはふきとばされるけど、大声を上げただけでぜんぜんいたくなさそうだった。やっぱりこのままたたかっててもだめだ。まっちをつかわなくちゃ。私はまっちをとり出して、まっちに火を点けた。
ボオッ
まっちには火が点いて、あたたかい空気がまわりにひろがる。そんななか、私はおねがいごとを口にした。
「まっちよ私のねがいをかなえたまえ。目の前のてきをこおらせて」
私がそうねがうと、きゅうにつめたい風がふきはじめる。かいぶつはそのつめたい風でこおりついてしまう。私はこおったあいてに近づいて、そのかたまりをおもいっきりたたいた。そしたらかたまりは中のかいぶつといっしょにこなごなにくだけて、きえていった。
しごとがおわって、へんしんが元にもどる。かわいいフリルのついたせいふくが光ってきえて、私のすぐそばにあつまった。すると、あつまった光からかわいい動物があらわれる。
その動物はねこみたいで、かおはふっくらぶにょぷにょしている。はねがないのに、からだは宙にういていた。しっぽがくるりんと後ろでゆらゆらしている。
「おしごと、おつかれさん」
動物は高い声でコロコロとようきに話す。私はいつものみすぼらしいすがたにもどっている。
「うるさい、アウスピルリング」
けんめいにたたかったあとにこうやってようきに話されるとちょっとむかつく。私はぶっきらぼうに応えた。ただ、それだけじゃないけど。
「どうしたんだよ、マチ。いつもよりきげんがわるいじゃん」
私はアウスピルリングにはこんどは応えなかった。そのまま歩いていく。
「なになに、もしかしてまっちがもう少ないから。まあ、そりゃたいへんだよね。もうすぐ本格的な地獄に落ちちゃうかもしれないんだから」
「わかってるなら、茶化すな。けすぞ」
私は飛び回りながら楽しそうに話すアウスピルリングをはんぶん本気ではらいながら、のこり少ないまっちをにぎりしめた。そして、このせかいに来た時のことを思い出していた。
「よぉ」
このせかいに来て一番はじめに会ったのがアウスピルリングだ。さっきみたいに私のまわりを飛び回りながら、私のようすをながめていた。
「だれ」
「アウスピルリングって言うんだ。えんま大王に言われて、お前のサポートしろってさ」
「サポート。ってここどこ。地獄って聞いたような気がするけど」
えんま大王の話をはんぶん聞いてなかった私は、なんのことだかわからなかった。まわりを見ると、地獄とは思えないようなふつうのせかいがひろがっている。
摩訶鉢特摩の業と言っていた。たしか、摩訶鉢特摩とは地獄でももっともさむいところだと聞いている。しかし、ここはたしかにさむいが、もっともさむいというほどすごくさむくはない。
まわりは木々が立っており、下にはかれ葉がじゅうたんになった地面がある。
と、足元を見たとき、自分の足がずいぶん小さいなってことに気づく。しかもはだしだ。手を見てみても小さい。ここに来て、自分は自分ではない人になったんだって気づいた。
「お前、大王様の話聞いてなかっただろ」
「うん」
私はすなおに答えた。
「はぁ、しゃーねぇーな。じゃあおれがせつめいしてやるから、こんどはちゃんと聞けよ」
アウスピルリングはあきれたかおをしながらせつめいしてくれた。
つまりは、私はとある少女にひょういしているらしい。この少女は自分の人生に希望がもてなくて、じさつをしようとしたのだそうだ。そして、しっぱいした。きぜつしているさいちゅうに私がひょういしたのだそうだ。
私がやらなくてはならないことはどうやらこの少女を幸せにすることらしい。それが大王が言っていた摩訶鉢特摩の業というわけだ。
少女を幸せにするためのどうぐに、”まっち”というものをもらった。ぜんぶで百本あって、これを灯すとその間だけなんでもねがいごとがかなうのだそうだ。この百本をつかって少女を幸せにしてみなさいということだ。ただし、まっちをつかいきったらそこでおわってしまうらしい。
また、せいげん時間もあって、それはクリスマスまでということだ。いまが十一月なので、やく二か月ということになる。
そして、もう一つ、私がやらなければならないことがあるらしい。この町をおそうかいぶつがいて、そのかいぶつから町をまもることだそうだ。そのために私は魔法少女にへんしんしてたたかうことができるということだ。ここにいるアウスピルリングが私の魔法少女のふくとなって私にとくべつな力をあたえてくれるのだ。といっても、空を飛んだり、はやくなったり、力がつよくなるだけらしい。
ただし、魔法少女であることはほかの人にばれてはいけないらしい。たたかうときはアウスピルリングがどうにかしてくれているみたいだけど、ふつうのせいかつの時は気をつけなくてはいけないみたいだ。
「わかったか」
アウスピルリングが先生のようになってさいごにかくにんした。
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