パイロット版
EPISODE1 青春の霹靂
・西暦2014年5月。
学生たちは新学年での生活に
慣れてきた頃合い。
連休を終えて早くも新しいグループも
形成されていく季節。
「・・・・・ん、」
紫歩乃歌。
13歳。中学2年生。
背まである真っ白な髪を一本結びにして
目立たぬようにワイシャツとブレザーの
間に挟ませている。
正面から見れば短髪のようにも見える。
教室で真面目に授業を受けていた歩乃歌。
開いた窓から桜の花びらが
板書していたノートに落ちる。
「・・・・・。」
真面目な歩乃歌は花びらを払って
板書を再開する。
真っ赤な瞳で黒板を睨む。
先天的なアルビノである歩乃歌は
白髪赤瞳と一風変わった容姿を持つ。
アルビノだから視力は低く
運の悪いことに後ろの方の席のため
上手く黒板の文字を読み取れない。
「歩乃歌、はいこれ。」
授業が終わって昼休み。
ほとんど板書できずに落胆している
歩乃歌に声をかける少女。
牧島眞姫。
1年生の頃からの友人。
歩乃歌と違って正式な短髪。
やや茶髪がかった女の子。
眞姫が歩乃歌にノートを見せる。
「ありがとう、眞姫。」
「いいって。でも先生に言って
前のほうの席にして
もらえばいいんじゃないの?」
「僕だけズルをするわけにはいかないよ。」
「ズルって・・・」
歩乃歌の返事にやや呆れた表情をする。
もちろん教師達はアルビノのことを
知っている。
眞姫の言うとおりにちゃんと
申請すれば前の席にしてもらえるだろう。
だが公平を求める歩乃歌の性格が
それを邪魔していた。
そのことを1年付き合っていれば
眞姫もよく理解していた。
「眞姫、サッカーしない?」
「・・・あんたね、女子なんだよ?」
「それが?」
「・・・いいわよ。私はしない。」
「そう?じゃ男子に混ぜてもらおっ。」
ノートを移し終えた歩乃歌は
グラウンドでサッカーしている
同級生の男子たちのもとへ走っていった。
「・・・一人称といい男子っぽいところも
またあの子の悪癖だよね・・・。」
窓から眞姫が呆れてその様子を見る。
歩乃歌は並の男子よりも
速く走り躍起になって
ボールを追っている。
「汗とか気にしないのかな?」
「・・・・・。」
「あれ?」
眞姫は自分と同じように
その光景を見ている人物に気づいた。
同じクラスの確か・・・白百合蛍って
名前だった。
歩乃歌と同じく生真面目で
1年生の時は期末テストで
歩乃歌と同立1位を取っていた気がする。
その生真面目な白百合蛍は
よそ見せずにまっすぐに
歩乃歌の背中を目で追っていた。
その目からはどこか悲しみの色が
混じっていたようにも見える。
「・・・天才ってのはよくわかんないや。」
小さく呟いて机に突っ伏す。
・一日の授業全部が終わり
歩乃歌は部活に向かう眞姫と
分かれて帰路に立っていた。
「・・・・あ、」
校舎を出てグラウンドを見る。
陸上部が練習をしている。
眞姫の姿もある。
だけど歩乃歌の視線は眞姫を見ていない。
男子の列。
級友らしき男子と楽しそうに話している
たったひとりの少年。
花京院茂。
去年同じクラスだった男子。
誰もが自分の姿を見て嫌悪したり
嘲笑したりする中で眞姫と
彼だけはそのような態度をしなかった。
以前に一度自分のことを聞いた。
「え、銀髪とかカッコイイじゃねえか。
俺は好きだぜ?アニメではよく見ても
実際に見るのは初めてだし。」
そう言ってくれたのだ。
それ以来どうしても意識してしまっている。
もっと分かりやすく言えば
惚れてしまったのだ。
自分を異端扱いしない異端に。
「・・・・あ、」
しばらく窓からそれを見ていると
自分を見る視線に気づく。
左方。出たばかりの教室。
「・・・・・・・・。」
白百合蛍がまっすぐ歩乃歌を見ていた。
彼女の傍らにはクラスメイトの女子がいて
どうやら彼女も交えて
雑談しているようだが明らかに
彼女の視線は自分に向けられていた。
(あの人は・・・あまり好きじゃない。)
基本他人を嫌ったりしない歩乃歌では
あるのだが何故か彼女に対しては
いい印象がなかった。
一か月前。
2年生の始業式。
同じクラスになった彼女に
一度呼び出されたことがある。
「私のこと、知らない?」
「え?
・・・僕たぶん君のこと知らないと
思うけど・・・。
今日初めて会うんだよね・・・?」
そう言われた時の彼女はひどく
悲しそうな表情をして
そこから走り去ってしまった。
次の日。
彼女は傷だらけで登校した。
「だ、大丈夫・・・?」
「・・・・・・。」
やはり彼女は悲しそうな顔をして
そして黙ったまま歩乃歌を通り過ぎた。
口ぶりからもしかしたら自分のことを
知っていたかもしれない。
昔の友人かも知れない。
でも自分の記憶の中に
あんなアイドル顔負けな美少女の
姿はなかった。
それ以来何度か話しかけても
彼女と会話することはできなかった。
ただ時折自分のことを見ていることには
気づいていた。
まるで自分のストーカーみたいで
彼女に恐怖を感じてしまった。
結果1週間くらいで彼女と
関わるのをやめた。
「・・・・。」
「・・・・・・っ!」
歩乃歌は彼女の視線を振り切って
その場から走り去った。
・翌日。通学路。
「ねえ歩乃歌。これ知ってる?」
「え?」
眞姫が携帯電話を見せてきた。
「ケータイ?それがどうかしたの?」
「そんなの聞いてないわよ。
このアプリよ。」「アプリ?」
言われてケータイの画面を見る。
そこにはP2000と名前がついた
アプリが表示されていた。
「P2000?なんなの、それ?」
「昨夜突然メマガと一緒に
送られてきたんだ。
Portble Asultism Mechanical Truperってタイトルで。」
「Portble Asultism Mechanical Truper?
なにそれ?新しいブランド?」
「分からない。
なんだかロボットゲームみたいなんだけど。」
「え、ゲーム?」
「あんたゲーム好きでしょ?
あんたのアドレス送っておこうか?」
「うん!うん!ありがと!眞姫!」
「わかったからくっつかないの!」
「えへへ・・・」
「まったく。男子と一緒に
サッカーしたりゲームが大好きだったり。
よくわからない優等生だよ。」
呆れつつも笑顔を見せる眞姫。
その眞姫があるものに気づく。
右前方。そこに白百合蛍がいた。
そしてわずかながら顔を
後ろに向けてこちらを見ていた。
(・・・私を見ている?
ううん、私なんか眼中にない感じ。
ってことはやっぱり歩乃歌を見ているんだ。)
となりで歩く友人を見る。
「まだかな?まだ届かないのかな?」
などと無邪気にケータイをいじっていた。
次に白百合蛍の姿を探すが
もう雑踏の中に包まれていた。
(・・・あの女、もしかして・・・)
「眞姫?どうかした?」
「・・・・ううん、何でもないよ。」
笑顔に戻り歩乃歌の背中を叩く。
・放課後。
いつもどおり眞姫と分かれて
下校する。
今日は白百合蛍の視線はない。
というか既に下校しているようだ。
「ふう・・・・」
思わず安堵のため息をついてしまう。
直後に自制した。
いくらなんでも失礼すぎる。
「明日はちゃんと会話しよう。」
呟きながら学校を出る。
夕焼けの市街地。
電柱には無数のカラス。
周囲には自分と同じく下校する学生達。
茜色に焼けたコンクリートを歩いていく。
やがて人通りの少ない狭い通路に
入り込む。ここをまっすぐ行けば
我が家に到着する。
「・・・あれ?」
そこでケータイにメールが届く。
Portble Asultism Mechanical Truperだった。
P100100と表示されたアプリが添付されていた。
「わ、やっときた!」
思わず興奮してそのアプリを開く。
この携帯電話は歩乃歌が自作したもので
有害なものは一切受け取らない
設定になっている。
だから安心して全てのデータを見れる。
「これ、ロボットかな?」
画面には紫色の人型ロボットの
姿が映る。
すごく丁寧にそのロボットについての
データが解説されている。
「PAMT試作型100100号機。
全高5メートル、重量3.8トン。
へえ、なかなか細かいデータだな。」
立ち止まって噛み付くように
画面を見る歩乃歌。
だからか今目の前の異常に気付くのに
時間がかかってしまった。
「・・・え?」
ふと無意識に前方を見る。
先程までと光景が変わっていた。
高層マンションが見えていたのに
緑色の影がそれを塞いでいた。
夕焼けに照らされたそれは目玉だった。
「きゃ・・・!!」
その巨大な目玉と目が合ってしまう。
よく見ればその目玉には手足があった。
目玉に直接トカゲのような手足が
生えている怪物だ。
近くの電柱よりやや大きい怪物。
その怪物が自分にまっすぐ向かってきた。
歩乃歌は急いで来た道をもどる。
本能があれは危険な存在だと告げていた。
だからこそ歩乃歌は全力で逃げる。
後ろは見れない。
その暇はないだろう。
それどころか現状を理解するだけの
余裕もなかった。
ただ後ろから鈍い音が続けて
聞こえてきてるのはわかる。
怪物が自分を追ってきている音が。
その音がだんだん近づいてきていることが。
「はあ、はあ、はあ、」
走る。全力で走る。
走りすぎてついに歩乃歌は
転倒してしまった。
ピッ。
その拍子にケータイの画面の
何かを押してしまうが
当然そんなことに気をつける余裕はない。
ケータイを拾ってやっと後ろを見る。
その怪物は手を伸ばせば
届いてしまうほどの距離にいた。
歩乃歌の左足が怪物の足に触れる。
それに反応して怪物は
歩乃歌と同じくらいの太さの
巨大な腕を歩乃歌に伸ばす。
「こ、来ないで!!」
咄嗟にケータイを投げつける。
ケータイは宙を舞い怪物の
文字通り眼前の空を踊る。
落下しながらその画面に変化があった。
カウントダウンだ。
画面にカウントダウンがあった。
そのカウントは3を指していた。
3・・・2・・・1・・・・0、
「ひゃ!!」
0になるとケータイの画面が
激しく光りだす。
その光の中から5メートルほどの
何かが出現し、怪物を押し倒した。
やがて光が収まり目を開けると
足元に怪物が倒れていた。
「え・・・?」
状況が理解できない。
どうして自分の足元に
怪物が倒れているのか。
だがその答えは少し考えてわかった。
歩乃歌は今先ほどケータイの画面で見た
ロボットの姿となっていた。
P100100番試作型PAMT。
全高5メートルの紫色のロボット。
「僕・・・ロボットになっちゃったの!?」
目をこする。
でも指は目に当たらない。
確かに目の辺りをこすっているのに
指には鉄の感触がある。
自分の体を見下ろす。
先ほど見たロボットの姿そのものだ。
一瞬自分は死んでしまって
これは走馬灯のようなものだと思った。
でも足元から立ち上がった怪物と
目が合い、その突撃を受けて実感した。
「これは・・・夢じゃない・・・・」
コンクリートの地面に尻餅をつく。
まるで砂場のようにコンクリートが
変形して崩れ出す。
重さが今までと全然違う。
今の自分はコンクリートに
亀裂を入れてしまえるほどの重量だ。
けど馬力は違えど自分の体のように動く。
イメージせずとも手を動かそうとすれば
実際に機体の腕が動く。
再度突撃してくる怪物。
「これなら・・・・」
立ち上がり、怪物を正面から
受け止める。
あれほどの巨体の突進を
軽く受け止められた。
「力は僕の方が上なんだ!」
そのまま怪物を殴り倒す。
「痛っ!!」
殴った手に激痛が走る。
脳裏に右腕部ダメージ20%と
文字が浮かんだ。
「力は上でも脆いのか・・・!?」
殴った拳のほうが脆くて
逆に痛みを沸かせる。
まるでコンクリートの壁を全力で
殴ったようだ。
怪物が硬いのかと思ったが
きっちり怪物には殴られた跡がある。
だから自分の方が脆いと理解できた。
そして怯んでいる間に怪物は
勝てないと理解したのか
その場から飛び去っていった。
「・・・で、どうやってもどるんだろう?」
怪物を見送ってからそのことに気づく。
既に騒ぎになっていて
ガヤが遠くから近づいているのがわかる。
「戻れ・・・戻れ・・・戻れ・・・」
必死に念じてみる。
すると体が光り出して気づけば
元の姿に戻っていた。
「もど・・・・・あれ、もどってる。」
目を開けてようやく気づく。
手を見れば確かに自分の手。
目を擦れば確かに擦れる。
「痛っ!」
右手に痛みを感じる。
見れば怪我をしていた。
ジンジンと鈍い痛み。
「一体何がどうなってるの・・・?」
状況を全く理解できないまま
歩乃歌は急いで帰宅した。
ケータイの画面には
先ほどのロボットが映っていた。
Want batteryの文字が浮かんでいた。
やがて歩乃歌がシャワーを
浴びている間にバッテリーが切れて
ケータイは電源を落とす。
シャワーを浴び終わり長い髪を
ドライヤーで乾かしながら
鈍い痛みを感じる手を見て
やはり先程までのが現実であると
実感できた。出来てしまったのだった。
EPISODE2 百連
・朝が来た。
朝7時に目を覚まし
寝間着から制服に着替える。
そこで右手に巻いた包帯と
そこに走る鈍い痛みから
やはり昨日のことが真実だと
実感せざるを得なかった。
「・・・夢じゃないんだよね。」
ケータイを見る。
一晩充電したからバッテリーは全快だ。
このケータイは歩乃歌自作だから
使用していない時に充電器なしで
自動で充電出来るようになっている。
ただ使用している時は
かなりの高性能を出す。
その分バッテリーは短い。
そして画面には相変わらずP100100の
アプリが存在している。
「・・・何なんだろう。」
アプリを押そうとするが
指が惑う。躊躇する。
「・・・・学校行こう。」
ケータイをポケットにしまい
家を出ることにした。
いつもと同じ通学路。
少し違うのは昨日戦った場所。
コンクリートに大きな亀裂が入っている。
別に今すぐ崩れ落ちてしまうほどではない。
しかしこれもまた昨日の出来事を
現実と認めざるを得ない要因だ。
(そもそもこれは何なんだろう?)
ケータイを出す。
P100100を表示する。
先日自身が変化した姿がそこにある。
「・・・ザクみたい。」
見改めて感想を述べる。
紫色のザクっぽい機体。
でも武器の類は見れない。
しかも昨日のことから強度は低い。
何か武器になりそうなのはないのかと
いつもやってるゲームの癖で
P100100を調査する。
メニューを操作すると
機体データ
武装データ
兵装データ
の選択肢がある。
迷わず武装データを選択。
すると画面に武器パーツの
写真と性能、名称が表示されていく。
指レーザー、ファランクス、
60ミリスナイパーライフル。
次に兵装データ。
ザク同様左肩に装備されたシールドと
両足のかかとにセットされたブースター。
そこから歩乃歌はこの機体の
特徴を推測する。
「高機動で敵を翻弄しつつ射撃武器に
よる遠距離攻撃を目的としているのか。」
「歩乃歌?」
「・・・・ふぇ?」
急に自分の名前を呼ばれて
変な声を出してしまう。
隣を見ればいつの間にか眞姫がいた。
「どうしたの?
ケータイ見つめてブツブツと。」
「う、ううん。何でもないよ。」
「ひょっとしてPortble Asultism Mechanical Truper?」
「うん、そうなの。
・・・ところでその、眞姫は
そのPAMTが実体化したりしない?」
「・・・は?あんたどうしたの?
ゲームのやりすぎなんじゃないの?」
「だ、だよね・・・。あははは・・」
自制と自嘲と落胆の込もった空笑い。
そしてこれでまた自分ひとりが
異端だということが判明してしまった。
強がりに笑っても少しぎこちない。
「・・・ねえ、歩乃歌。」
「な、なに?」
「あんたまさか本当に
PAMTが実体化したの?」
「え?」
「答えて。」
「・・・うん。実はね、」
眞姫に昨日の出来事を話す。
包帯を巻いた右手が証拠となっているため
眞姫はどうしても信じざるを得なかった。
「なるほどねぇ。」
「信じてくれるの?」
「はっきり言って信じられる
レベルではない。
けれどあんたが興奮せずに
慎重なまま真剣に説明するのなら
信じざるを得ないよ。
で、その怪物はどこいったの?」
「分からない。どこかに飛んでいったの。」
「話からして
5メートルか6メートルくらいの
怪物が空を飛んでいたら
目撃情報があるはず。
きっと警察とか自衛隊が動くと思うよ。
だから歩乃歌が戦うことは
もうないと思う。」
「そうだといいんだけど・・・。」
「・・・そんなこと言いながら
実はワクワクしてるんじゃないの?
ゲーマーな歩乃歌ちゃんが
こんなゲームみたいな状況に
興奮しないわけ無いでしょうに。」
「う、うん。まあね。
さっきまで武器とかのデータ見てたし。」
「まあこれって普通のゲームもできる
みたいだしそれで我慢しようよ。」
「うん!」
今朝に比べて元気な顔だった。
話せる友人がいて歩乃歌は
仄かに笑顔を見せた。
・昼休み。
いつものように歩乃歌が
男子に混じってサッカーをしている。
「・・・・・。」
それを窓から白百合蛍が眺めている。
歩乃歌の一挙手一投足を
一瞬たりとも目を離さずに。
「ねえ、」
急に声をかけられる。
そこを向けば牧島眞姫。
「・・・何か?」
「あんたさ、歩乃歌に何か用なわけ?」
「紫さんに?
・・・別に用なんてないわ。」
「そう。でもあんた歩乃歌のこと
ずっと見てるよね?」
「・・・そうかしら。」
「・・・もし歩乃歌を悲しませたら
そのときはわたしがゆるさないから。」
「・・・・・。」
眞姫の鋭い眼光。
蛍は流した目で受け止める。
10秒ほど互いの眼光が
ぶつかり合ってから
「別に。そんなつもりなんて
これっぽっちもないわ。」
そう言って蛍は姿を消した。
「・・・・何考えてるのかしらね。」
眞姫は呟いてから机に突っ伏した。
・放課後。
今日は部活がないため
眞姫と共に下校する。
昨日の今日だ。
不安にならないわけがない。
「いい?もし遭遇しても
戦おうとはしないで。
さっさと逃げるわよ。」
「うん。」
何度も歩乃歌に言い聞かせる。
この子は優等生で真面目だけど
かなり頑固だから果たして
言うことを聞くかどうか。
一抹の不安を以て眞姫は
再三の注意をする。
既に夕焼け。
昨日と同じく電柱の上に
無数のカラスが止まり大合唱している。
自分たちと同じ学生たちが
わいわい騒ぎながら道を歩く。
生暖かい南風がスカートの裾を
なびかせる。
やがて昨日と同じ人通りの少ない
細道にたどり着く。
一本道でまっすぐ歩けば
歩乃歌の家を含めたマンモス団地が見える。
左右は駐車場になっていて
数百台以上の車が停められている。
一歩、また一歩。
慎重に歩いていく。
亀裂の入ったコンクリート。
気をつけなくては最悪
足をくじいてしまうこともあり得る。
だけどそんなことは気にしていない。
何より気になるのは昨日の
怪物が再び出現するかどうか。
「・・・・・ごくり。」
唾を飲み込む。
ゆっくり、ゆっくりと
慎重に茜色の道を歩んでいく。
歩乃歌はもちろんその歩乃歌の
緊張に引き寄せられて
眞姫もまた緊張していた。
正直半信半疑ではある。
でも、もしその怪物が現れたら・・・。
常識に考えればありえない。
でも隣を歩く友人の緊張と
人気の少ない茜色の細道が
どうしても不安と恐怖を引き立ててしまう。
鼓動が加速している。
先程から膝が笑っているのは
ミニスカの裾が短いからではない。
手に汗握っているのは
初夏の温風からではないだろう。
「・・・・あ、」
細道を抜けてマンモス団地の
前に到着した。
「ふう・・・・」
二人して大きな息を吐く。
「何もなくてよかったね・・・。」
「全くよ。じゃ、私はこっちだから。」
「うん。」
二人がそれぞれの家に向かい別れる。
嫌な汗をかいたものだ。
ブレザーの下に挟ませた
一本結びの白髪を外に出す。
ポケットからケータイを出す。
PM4:45
いつもより20分近く遅い時間。
それだけ先ほどの細道が怖かった。
「・・・もう怖いことはないよね?」
帰宅し靴を脱いで自室に入る。
ブレザー、制服、ブラを脱いで
部屋着を新たに装着する。
汗で傷んだ髪を梳かすために
一本結びを解く。
鏡台の前に座りブラシで
解いた長い白髪を優しく梳かしていく。
ある程度ストレートになったら
結ばずにそのまま下ろす。
「これでいいかな。」
ブラシを置いてベッドに座る。
ケータイを操作する。
メールの確認・・・・新着は無し。
P100100を確認。
相変わらずのゲーム画面のまま。
PAMTも異常はない。
「・・・PAMTってのじゃわかりにくいかな。
なにか名前をつけてあげなきゃ。」
ケータイを右手で持ち、
空いた左手で前髪をいじりながら
名前を考える。
ムラサキ号?
う~ん、リアルロボットには合わないな。
パープルザクとかは?
あ、版権料取られちゃうかな。
試行錯誤ならぬ思考錯誤。
やがてP100100と言う型番に気づく。
「百が連なってるから
百連って名前はどうかな?」
そう言ってP100100の名前を
百連に変更する。
同時に画面いっぱいに
WORNING!WORNING!WORNING!
の文字が出現する。
「きゃ!」
同時にすごいバイブが響く。
あまりの振動にその手を離してしまう。
「な、何、何・・・!?」
あたふたしながらも
ケータイを拾い上げる。
依然として振動と警告の文字は
進行形だ。
ただし文字に変化があった。
Unknown Monster X coming highspeed!
WORNING!WORNING!WORNING!
「アンノウンモンスターエックス?
もしかして昨日の・・・・!?」
言うや否や地面が揺れる。
地震に近い衝撃。
だけどそれ以上の衝撃が見えた。
向かいの建物の屋根の上に
昨日の怪物が立っていた。
そしてもう向かいの建物向けて
火炎弾を吐いていた。
コンクリートでできた建物も
激しく炎上し爆発する。
「があああああああ!!!」
建物から上半身が燃えながら
若い男が走り出した。
やがてその男は炎に焼かれて
地面に倒れて動かなくなった。
そのあとも建物の窓からは
女性の悲鳴らしきものが聞こえる。
「・・・あいつ・・・放っとけない・・・」
恐怖よりも不思議な使命感が、
冷静さよりも稚拙な情熱が
湧き上がってしまった。
窓を開けてベランダに出る。
ケータイの画面を操作し
百連を起動させる。
画面にカウントダウンが出る。
カウントダウンは9から始まった。
8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・
「・・・よし、」
ベランダの塀の上に乗っかる。
3・・・・2・・・1・・・0・・・
「今だっ!」
そしてベランダから飛び降りる。
歩乃歌の体が
8階のベランダからまっすぐ地面に
落ちていく。
その中でケータイからにじみ出た
大きな光が歩乃歌の体を包む。
やがて紫色の光となって
地面に優しく着地する。
型式番号P100100、ペットネーム:百連。
「・・・・。」
目を開ければ昨日と同じ
ありえない程の視点の高さ。
すぐ隣に電柱が見える。
電柱のてっぺんが
自分の目線と同じくらいだ。
一歩する。
ゆっくりな一歩で地面を壊さずに済む。
また一歩。そしてまた一歩。
ゆっくり怪物に近づいていく。
「踵にブースターがついているはず。
それを起動させれば・・・・」
しかし起動方法がわからない。
脳裏に一瞬。
強くイメージすること!!
と言う文字が浮かんだ。
「イメージ・・・。」
目を閉じる。
深呼吸をし、両足の先まで集中する。
「よし、かかとォっ!!」
一喝。
踵ブースターが起動し、
その大きい鉄の体が宙に舞い上がる。
「わっ、わわっ!!」
スピードが調整できず
マッハで真上の上空まで飛んでいく。
雲をぶち抜いて茜色の空を抜け、
青い空を抜けて大気圏に到達してしまう。
「力を緩めないと・・・・」
少し肩の力を抜く。
と、今度はブースターが止まってしまう。
「嘘だろォォっ!?」
大気圏からまっすぐ落下していく。
慌てて地面に落ちる前にブースターを
再起動させる。
「・・安定した。よし!」
高度100メートルを保ち
体勢を安定させる。
当然ロボットの操縦なんて初めてだ。
けどFPSのゲームは嫌いじゃない。
それと同じだと思えばいい。
7時の方向。
そこに屋根の上で炎を
吐いてる怪物が見えた。
その怪物向けて左手を向ける。
確か指先にはレーザーがあったはず。
左の五指を怪物に向ける。
「レーザー!!」
叫ぶと本当に指先から
レーザーが発射された。
発射されたと思ったら
すぐに怪物に命中した。
怪物の右側頭部あたりに命中し、
小さな爆発が起きて怪物は
足を滑らせて真下の地面に落下していく。
「よし!当たった!!・・・・あ!」
そこでやっと気づいた。
怪物は火事に群がる野次馬達の
上に落下したことに。
ここからでは視力の問題もあって
よくは見えない。
でも緑色だった怪物の肌に
赤い色が追加されていた。
「・・・こ、殺してないよ・・・きっと。」
そう言い聞かせ指を構える。
怪物が起き上がらないうちに
2発目を発射する。
レーザーは瞬く間に怪物の
下腹部あたりに命中した。
とはいえ胴体は目玉だから
どこか腹かなんてわからないけど。
2発のレーザーを受けて
怪物は苦しみながらも
立ち上がりそしてこちらを睨んだ。
「来る・・・・っ!!」
ブースターを加速させる。
体が一瞬で300メートル以上も
真上に上がる。
直後に先ほどまでいた空間を
怪物の吐いた火炎弾が通過していった。
が、その火炎弾は歩乃歌のマンションの
13階あたりに命中した。
ベランダを粉砕して火の玉が
リビングを焼き尽くし、
玄関ドアをぶち抜いて焼き払う。
「・・・上手く戦わないと・・・!」
ゆっくりと降下していく。
やがて怪物と同じ地面に着地する。
周囲を見る。
野次馬の姿は・・・・いない。
誰も巻き込むことはない。
「レーザーじゃ威力が足りない。」
怪物の傷を見ればわかる。
怪物は少し火傷をしていただけだ。
でもレーザーはチャージショットが撃てる。
脳裏に使用方法が浮かんでくる。
稼働時間を90秒減らすことで
任意でチャージレーザーショットを
放つことができる。
再び左手を怪物に向ける。
怪物との距離はおよそ100メートル。
怪物も火炎弾を吐くために
口を開けている。
やがて火炎弾が発射された。
すごく速いがレーザーほどではない。
だから発射されてから自分も
レーザーを放つことができた。
「いっけぇぇぇぇぇーっ!!」
チャージレーザーショット。
左腕全体から発射された極太レーザー。
青い輝きが目一杯に広がり
眩しさに目を閉じてしまう。
次いで爆音が響いた。
「・・・ど、どうなったの・・・?」
ゆっくりと目を開ける。
怪物の姿はない。
破片が散らばっていることから
今の一撃で消し飛んだのだろう。
だが消し飛んだのは怪物だけじゃなかった。
先ほどまで怪物が背にしていた
大きな和館が視界から消えていた。
否。それらしき跡はある。
だが和館は9割以上消し飛んでいた。
残っていたのは僅かな骨組みと
焼きただれて溶けかかっている
多数の死体だけだった。
「・・・ぼ、僕は・・・・」
ブースターを点火させた。
急いで上空に飛ぶ。
「僕じゃない・・
・・僕が殺したんじゃない・・・!
僕じゃない・・・・・!
僕じゃないんだ・・・・・!
僕は、僕は
怪物を殺しただけなんだぁぁぁ!!!」
大空で叫ぶ。
ありったけの声量で。
集う救急車両のサイレンの音も
掻き消えるほどの声だった。
そしてその叫び声もまた
茜色の空が運ぶ南風によって
かき消されてしまう。
「うわあああああああああああああ!!!」
涙を流す。
鉄の仮面は涙を流さない。
ただ茜色の空に紫色の影が見えただけだ。
P100100は涙を流さないし叫びもしない。
ただ一人の少女が泣いていただけだった。
夕焼けの色がひどく
燃えているように見えた。
自分を責め立てるために。
EPISODE3 加速
・夜が明けた。
「・・・・・。」
歩乃歌はろくに眠れもしなかった。
外でレスキューや工事などが
されていて騒々しいというのもある。
でもそれ以上に感触のない
殺人の感覚がどうしても拭えなかった。
右手は痛いし、
左手は怖いし。
テレビをつける。
当然ニュースになっていた。
「昨日、神奈川県本厚木市にて
奇妙な事件が発生しました。
住宅3棟に渡る火災。
内一つは全焼。
内一つはマンションの一室が全焼。
内一つは骨組み以外消滅。
昨晩からレスキュー活動が
進められています。
また、地元住人からの証言では
電柱と同じくらいの大きさの怪物や、
それと同じくらいの大きさの
ロボットが戦っていたという情報も
入っています。
現在地元警察が調査を進めています。」
キャスターが読み上げる。
テレビにはよく見慣れた風景が
廃墟となって映し出されていた。
確かに3つのうち2つはあの怪物が
やったものだ。
でも最後の一つは紛れもなく自分がやった。
この手で消し飛ばしてしまったものだ。
ゴンゴンゴンゴンゴン・・・・・・・
上の階で物音が響く。
「そういえば13階くらいにも
あの怪物の攻撃が行ったんだっけ。」
ぼんやりと呟く。
ケータイを見る。
AM7:23
いつもより20分遅い。
「・・・着替えなきゃ・・・」
ベッドから起き上がり
寝巻きを脱ぎ制服に着替える。
しかしどうも手足が重い。
生身でいながら百連の手足のようだ。
その感覚が嫌でもこの手で起こした
戦火を思い出させる。
「かかとぉっ!・・・・・あ、」
つい踵に集中してしまう。
当然自分の足にブースターはない。
「・・・僕、どうしちゃったんだろ。」
顔を冷たい水で洗いながらも
顔面の火照りが冷めない。
のぼせているのだろうか。
「・・・・学校行こう。」
鞄を持って家を出る。
エレベータで1階まで降り、
あの細道を通る。
「あれ?」
声が聞こえた。
振り向けば眞姫がいる。
「眞姫、おはよう。」
「あ、うん。おはよう。
どうしたの歩乃歌?」
「?何が?」
「いや、髪結んでないじゃん。」
「・・・・あ、」
頭を触るまで気付かなかった。
白髪が結ばれないまま
まっすぐ背中に流れていた。
当然髪留めは持ってきていない。
多分鏡台の上に置きっぱなしだ。
っていうかブラもしていない!?
「・・・どうしたの?
急に自分の胸なんて揉んで。」
「ぶ、ぶ、ぶ、ブラ忘れた・・・・」
「・・・あんた今日大丈夫?」
「・・・・・。」
ケータイを見る。
AM7:48
家を出て10分。
今から戻ったのでは遅刻してしまう。
「眞姫!眞姫のブラ貸して!」
「貸せるかアホ!」
即答。当然である。
どうしようか・・・。
ブレザーを着ているから
大丈夫だとは思うが。
しかし、ブラジャーなしで学校に行って
いいのだろうか?
男子に気付かれたりしないだろうか。
特にサッカーする時なんて
ブレザー脱いでるし・・・汗はかくし・・。
そ、それに髪だって・・・・!
いつも一本結びにしてしかも隠してるから
いきなりストレートできたら
おかしいんじゃないだろうか・・・。
スカートは履いてるけど
全然女子っぽくしてなかったから
男子からも女子からも変な目で
見られるんじゃないだろうか。
「はいはい、ストップストップ。」
ネガティブスパイラルになりかけていた
ところで眞姫が遮った。
「あんた顔に全部出てる。
「あう・・・」
「・・・まあ、一度戻っても
走っていけば間に合うでしょ。」
「・・・・う、うん。」
という訳で来た道を走って戻り
急いでブラを装着し、髪を結び
いつもどおりの格好をして
走って戻ってきた。
ケータイを見る。
AM8:06
「急ぐよ、歩乃歌。」
「うん!」
そして猛ダッシュ。
陸上部の眞姫はもちろん
歩乃歌だって並の女子より
数段速い。
と言うか陸上部員とほぼ
同じくらいの速度だった。
流石にエースの眞姫には及ばないが
下位の部員よりかは速いんじゃないか。
「はあ、はあ、」
昇降口で上履きに履き替え、
急いで教室にタッチダウンする。
ケータイを見る。
AM8:29
そしてチャイムが鳴る。
「ギ、ギリギリセーフ・・・・」
呼吸荒くしながらもギリギリ間に合った
ふたりは顔を見合わせて拳を合わせた。
「・・・・・。」
それを白百合蛍が見ていた。
「さて、ホームルームをする。」
担任の筧清先生が
教室に入ってくる。
「みんなも知ってると思うが
昨日このあたりで事件が起こった。
怪物だのロボットだの信じられる話では
ないだろうが十分気をつけるように。
では、出席を取る。」
こうしてまた学校生活が始まった。
すっかり恐怖や焦燥などが
今の歩乃歌からは消えていた。
・昼休み。
「お弁当忘れたァっ!!」
それに気づいたのは
今日絶賛絶不調な紫歩乃歌ちゃんである。
「あらら・・・」
眞姫も苦笑するしかなかった。
「ちょっと購買で何か買ってくる!」
財布の中には100円玉が4枚くらいしか
なかった気がするけど
それでもなにか買えるはず。
購買なんて滅多にいかないけど。
けど予想通り購買はすごく混んでた。
レジを囲むように生徒たちが押し寄せて
パンやらおにぎりやらを注文している。
店棚にあるものは
ゴーヤゼリー、
1メートルフランスパン、
ハバネロ1キロ分
だけだった。
「ど、どれを買えと・・・・?」
今朝とは別の意味で手が震えていた。
「し、仕方ない。これにしよう。」
1メートルの長さのフランスパンを
手にとってレジに向かう。
三日分くらいありそうだ。
値段を見れば400円。
財布を見たら400円ちょうど。
「・・・・夕飯もこれで持たせようかな。」
などと悲壮な決意をしていると
ウォォォォォォォォォ・・・・・・ン!!
警報が轟く。
先ほどまで騒いでいた購買が
別の意味で騒がしくなる。
「校庭で爆発が起きました!
火災も発生しています!
生徒たちは速やかに避難してください!
これは避難訓練ではありません!
繰り返します!」
スピーカからけたたましい声が聞こえる。
窓を見れば校舎のどこかから
煙が上がっているのが見える。
・・・訓練ではないようだ。
けど、同時に不安もあった。
だってポケットの中の
ケータイが激しく振動しているから。
(・・・学校に怪物が・・・!?)
避難する生徒たちの中で
歩乃歌は一人進路を変えた。
誰もいない廊下を走る。
少しずつ煙が近づいてきている。
「・・・あそこだ・・・!」
1階にある1年生の教室。
そこから火煙が上がっている。
その向かい側の校庭に。
炎の海の中にあの怪物がいた。
昨日倒したばかりのあの怪物が。
避難する生徒達を見つけては
火炎弾を吐き散らす怪物。
ドゴォォォォォン!!
窓を粉砕し、廊下の一角で
爆発が起こる。
瞬く間に壁が崩れて燃え盛る。
おそらく今のでも何人かは
死んでしまっただろう。
「・・・あれ?」
その炎の中に一人立つ影があった。
「怪物め!俺が相手だぞ!」
花京院茂。
彼が炎の中に立っていた。
「茂くん!?何してるの!?」
驚愕を隠せない。
だがもっと信じられない
出来事が発生した。
「来い!インフェルノ!!!」
茂が叫び、ケータイを掲げる。
するとそのケータイから激しい光が瞬く。
「まさか・・・これって・・・・!?」
光が晴れてそこに立っていたのは
百連の2倍くらいの大きさの
赤い色をしたロボットだった。
百連と違い人型ではなく恐竜型。
両手には鋭い爪が、
両足には砲門のようなものがついている。
「行くぜ!!」
赤い機体が走る。
ものすごい速さだ。
一瞬で100メートル以上離れた
怪物の眼前に迫り脳天にあたる部分に
禍々しい牙で噛み付く。
怪物の全身を緑色の血が流れる。
「うおおおおおおっ!!」
噛み付いたまま怪物を
高く持ち上げ、勢いをつけてから
右方に200メートル以上投げ飛ばす。
怪物は校庭の端まで投げ飛ばされて
砂煙を立てて頭から墜落した。
「うおおおおおおお!!」
赤い機体が校庭を駆ける。
倒れている怪物の両足を
右足で踏み潰し、両手を怪物に向ける。
「くらえ!
正義の炎ジャスティスファイヤー!!」
向けられた両手の掌から
ものすごい熱量の火炎が発射された。
一瞬で戦場が炎の海となる。
「きゃ!」
その炎は歩乃歌が見ていた窓にまで
飛び移る。
「紫!!」
そこへ筧先生が走ってきた。
「紫!すぐに避難するんだ!」
「で、でもあの、茂くんが・・・・」
「ああ、見ていた。
というか見せられた。
あの中二病に巻き込まれる前に
避難するぞ!さあ!走れ!」
「は、はい。」
筧先生とともに廊下を走る。
すぐの後ろの方で爆発が起きた。
「え・・・?」
振り向いたらそこに先ほどの
赤い機体が突っ込んでいた。
「が、がはっ・・・・!!」
その赤い機体の胸元に
巨大な足のようなものが置かれていた。
否。
緑色のドラゴンが赤い機体を
校舎に踏み倒していた。
「し、茂くん!」
ドラゴンの大きさは
この赤い機体の2倍以上。
この学校の校舎よりかも
余裕で大きかった。
ドラゴンの膝あたりに屋上の
フェンスがあたっていた。
「ど、どうしてドラゴンが・・・!?」
「UMX1号が進化したんだ。」
「え・・・?」
「あの馬鹿の炎を全部吸収したんだ。
それで進化しちまったんだよ。
あのUMXはな。」
「アムクス・・・?」
「がああああああっ!!」
また悲鳴。
見れば再び赤い機体が踏みつけられていた。
赤い機体の腕が歩乃歌達のいる
廊下向けて振るわれる。
「危ない!」
筧先生が歩乃歌を抱えて
最寄りの教室に飛び込む。
一直線の廊下全域に
赤い腕が叩きつけられ
廊下は崩れ、その瓦礫と窓ガラスの破片が
下の階の廊下に散乱する。
「くっ、正義の炎が負けてなるものか・・」
赤い機体・・・花京院茂は
歯を食いしばりなんとか
ドラゴンの足をどけて
背後を奪って構える。
「ふぁい・・・・」
「よせ花京院!!!学校を燃やす気か!?」
「くっ・・・!」
あと少しで炎が放たれようとしていたが
筧先生の声を聞いて中断された。
直後にドラゴンの尻尾が
赤い機体をなぎ倒す。
「があああああっ!!」
赤い機体が体育館に倒れる。
屋根を突き破り巨体が粉砕する。
「・・・・・・うううっ、」
やがて機体は輝き、
光が晴れると体育館の中央に
倒れた茂の姿があった。
「やはり試作型PAMTではUMXに勝てないか。」
「先生、あれのこと知ってるんですか?」
「・・・まあな。
さて、MARKSを呼ぶかどうか・・・」
筧先生がよくわからないことを呟く。
パムト、アムクス、マークス。
聞いたことがない名前たちだ。
「って、それどころじゃないや!」
校庭を見る。
ドラゴンが体育館の方に向かう。
「だ、ダメ・・・・!」
思わず走る。
走りながらケータイを操作する。
P100100改め百連を起動させる。
「百連!!」
窓から飛び降りる。
体が大きく輝き、
校庭に紫色の機体が着地する。
「・・・あいつまでPAMTを・・・!?」
後ろで驚く声が聞こえるが
今は集中している。
頭はドラゴンの膝下くらいまでしかない。
「かかとォっ!!」
ブースターを起動し、飛翔する。
視界が無数の線となり
1秒かからずにドラゴンの
頭上に舞い上がる。
「レーザー!!」
両手の指からレーザーが発射される。
青い輝きはドラゴンの脳天に命中する。
火傷は見当たらないが煙は出ていた。
だがダメージはないようだ。
ドラゴンの進撃は止まらず
体育館まであと一歩といったところ。
「止まらない・・・・。
でもチャージレーザーは使えないし。」
脳内で他に使用できる武器を探す。
「・・・ファランクス!」
それを見つけ出し、
銃身3メートルほどの銃ファランクスが
その手に出現した。
「茂くんを助けなきゃ・・・!」
ドラゴンの前方に回り込み、
その開いた口向けて
ファランクスを発射する。
引き金を引くと強烈な反動が
両腕を襲う。
鈍い音を立てて発砲された弾丸は
空中で20に拡散し、
ドラゴンの口の中に吸い込まれていく。
内2発がドラゴンの後頭部あたりを
貫いて後方に散らばる。
さすがに効いたのかドラゴンは
口を押さえて後ずさっていく。
「・・・2射目・・・!」
そのまま2発目を発射する。
発射されてすぐに拡散し、
20の小さな弾丸が
ドラゴンの腹から胸のあたりに
次々と命中していく。
その全てが皮膚を貫通して
内臓に穴を開けていく。
ドラゴンは膝を折る。
口や胴体から血がにじみ出る。
「3発目を・・・・!」
引き金を引く。
しかし、それより前に
ドラゴンは大きな翼を広げて
その場から突風を起こしながら
飛翔していく。
「・・・逃げる・・・!?」
既に敵は頭上数百メートル。
ブースターで追える速度でもなかった。
「・・・・逃がしちゃったか。」
ゆっくりと地面に着地する。
同時に紫色の光が発せられ、
消えると同時に元の体に戻る。
「・・・茂くん・・・」
体育館の残骸に倒れる茂。
歩乃歌は走って近寄り
無事を確認する。
「うううっ・・・・」
出血や骨折はしているが
呼吸は十分だ。
出血もそこまでひどくはない。
「・・・よかった・・・・!」
緊張が解ける。
だが怪物は前よりも強化されて
勝利できずに今も
地球のどこかを飛び回っている。
その事がどうしても不安を拭わせなかった。
やがて救急車が来て負傷者や
茂などが運ばれていく。
死者は確認されているだけでも17人。
負傷者は300人以上もいる。
そしてUMXやPAMTの存在が
学校で公になってしまった。
EPISODE4 連携
・病院。
あのあと当然学校は臨時休校。
体育館や校舎の修復に
2週間かかるそうだ。
「失礼します。」
歩乃歌は眞姫、
そして筧先生と共に病室に入った。
「よう、来たか。」
ベッドに茂がいる。
「怪我はどうだ?中二病。」
先生が苦笑交じりに話しかける。
「肋骨が何本か折れているだけっすよ。
一週間くらいで退院っす。」
「そうか。」
「はい、お見舞い。」
「お、サンキュー。」
眞姫がお見舞い用のフルーツ詰め合わせを
机の上に置く。
「だ、大丈夫?」
「紫か。久々だな。」
「う、うん。」
「青春トークもいいが
まずは俺の話を聞いてくれ。」
ふたりの間に割って入る。
「先生、あの怪物は何なんですか?」
「あの怪物はUMXだ。
Unknown Monster X 、平たく言えば
地球外生命体だ。
半年くらい前に巨大なUMXが
地球に襲来した。
もちろん世間には知らされていない。
UMXを迎撃する特殊部隊MARKSが
出撃してそいつの撃破には成功した。
だがそいつの破片が日本周辺に
落下したんだ。MARKSは大丈夫だと
踏んでいたようだが
そのUMXは再生能力がとても強かった。
だから破片の状態でも
新たな一個体の生物として
再生できたんだ。
それがお前達が昨日戦った
あの怪物だ。
そしてお前達が使ってるあの
PAMTという機体は
本来MARKSが対UMX用に使用する
携帯戦術兵器だ。
どっかの馬鹿がMARKSの
データラボから無数にある試作機の
データをばら撒いちまったようだな。
それがアプリという形に隠蔽されて
中学生の間で流行っちまったってわけだ。」
「先生はどうして
そこまで詳しいんですか?」
「俺の親父がそのMARKSにいたからだ。
さっきも言ったが半年前に
地球を襲った全長300メートル以上の
巨大UMXを迎撃する作戦に参加していた。
親父はそこのエースだった。
けど人間の力には限度がある。
当時最新式で唯一無二のPAMTを
使っていたが勝利することはできなかった。
親父はそこで殉職したんだ。」
「・・・すみません。」
「いや、いい。
とにかくそんなわけでだ。
お前たちはもうPAMTを使う必要はない。
即刻そのアプリを削除しろ。
俺がなんとか親父の遺品から
MARKSに連絡をしてみる。
お前たち中学生が体を張って
UMXどもと戦う必要はない。
これからはプロの大人の出番だ。
元々奴を倒しきれなかったMARKSの失態だ。」
先生は何度も念を押してきた。
否定しようにも一昨日の
恐怖は忘れ得ないし、
目の前には骨折して入院している
茂の痛々しい姿もある。
答え合わせをするまでもなく
模範解答は目に見えているだろう。
意地を張るでもなく正義風を吹かすでもなく
体を打つ恐怖と目に見える敗者の姿に
正直に敗北して力を放棄するのが正答だ。
だからそのまま百連のデータを
ゴミ箱に捨てた。
・三日後。
特にやることもない歩乃歌は
眞姫を誘って茂のお見舞いへと向かう。
別に茂へのポイント稼ぎ
というわけではない。
そこまで打算的な女ではないし
この状況でそこまでの余裕を
見せられるほど
場数を踏んでいるわけでもない。
ただこうでもしていないと
何かに押しつぶされて
しまいそうな気がしたから。
「ねえ、歩乃歌。」
「え、なに?」
病院のエレベータ。
入った途端に眞姫が話しかける。
「まだPAMT残ってる?」
「いちおう・・・。
ゴミ箱の中だけど。
簡単に削除しちゃっていいのかなって。」
「私ね、昨日試したんだ。
歩乃歌に言われた通りの方法で
PAMTを起動したんだ。」
「・・・もしかして、戦うの?」
「ううん。でも、どうせMARKSが来たら
没収されちゃいそうだし。
それまでに出来ることは
やってみようかなって。」
「・・・・できること・・・・・」
考える。
出来ればあの強力な力は使いたくない。
まだ3回しか戦ってないけれど
百連は自分に余る力だろう。
けれど、もしかしたら。
もしかしたらだけど。
もう少し百連のことを
知ってもいいかも知れない。
むしろ何も知らずにあの力を
使って戦うほうが危険かも知れない。
「・・・・あ」
そう思っていたら勝手に手が
ケータイを操作していた。
百連のデータを本来の場所に戻す。
「・・・これで・・・・」
その時だった。
体全体を揺るがす衝撃。
否。エレベータ籠自体がひどく揺れていた。
そして二人のケータイもまた
ひどく震えていた。
「まさか・・・ここに・・・!?」
エレベータが停止してしまう。
証明が切れて視界が一瞬で暗転する。
急停止したことで
慣性の法則が働いて転んでしまう。
「痛っ!」
「どうしよう、閉じ込められたかも・・!」
声でしかわからないが眞姫は
転んでいないようだ。
けど冷静ではない。
何度もドアを叩く音がする。
だけど開く音は全くしない。
聞こえる音はドアを叩く音と
時折響く爆音とケータイの振動だけ。
この状況を推測すれば病院に
UMXが襲撃をしているのだろう。
爆音からして建物にいくつか
火炎弾を吐かれているのかもしれない。
つまりこの病棟の寿命は
それほど長くはない。
少なくともこのままのさばっていては
病棟とともに炎に沈むだろう。
だから歩乃歌は・・・。
百連を起動させた。
「え・・・?」
天井、床をぶち抜いて
紫色の機体が出現する。
「眞姫!!」
眞姫を抱き上げる。
「かかとォっ!」
ブースターを起動させ、
そのまま飛翔する。
次々と階層をぶち破って
1秒もかからずに上空まで
飛翔する。
地上500メートルから
地上を見下ろす。
やはり先日のドラゴン型UMXが
病院を襲っていた。
既に半分以上が焼き尽くされていた。
「眞姫、大丈夫?」
「な、なんとか。」
そういうもかなりのGがかかったはずだ。
顔が青い。
「それより地上に下ろして。
私も一緒に戦う。」
「・・・わかった!」
今度はゆっくりと地上にまで降下する。
その間に眞姫はPAMTを操作している。
「アボラス起動!」
そして着地と同時にそれを起動させた。
眞姫の体が青く輝き
青い光が一瞬視界を塞ぐ。
次の瞬間。
百連の倍近い大きさの青い機体が
そこに立っていた。
全身に多数の銃火器を装備した
青いPAMT・アボラス。
「歩乃歌、このアボラスは
全身の火力武器を使えるわ。
けど運動性は低い!」
「わかった!僕がサポートする!」
アボラスが右腕に7メートルもの銃身たる
50ミリガトリングキャノンを構え、
百連がブースターを起動させる。
「こっちだ!」
UMX向けてレーザーを発射する。
青い閃光はUMXの左肩に命中する。
相変わらず煙が出ただけで火傷はない。
こちらに気づいてもいない。
「ファ、ファランクス!」
ファランクスを召喚し両腕に抱える。
引き金を引き、発砲。
弾丸は発射されて少し経つと
20個に拡散されて
UMXに向かっていく。
多くの弾丸がUMXの上半身に
命中していく。
だが拡散されすぎてほとんど
威力がない。
距離が遠すぎるのだがそれに気づかない。
「あれ?ど、どうして!?」
2発目。
衝撃で手元が狂い、
半分しかUMXには命中せず
残り半分の弾は地上で
避難活動をしている病人や
看護婦、医師たちに降り注ぐ。
「ぐあああああああああああああ!!!」
地上からたくさんの悲鳴が聞こえる。
「え、何・・・?何に当たったの・・!?」
ここからではよく見えない。
構わずUMXの動きを止め
眞姫の射線へと導くために
3発目を発射する。
20発中8発がUMXの左腕に命中。
その強靭な皮膚を貫通する。
だが残り12発はその足元を
走り抜けようとしていた救急車たちに
降り注いだ。
屋根を貫いて弾丸の雨が
運転手や患者を貫いていく。
ドライバを失った救急車たちは
運転できずに次々と玉突きとなっていく。
横転した一台が歩道に倒れていき
車椅子で避難していた老婆を踏み潰す。
「ちょっと!歩乃歌!?
何やってるの!?」
「何って敵の注意を
引きつけてるんだけど・・・?」
「あんた目悪いんだよ!?
そんな距離からショットガンなんて
撃っても当たるわけないでしょ!?
さっきからあんたが撃ってるのは
避難している人たちだよ!?」
「え・・・?」
抱えていたファランクスが手放される。
その鈍重なファランクスが
避難患者の列に落下する。
「・・・・そんな・・・」
ブースターが停止して体が真っ逆さまに
落ちていく。
「歩乃歌!!」
青い機体が銃を捨て、
ブースターを起動させて飛行。
墜落前に百連を回収する。
「このっ!!」
左足のホルダーからミサイル拳銃を
引き抜いて前方のUMXへ発射する。
銃口から2メートルほどのミサイルが
発射されてUMXの左目に命中する。
眼孔に命中しミサイルが爆発する。
さすがにUMXも激痛があったのか
地団駄を踏み、大きく叫ぶ。
そしてそのまま翼を広げて
どこかへ飛び去っていってしまった。
追うこと自体は可能であったが
アボラスの武器はミサイルガン以外
どれも火力は高いが重すぎて
空中では使用不可能。
それに運動性も低いから
空中戦は圧倒的に不利。
「・・・くっ!」
仕方なく追撃は断念した。
・夜。
病棟は使い物にならない。
火は消し止められたが
負傷者が多すぎる。
死者は最低でも60人以上。
負傷者だけなら300人以上もいる。
「・・・・・・・。」
歩乃歌は廃病棟となったそこに
座り込んでいた。
「・・・・歩乃歌・・・」
眞姫は少し離れたところにいる。
でも何も言えなかった。
歩乃歌はアルビノだ。
白髪赤眼だけが症状じゃない。
平均以下の視力。
だのに遠距離からのショットガン。
失敗して当然である。
しかしその心にそれを考えられるだけの
冷静さはなかった。
既に4時間以上もこうしている。
そこへ足音一つ。
「・・・紫、」
花京院茂。
「茂くん・・・僕は・・・」
「まだ負けたわけじゃない。」
「でも、僕は・・・」
「お前はお前に負けているだけだ!
あの怪物はまだ誰にも負けていない!
先生はMARKSってのを呼ぶって言ってたがな。
外国から来るまでには時間がかかるだろう。
それにそれまでに自分が襲われたら?
自分が守りたいものを襲われたらどうする?
立てよ、紫。
お前はまだ負けていない。
俺たちはまだ戦える。
お前一人で、お前たち二人で
勝てなくても俺がいる。
3人でならきっと勝てる!
だから、たてよ。紫。」
「・・・・うん。」
まだ元気はない。
振り切ったわけではない。
だけど立ち上がらないわけにも行かない。
戦っても犠牲は避けられないかもしれない。
それでも戦わずに見殺しにすることを
僕は許せなかった。
・翌日。
仮設住宅街。
UMXとの戦いで家を失った人々が
暮らす仮設住宅街。
歩乃歌、茂、眞姫はそこを訪れていた。
UMXは今まで人が多く集まっている
場所を狙ってきた。
目的はわからない。
だけどこの街で次に襲われる可能性が
高いのはここだ。
1万人近くがここにいる。
そして、その時は来た。
AM8:45
3人のケータイが振動する。
「・・・きたか。」
茂は双眼鏡で彼方の空を見る。
青い空に一点の緑。
あのドラゴンタイプのUMXだ。
「行くぞ!紫、牧島。」
「うん!」
「ええ!」
3人がPAMTを起動させる。
「P100100百連!」
「P2000アボラス!!」
「P1133インフェルノ!!」
仮設住宅街に立つ3体のPAMT。
百連が飛行能力を持たないインフェルノを
抱えてブースターで飛翔する。
アボラスもブースターを起動させて飛翔。
仮設住宅より2キロ離れた埋立地。
そこに着陸する。
UMXは前方300メートル。
「60ミリスナイパー!」
百連がその腕にスナイパーライフルを
召喚する。
射程は30キロメートル以上。
視力補佐機能が加わり
スコープに敵の姿が鮮明に映る。
「まずはもう逃がさないように
翼を破壊する!」
「はい!」
スコープの照準を翼に合わせる。
撃鉄をセットし引き金を引く。
60ミリの弾丸がマッハ3で発射される。
1秒もしないうちに標的である
UMXの左翼を貫く。
UMXはまともに飛行できずに
急降下していく。
落下していくUMXの右翼に
照準を合わせて2発目を発射する。
昇順はわずかに逸れるが
見事右翼に大穴を開ける。
両翼を失ったUMXは
300メートル前方の岩山に墜落した。
それを確認するとスナイパーライフルを
転送し、両肩のシールドを外す。
「かかとォっ!」
ブースターを起動する。
岩瓦礫の山に倒れているUMXの
真上500メートルに到達し
そこから急降下する。
「えいっ!」
シールド裏に収納されていた
4本のダガーをUMXの首向けて投げる。
4本のダガーはUMXの首に命中すると
瞬時に爆発する。
咆哮をあげてUMXが立ち上がる。
そして真上にいる百連向けて
炎を吐く。
「させない!」
そこでアボラスが
50ミリガトリングキャノンを
発射し、敵の背中を撃つ。
背後からの攻撃を受けて
UMXはバランスを崩して
炎を中断してしまう。
「おらああああああああああ!!」
そこへインフェルノが走り、
UMXの後頭部に噛み付く。
「サンダァァァァァファングッ!!」
牙が肉にえぐり込むと同時に
300万ボルトの高圧電流を流す。
高圧電流はそのまま直接
頭脳に流れ込み脳神経を破壊していく。
「さがって!!」
百連がUMXの腹部前に到達し
両手をUMXの腹に付ける。
「チャージレーザーショット!」
インフェルノの退避を確認してから
極太レーザーを発射する。
青い閃光はUMXの下腹部を中心に貫通し
その熱エネルギーで
UMXの内臓や骨を溶解し、
脊髄を失ったUMXの体は
ドロドロに溶けて崩れ落ちていった。
「・・・・勝った・・・!」
勝利を確信した。
今度は再生されないように
3人でその残骸を完全に焼き尽くす。
灰燼も残らぬ程に焼却して
もう一度勝利を高らかに喜んだ。
MARKSの特殊精鋭部隊が到着するまで
この街を襲うUMXは
この手で倒す。
なるだけ犠牲を少なくするために。
それを目処に戦うことを
この日僕たちは決意した。




