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・一面が海苔のような景色がある。黒く湿っている地帯。
それは当然ながら巨大な、広大な海苔ではなく、夜の海だ。
その黒い海から、まるで深きものどものように静かに陸へ上がる影がいくつかあった。
その全ては牛の頭をした人型の怪物だ。正しく紫歩乃歌/百連が戦った存在である。
しかし、形状は同じでも明らかに違う物差しはあった。大きさだ。
今までのそれが電柱ほどの大きさだとすれば今、無数の滴りを捨てて這い上がってきたそれは、高層ビル程はあった。もはや海からビルが歩いてきたような光景で、きっと夜中にそっと抜け出して渚でずっと待ってた少年少女は修羅場を通り越してショック死してもおかしくはない。しかし、正しく虚構ではない。
足跡を付けることなく浜辺に巨体を示した2体の怪物。
一瞬、その巨体を彩る茶色が光に照らされて夜空に明かされた。
直後、前に立っていた怪物の胴体が爆発を遂げて、全身から炎を噴き上げながら崩れ始めた。
「出やがったな、UMX!!」
怪物達の正面。噴き上がる炎の先に別の影があった。
炎に彩られたその姿は赤と黒を纏った恐竜……ティラノサウルスのよう形。
「てめぇがUMXの本体だな!? この花京院繁とインフェルノがぶっ倒してやる! それでこの馬鹿なゲームも終わりにしてやるぜ!」
声を飛ばし、声が通った跡に恐竜型PAMT:インフェルノは火炎弾を口から放とうとする。しかし、対象となる敵は先に倒された仲間を盾に、暗闇の海に戻り始めた。
「あ、てめ……待ちやがれ……!!」
火炎弾をかき消して2つの足で追いかけるが、しかし既に敵の姿は足元で灰になったもの以外に残っていなかった。ただ、正面の海苔みたいな水面に小さな波紋が消えるだけ。
「……くそっ! あと少しだったってのに! 逃がすとは俺って情けねえ! まあいいや、帰ろ帰ろ」
繁は頭を掻きながらスティックを動かした。
・僕はフォークもナイフも使わない。でも、手で食べるわけではない。ただ、日本人は箸を使って物を食べるべきだと思うんだよね。ご飯だってそうだし、お蕎麦だってそう。箸を使わずに食べるものは日本人の食べ物じゃないか、おやつに食べるべきものだと僕は思うわけなのですよ。
つまり、料理ではない。料理=腹の膨れるもの:料理じゃない=腹は膨れない=いくらでも食べられる。そういう概念がこの世界には、特に年頃の乙女界隈では。こういう料亭でそういうものが出るというのは正直日本人としてどうかと思うんだよね。でもまあ、食休みにはちょうどいいかな?
「……すみませーん。手のひらサイズのコロッケ100個おかわりください」
「おい腹ペコ白髪娘。そろそろいいかげんにしろよ」
正面に座る眞姫が今まで聞いたことのないような低い声を上げてきた。
「もう、何? 10個くらい分けて欲しいとか? 1個だったらいいけど? ……あ、すみませーん! ホットドッグも100個くださーい!」
「いや、だからおい! コロッケもホットドッグも1個は60円なんだけど、それ100個ずつだと12000円なんだけど! と言うか既に鶏肉と卵の親子丼1300円と、鮭といくらの海鮮親子丼1400円も頼まれてるし、あんただけでもう2万円近く吹っ飛んでるんですけど!!」
「大丈夫! さっき財布の中見たけど、眞姫の財布には5万円があった。つまりもう2倍くらいなら問題なく払えるってわけだよね!」
「だよね! じゃないでしょうがぁ!! 誰が懐のお金全部使っていいって言ったのよ!? 第一私まださっきの話全然聞いてないんだけど!」
「だから、僕だってよく分からないんだって。このPAMTって奴インストールして起動したらああなるんだって。正確に言えば、あの怪物が目の前にいないとタダのゲームアプリにしかならないみたいだけどね」
「だってあんた、それ絶対普通じゃないでしょ!? まだあんたが特撮とかバーチャルリアリティの企業からスカウトされて新作品の撮影してるって言う方が納得できるわよ。けど、実験なんてものじゃない、あれは本物でしょ!? 本物のハザードでしょ!? それをあのレベルでやれる上他の学生達まで広範囲に巻き込める程の力があるとしたらセントラルくらいなものでしょ!? あんた、それ、冗談じゃないでしょ!?」
「あーうんうん。分かってる分かってる。でももう全部いいや。それに、実験じゃないって言ったけど、多分これ実験だよ。セントラルのね」
「どういう事よ?」
「眞姫の言う通り、セントラルでもなければこんな事出来ない。そして軍事機密もあるとは言えPAMTなんて兵器をセントラルが現在使っているなんて聞いたことない。テレビとか教科書とかで見る機動兵器にあんなものはなかったし、はっきり言って百連の方が性能は圧倒的に上。つまり、PAMTって言うのはセントラルの新兵器、その試作機みたいなものだと思うんだよね」
「ならどうして学生が?」
「それは分からないけど、わざわざ素人にやらせるくらいだから本業の人達に動けない理由でもあるんじゃないかな? 例えば、あの怪物達は実は別にいる本体の残骸が勝手に動いているだけの、言ってみれば2次災害に過ぎなくて、セントラルはその本体と言う第一次災害の対処をしていて手が離せないとか」
「……それでも納得いかないわね」
「分かってるよ、そんな事。建前ではこうだけど。きっと真実は、セントラルは最初から僕達学生にやらせようとしている。何の目的があるのかは知らないけど、積極的に僕達を戦わせようとしている。そして、有り得て欲しくない憶測だけど、あの怪物は……」
「お待たせしましたー。ホットドッグ100個とコロッケ100個です」
「っと、」
見ればお皿の上に山ほどどころか神柱位ありそうなコロッケやホットドッグの山を築いた店員さんが5人も来た。
「こちらでお間違いないですか?」
「はい! はい! 早くは・や・く!」
僕の胃袋含む消化器系は既にクラウチングスタートを始めている。お皿がテーブルの上に置かれ、店員さん達が頭を下げて席を離れてから僕の短距離走は始まる。
「では、是非にごゆっくり」
スタートを告げる号砲は今放たれた。5人が頭を上げて、踵を返した瞬間に僕は両手をお皿に伸ばす。その時だった。
「お、紫じゃんか」
「ひゃっ!?」
店員さん達と入れ違いにお店にやってきたのはなんとなんとなんとなんとなんと花京院繁くんだった!!
「か、かかっかかかかかかか、かかかかか……」
「何だ? 新手の早口言葉か? しかしすげぇ量食うよなぁ相変わらず」
「ち、違うよ!? これ眞姫!! 眞姫の底なし胃袋だから!」
「おい、金利面での実被害の次は風評被害か。この胃袋ブラックホール」
「かははは!! 相変わらずだなお前達は。漫才師目指すんだったら才能間違いないぜ。座布団持ってきてやろうか?」
「え、あ、いや、その、」
「まあいいや、ゆっくり食えよ。まあ、きっと俺の晩飯の方が先に終わるだろうけどな。じゃな!」
言うだけ言って花京院くんは奥の方のカウンター席に行ってしまった。
「……あんたさあ、ホント花京院の前だと可愛いわよね」
「い、言わないで! は、早く食べ終わろうよ! あ、でもそうしたらこの量を花京院くんより先に食べ終わったってことでますます僕の底なし胃袋っぷりが鮮明に……!! あ、そうだ! ハシゴしよう!!」
その言葉の次に僕の感覚を刺激したのは運ばれてきた料理の味ではなく、眞姫の顔面パンチだった。
・花京院繁くん。隣のクラスの男子。サッカー部所属でぶっちゃけ僕がサッカー部に行く理由でもある。
初めて会ったのは去年の今頃。小学校の頃からサッカーが得意だった僕がサッカー部の仮入部に出て最初の一人ふた組の練習でペアになったのが最初。
正直言って小学生の頃から僕にサッカーで勝てる相手なんてほとんどいなかった。だからわざわざ中学校でもサッカー部に入ろうとする男子がどれほどの実力か見るのにちょうどいいかなって思った。
結果的に僕はボロ負けだった。
ドリブルでは簡単にボールを奪われ、ゴールキックは防がれ、逆に彼のゴールキックは防げなくて……。
しかもそれで転んだ際にスカートだったから間違いなくパンツを見られた。恥ずかしかった。
その恥ずかしかったのが吊り橋効果だってのは分かるけど結果的にそれが理由で僕はそれ以来ずっと花京院くんを見ると胸がドキドキしてしまうようになったんだ。
前に眞姫にそれを話したら
「あんた、それ痴女の目覚めじゃないの? 案外あんたの将来は陸上選手でもサッカー選手でもなく露出系AV女優だったりしてね」
とりあえず胸に飛び蹴りを打ち込んでおいた。でもそれ以来眞姫の胸はメキメキ成長している。まさかこんな誤算があるなんて。それとも眞姫はMだから胸を蹴られると性的興奮を感じて女性ホルモン的なアレで部分部分が成長してしまう特異体質の持ち主だったりするのかな?
下より上の方が心地いいだなんて、何という都合のいいビッチめ。
まあ、眞姫の事は今はどうでもいいとして、花京院くんだけど、結局一度も同じクラスになったことはないんだよね。僕はドキドキしすぎて結局サッカー部には入らなかったし。
でもそれからもたまにサッカー部には顔を出している。あまり長く離れると腕ないし足が鈍っちゃうからね。
花京院くんを持ち上げたい気持ちはあるけれど、それでも本気じゃなかったとしても長い間サッカーやってたんだから当然かもしれないけど、やっぱり負けたままじゃ悔しいってのもあるし。
まあ、それから1年掛かった今でもやっと互角になれたって程度なんだけど。つまりそれって来年には勝ってるってことかな? うんうんさすが僕。でも、花京院くんも別に怠けているわけじゃないから僕がこうして部活に出ないで眞姫と一緒に帰ったりしている間にも練習を重ねたり、試合に出たりしているんだよね。
……試合、かあ。そう言えば今度別の中学のチームと交流試合があるとかって言ってたから眞姫と相談して試合に出てみるのもいいかもしれない。
「試合?」
家に帰って、お風呂に入りながら僕が眞姫に聞いてみた。
「別に好きに出ればいいじゃない。いつもは私が部活で好き放題やらせてもらっているわけだから私がどうとか言える立場じゃないわよ。たまにはあんたも好きにしていいよ」
「ホント!? ありがとう!」
「いや、私が許可出しただけで、部活の監督に聞いてみないとまだ分からないでしょ? あんた部員ですらないし何より女子だし」
「大丈夫だよ。他の候補全員しばき倒して無事メンバーに選ばれるから」
「……あんた風紀委員でしょうが」
「言葉の綾だよ言葉の綾。ホントはちょっとお願いしてくるだけだから。……実力行使で」
「……もはや突っ込まんよ。しかし、」
眞姫の視線が僕のお腹に注がれている。正直その下まで丸見えだから気恥ずかしいんだけど。
「まさか眞姫、そんな趣味が……!? 僕が寝ている間に一体何を……ぐばっ!!」
「誰がそんなことを言ったかするか望むか。ただ、さっきあんなに食べたのにもういつもどおりの大きさに戻ってるんだなって。やっぱあんたフードファイターにでもなったら?」
「分かってないなぁ、眞姫は。僕は食べることが好きなわけでもそれを趣味にしているわけでもないんだよ? お腹がすいたから食べるだけ。あ、今日はちょっと眞姫が諭吉と言う教科書にも載っているおじさんを5人も侍らせていたからムカついて全員と泣き別れさせてやろうと思っていつもより多めに食べてみただけだけど」
「普通に嫌がらせだろ、それ。悪意しか感じないわ」
「まあつまり、学校での授業とかと一緒だよ。やりたくないけどやらなきゃいけないからやる。それだけだよ? でもどうせやるならついでに嫌がらせを……」
「ついに嫌がらせと明文化したよこの子。まあ、正直トータルではあんたの方が食費負担してるんだろうから間を置いてなら私も文句は言えないんだけどね。今日みたいな悪意はごめんだけど」
「ふふ、しかしそのおかげで僕はまた強くなった。きっと明日走れば11秒の壁を破れるかも知れない」
「嫌がらせのお返しか」
ちなみに眞姫の短距離走のタイムは12秒01だ。十分速いと思うけどなぁ。僕には負けるけど。
「それよりあんた、さっきの続きだけど。PAMT、どうするの?」
「う~ん、一度だけならまだ事故だって言い張れると思うけど2度戦ったらもう逃げ場所ないよね。向こうからばら蒔いておいて機密事項に触れたから云々言われる可能性もあるし。記憶抹消くらいで済めばいいけど」
「……よく平気でそんなことが言えるわね」
「朝の時点で覚悟しておいたからね。もう普通に言えるよ」
「朝、少し様子がおかしいと思ったらそんな覚悟をしていたのか」
「そりゃね。僕だって馬鹿じゃないし。学年3位だし。そもそも昨日の初陣の時点であ、これやばいなって思ったもの」
「……悪かったわね。私のせいで2回目をやらせて」
「別に。どうせ1回やったところでもうマークからは消えないだろうし、大差ないと思うよ。ただ、実験だとしたらそれは確実にいつか終わりが来るってことだし。それに、眞姫は加害者でもあるし被害者でもあるよ」
「どうして?」
「だってこうして僕からPAMTについて聴いてるじゃない。あの怪物も目撃してるし」
「……」
あ、眞姫が湯面に沈んだ。
・お風呂から上がり、それぞれそれなりに長い髪を乾かしながら僕達は適当に夜を過ごして眠りに就いた。
「……」
隣のベッドで眞姫が何かしているのが音で分かる。いくらベッドは別だからってまだベッドに入ってそんなに時間が経っていないのに眞姫は自信過剰と言うかオープンと言うか。
一種のプレイみたいに意味を持たせられても困るからここはさっさと寝てしまうかそのフリをしておこう。
それに僕だって疲れていないといえば嘘になる。
PAMTで戦えば通常の何倍も集中できる。けど裏を返せば何倍も疲れるってことだ。
昨日今日とで3体と戦ったんだ。
でも、どこか安心しているのは、昨日よりも安心して眠りにつけるのは、眞姫に事情を話せたからかな?
「……インストール開始っと」
・朝が来た。いつもどおりの時間に二人揃って目を覚ます。
どうやら今日は朝練はいつもどおりの時間らしい。でも、今週は放課後の部活はないそうだ。今週といってももう今日しかないけど。
「でも、眞姫。じゃあ朝は誰がコーチしてるの?」
「基本的に自主練だよ。うちはスパルタで有名だからね。それくらいやる気のない人はここまで残っていられないよ」
「その全てに勝つ僕は最強ってことだよね!」
「じゃあこれからは一緒に朝練参加する?」
「努力は僕には合わないね。だから帰宅部なんだし」
「そいつはお見逸れしましたよ」
制服に着替え、顔を洗い、昨日のうちに作ったサンドイッチを頬張る。
「いい? これからPAMTで戦った場合は必ず私に知らせること」
「うん、分かった。……知らせるような事はもう起きてほしくはないけどね」
「私も聞きたくはないけどね」
それから眞姫は一足早く学校へ行く。僕はもうちょっとだけゆっくりしている。
本当は昨日の夜にやる予定だった、PAMTの確認をしよう。
昨日初めて人型で戦った。格闘戦能力そのものは悪くない。結構いい反応している。でも、体術の威力はかなり低かった。機銃よりダメージが低いとは。まあ、考えれば当然か。
「……さすがにパラメーターはいじれないか。あ、でも武器とか機能変更とかは出来るんだ」
ステータス画面を開く。呼び出せる武器やどのボタンで呼び出せるかもここで確認できる。
今はショットガンと日本刀。
早速追加されたばかりの昨日の状況シミュレーションでそれぞれの武器の使い方とかを確認しておこう。
あ、あまりに集中しすぎて遅刻したらいけないからアラームも忘れずにしないと。
……PAMTで戦ってる時にアラームとか電話とか来たらどうなるんだろ。
・授業時間。今日も早速意味不明系の英語の授業があった。
ちなみに使ってる教科書があのとおり意味不明系だから、テストでは筧先生が自ら作った問題集から出している。……最初から全部そうしたらいいのに。流石に時間がないのかな?
「小テストは今から俺の時計で10分間だ。自分で書いたノートのみ見てよし。でははじめ」
とのお達しがあって3分。出された問題はかなり基本形。それぞれの過去分詞系を答えなさいとか、動名詞の使い方とか。確かにこれをやっていればそこから色々応用出来るいい問題だと僕は思うよ?
……普段のあれが実戦的実験的過ぎて物足りなかったり、逆に難しく思ったりもするけど。
やがて5分が過ぎて、残り時間が半分になった頃。
「ん?」
窓際の席だから僕は他の生徒より、先生よりも先にその違和感に気付いた。
今まで日光に照らされていたプリントが一気に暗くなった。雲が掛かったのかな?
さりげなく外をチラ見して僕はつい椅子から転びそうになった。
「な、な……!?」
だって、窓の外。校庭には昨日戦ったあの怪物がいたからだ。しかも滅茶苦茶でかい! 昨日のの10倍以上はある!
「きゃああああああああ!!」
「な、何だ!? 怪獣か!?」
「ふむ。一番容姿が近いのはカウラですかね」
「いやいや、オクスターだろう?」
「ブロッケンと言う節もありますよ?」
「あんだと!? てめぇの目は節穴か!? どう見たってキングストロンの方がまだ近いだろうが!」
「やりますか? ジークンドー7段の私と」
「おもしれぇ! 妹譲りのCQCを見せてやるぜ!!」
なぜか騒然となってる教室で男子同士の激しい格闘が勃発してるけどこれもうテストどころじゃない。って言うか僕どうしたらいいの!? 流石に教室じゃ他に人が多すぎてPAMTを起動できないよ! 引き出しの中でものすごく唸りを上げているけど……!
「お前達! 慌てるな!! 慌てずに避難を開始するんだ! そこで戦ってる馬鹿ども! 続きは後でやれ!」
筧先生の指示が飛ぶ中、僕は一度パラフォを引き出しからとって手の中に握り締める。
「あれ?」
その時に見えた。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
隣の教室の窓から誰かが叫びをあげて飛び降りるのを。ってあれ花京院くん!?
「出ろぉぉぉぉぉ!!! インフェルノォォォォゥゥゥゥゥゥッ!!!」
もう一度叫びをあげた瞬間だ。目の前にいた怪物を突き飛ばして大きな姿をした恐竜みたいなロボットが現れた。あれってもしかしてPAMT!? じゃあ花京院くんもPAMTを使ってあの怪物と戦ってるってこと!?
「紫!! 何してる!? 早く避難を! あのUMXは危険だ!」
「アムクス!?」
「……ちっ! 早くしろ!!」
先生が強引に僕の手を引いて教室から、窓辺から、離れさせていく。
今、先生はアムクスって言った。あのPAMTの名前? 違う。花京院くんはインフェルノって言った。だったらもしかしてあの怪物の名前がアムクス? だとしたら先生は一体……!?