表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霹靂のPAMT  作者: 黒主零
第9話「最後の日常」
24/28

・2週間ぶりに訪れたそこにはいつもどおりの文字はなかった。

セントラル。最近は無駄に良く縁がある場所で、現在蛍と火核さんがお世話になっている場所だ。

和佐さんに呼び出された僕達……と言ってもまだ蛍、火核さん、花京院くん、眞姫は到着してないけど……は会議室にやってきた。以前に火核さんと戦う前に筧先生に呼び出された場所だ。

「なるほど。あの二人は部活ですか。いいですね、学生らしくて」

既に和佐さんはいた。朝の制服姿ではなくいつもどおりの巫女服だった。どうして、学校が休みなのに朝は制服姿だったんだろう。……いや、答えはもう聞かされてるっけ。お兄さんのところへお弁当を届けに行っていたんだ。それがどうして制服姿だったのかは知らないけど、もしかしたらこんな面倒な事態になっていることをお兄さんに隠すためにいつもどおりの日常を演じているのかもしれない。

「……何か質問とかありましたか?」

「あ、いえ、何でもないです。でも、あの4人遅いようでしたら呼びましょうか?」

「いえ、あと2時間は大丈夫です」

「2時間?」

「はい。今までお話したことはありませんでしたが、列強宣言の世界からこの世界へ誰かがやってくる場合、つまりUMXとなって出現するには時間差があるんです。それが2時間。そして現状誰もこちらの世界への門を通ってはいないようですから。最低でもあと2時間はUMXは出現致しません」

「へえ、」

そう言えば前に蛍が言っていた。筧先生のような下級スタッフよりかも蛍の方に先にUMX出現の情報がやってくると。なるほど。本来なら2時間前にはUMX出現は感知出来るんだ。でも、筧先生は下っ端だから出現の数分前或いは直前にしか知ることが出来ない、というわけなんだね。でも蛍でも10分前が限界とか言っていた。前にセントラル内でクーデターが起きたけど、やっぱりセントラルも一枚岩じゃないみたいだ。

「あの、僕達も一緒でいいんですか?」

「麗矢さんに星矢さんにギネスさんでしたっけ? 元4号の。問題ありませんよ。歩乃歌さんから聞いているかもしれませんが、元UMXのあなた方は既にUMXとの関連性は断ち切られていますが万が一と言う事もあります。

何より、私はまだセントラルの情報を有して2週間弱しか経っていません。前回のクーデターの際や、5号の時に多くのセントラル職員が殉職されたそうですから彼らだけが有していた情報もあるかもしれません。なので申し訳ありませんが私にも分からない事はあるのです。むしろそちらの方が多いでしょう。私と蛍さんと最上さんの3人で知識を分け合ってやっと全体の8割行くかどうかでしょうし」

「……そうですか」

「なので難しい話はここまでにして、麗矢さん。男性のEDを逆に加速化させるお薬ありませんか?」

「へ!?」

な、いきなり何を言い出すんだこの人は!? え!? この人確か女の子だよね……!?

「あ、あるけど何に使うんですか……?」

「いえ、どこぞの不変さんがまたどこかで女の子を襲っているような気配がしているのでもうこれは去勢した方がいいのでは? と思いまして」

「……えっと、450円です」

「安っ!! ってか和佐さん結構物騒なこと言ってません!?」

「大丈夫です。私なら零のGEARを破れます」

「? 何の話をしているんですか? ……そう言えば、以前にも時々耳にしてましたけどGEARってなんです?」

「GEARは世界を構成する役割であり力の事ですよ。例えば炎のGEARの持ち主はその名の通りアニメや漫画みたいに炎を自在に操る事が出来ます。ですがその炎のGEARの持ち主が一人もいなくなってしまった場合、その世界から炎という概念は消滅します。多分復活も出来ません。……この世界ではまだ殆どが未覚醒のようですが私のいた世界ではGEARを保護する組織まで出来上がってきています。まあ、それでもGEAR覚醒者の割合は1割行けばいいほうなんですけどね」

「へえ、でも昔最果ての扉の先で待つ者はGEARを持っていれば世界を越えられないとかそんなこと言っていたような気がするんですけどどうなんですか?」

「いえ、そんな事はありませんよ? 私だってGEARがあるのにこうやって普通に複数の世界を渡っていますし。ただ、私の知る限りGEARの事をすべて知っている人間は誰もいないので、もしかしたらそう言う人知を超えた存在の言葉には私達の知らない未知なる危険性があるのかもしれませんね。例えば、世界で1種類しか存在できない重要なGEARをオンリーGEARと呼びますが、他のGEARと違ってオンリーGEARは世界に1つしか存在できないからオンリーGEARの持ち主は世界を超えてしまうと複数になってしまうから世界のバランス的に世界線の渡航が出来ないとかって言うのはあるかもしれません。そう言えば、私の兄はオンリーGEARの持ち主なんですが全く別の世界に行った事はありませんね」

「……はぁ、そうなんですか。正直まだいまいちピンと来ませんね。PAMTとかUMXとか性殺女神セキシキルアルクスとか超常存在は分かっても僕達ただの人間にそんな力があるなんて……」

「でも、あなたもGEARの持ち主なんですよ? この前に蛍さんと一緒にGEARに覚醒していたじゃないですか」

「それはそうですけど、和佐さんのみたいに目に見える何かじゃないからどうも意識しにくいと言いますか」

「GEARは概念を司りますからね。むしろ目に見えるモノの方が少ないですよ。実際手とか口かから炎出してる人がそこらじゅうにいたら危険じゃないですか」

「まあ、そうですね」

「まあ、私もGEARに目覚めたのはほんの数百年前なので詳しくは分かりません」

「……そうですか。ほんの数百年……いやいや!? 和佐さんあんた何歳なんですか!?」

「もう、歩乃歌さんてば。女の子に年齢を聞くのは同性でもいい事ではありませんよ?」

「いや、そういうレベルじゃないと思うんですが……。ひょっとしてGEARに目覚めたら不老不死になるとかですか?」

「いえ、そんな事はありません。確かに不老不死になるGEARはあるようですが、私のはそれとは別の要因です。GEARを手にするよりも1000年以上前には生まれていましたし」

「……」

衝撃の事実だ。和佐さんがロリババアだったとは。しかもスケールが違いすぎる。もしかしてこの世界が異常に短命なだけでほかの世界では当然の状態なのかな? 琉球のディベトロン・クルセイドみたいに。

「ただ、オンリーGEARって言うのは実はそこまで珍しくはありません。世界で1つしか存在しないものはすべてオンリーGEARに含まれるので。例えば麗矢さん達のような非常にレアなケースはその存在自体がオンリーGEARでいる可能性が高いんです。私には他人のGEARが何なのか分からないので断言は出来ないんですけどね」

「逆に言えば他人のGEARが何なのか分かる人っているんですか?」

「いるそうですよ。兄の知人とか。残念ながら私も兄も分からないので信頼度はそこまで高くありませんけど」

「……」

何だか本当にゲームの中の世界みたいだ。ひょっとしたら一連の流れよりフィクションっぽく感じるかも。

「……あ」

パラフォが振動した。でも、いつもの揺れだ。つまりメール。眞姫からだ。

「いま部活終わって花京院や白百合、火核さんを連れてセントラルに行くから」

との事だ。……セントラルに来た事がない花京院くんならともかく他二人を連れてくるってどういう事だろう?

そして20分後。僕と和佐さんと麗矢が廊下を使って50メートル短距離走で勝負をしていると答えはやってきた。

「何してるのよあんた達」

「いや、それ僕のセリフ」

言葉を発して先頭を歩くのは眞姫だ。でも背中には蛍を背負っていて、両手で花京院くんと火核さんを引きずっている。本人もかすり傷が目立つ。まるで時間稼ぎをしてくれていた味方を徹底的に叩きのめしてその死体を見せながら突如の初登場をかましたラスボスみたいな風貌だ。

「火核さんと花京院がまた喧嘩してね。流石にPAMTでの殺し合いはしなかったけど、チキンレースをしたの」

「チキンレース?」

「そう。自転車チャリで坂道をブレーキかけずに駆け下りるって奴。二人共最後までブレーキかけなかったんだけど曲がり角から現れたトラックを見て、」

「轢かれたの!?」

「寸前に方向転換しようとして二人揃って激突してずっこけた。それから完全にぶち切れた二人がPAMTを出して戦いを始めたから私と白百合で止めてきた」

「……あんた達何やってるの」

「し、仕方なかったんだ紫。こいつが俺の握った寿司を吐くから……」

「お酢の代わりにコーラを使った寿司なんて食べられるわけないじゃないのよ……!」

「だからってPAMTまで使って喧嘩するなんて……」

と言うか実際に殺し合った仲なのにむしろ一周回って仲いいなこの二人。

「最上さん? PAMTを最初に持ち出したのはあなたですよね? アズライトとクリムゾン以外のPAMTはUMX出現の反応がないと発動できないはずですから」

「だって向こうが竹刀持ち出してきたから……」

「あなたなら竹刀くらい指一本で破砕出来るでしょうに」

「そもそも竹刀持った奴相手にPAMT持ち出すとか頭おかしいんじゃないのかお前?」

「何よ何よ! あんたさえいなければお姉様の望みは全部かな……」

「……咲」

言葉は終わった。蛍が火核さんの口を塞いだ。それで火核さんが何を言いたかったのかが分かった。と言うか、あの日最初に花京院くんを殺したのも今思えばそれが由来だったのかな。

「いいよ、火核さん。だったら今度は僕が相手をしよう」

「は?」

「歩乃歌……」

声と視線を向ける蛍を遮って僕は彼女に歩み寄る。

「和佐さん、5分だけください。最終決戦前に遺恨は消しておきたいですから」

「……分かりました。最上さんをあなたに貸しましょう」

「……私、あんたのものじゃないんだけど? ……で、紫歩乃歌。私とどう戦うつもり? 言っておくけどあのチートPAMTを持ち出されたら勝てないから勘弁よ」

「君じゃないんだからそんな事しないよ。……勝負は簡単。ただの鬼ごっこだよ。制限時間5分のね」

「鬼ごっこぉ!?」

「そ。もちろんPAMTは持ち出さない、生身のね。野外だと僕が有利だと思うから場所は密室。火核さんが鬼で、一本勝負。僕を捕まえられたら君の勝ち。生死に関わらない範囲で君の言うことを1つ聞いてあげるよ」

「……5分であんたを捕まえられずに私が負けたら?」

「特にないよ? でも強いて言うならもう僕や僕の周りの人達を狙うのはやめて欲しいかな」

「……分かったわ。場所は?」

「会議室ってのはどうかな?」

「ちょっと歩乃歌。流石に会議室で鬼ごっこなんて……!」

「いいですよ。どうせ会議のデータはP2の中に入っているので」

P2って言うのが何かは知らないけど、和佐さんの許可は降りた。もう後は僕が火核さんに勝つだけ。

「あ、戻ってきた」

会議室では麗矢、星矢、ギネスが待っていた。でも残念ながら退場を願おう。

「今から僕、火核さんとタイマンの鬼ごっこするからちょっと出てくれる?」

「はぁ鬼ごっこ? まあいいけど。歩乃歌を倒すのは僕なんだからね?」

「はいはい」

「怪我しないでね? 室内だから危ないけど。いざとなったら私の女性ホルモンが3倍になるお薬あげるから」

「それはいらない……でも胸が大きくなるなら欲しいかな」

「あまり大きくても肩凝るだけよ?」

「なんで火核さんがそれを知ってるのさ」

「私、本来の姿だったらKカップだし」

「……け、け、Kカップぅ~!!?」

なんだそれは初耳すぎるんじゃないかな!? 今の段階でも僕と同じくらいかそれ以上だって言うのに……!

くっ! 殺意が沸いてきたけれども僕は逃げる方。存在の挑発には耐えないといけない。

「れーや? けーかっぷってなに?」

「ギネス、僕にとって永遠の宿敵の1つだよ」

「ともかく私達は邪魔みたいだから外に出ようよ」

「……さあ、早く始めましょ。あんたにはお姉様と結ばれて欲しいんだから」

「やっぱり君の目的はそれか」

僕達以外に誰もいなくなったのを確認する。覗き見することもあのメンツなら心配いらないだろう。

「僕が好きな花京院くんを殺すことで僕をフリーにさせて蛍とくっつかせる。場合によっては前みたいに花京院くんを生き返らせるって条件で一夜を共にさせる事も出来るだろうからね。でも、僕は絶対にそんなことしないよ! 僕はノンケなんだから!」

「その心意気、呆気ないほどあっさり潰してあげるわ!」

ポケットからパラフォを出す。アラームモードにして5分間にセットする。

僕は火核さんと円卓を挟んで正面に向き合い、パラフォをテーブルの上に置く。そしてスタートボタンを押した。

「スタート!!」

「ふんっ!!」

開始と同時に信じられない現象が起きた。彼女の足元の床が突如爆発したのだ。え、襲撃!?

「は、はぁ!?」

「生身なら何でもアリなんでしょ!?」

大きく穴の空いた床の断面を蹴って彼女はミサイルのように飛んでくる。

「くっ!!」

まっすぐ右に走り出す。左には本棚があるからこっちの方が広い。でも、これは想定外過ぎる! 生身でここまで出来るなんて聞いてないよ!?

「久々だなぁ、この感覚。しかも腕が自由!! これならあいつにも引けを取る事もないし殺してやる事もなかったかもしれないわね!」

「何物騒に意味不明宣っているのさ!」

崩落を始めているとは言え高さ1メートル以上はある円卓を彼女は軽々と一足飛びで超えて僕を追いかけてくる。正直、計算違いにも程がある。テーブルをどうにかするかもとは思っていたけど全く役に立たずにこんなアクロバティック見せてくるとは思わなかった。5分くらいならどうにか時間稼ぎ出来るかもと思ってたけどこれはやばい。……2分が限界だ……!! こうなったら……!!

「あいつあいつっていったい誰の話なのさ!? 恋人!?」

「……そんな簡単な仲じゃなかったわ。犯し合ったり殺し合ったりして、それでも嫌いじゃなかった。絶対に手を貸したりはしなかったけど、お互い大切なものを失い合っていたから……最後は助けたかった。あんな、あんな形じゃなくてちゃんと助けたかった……!!」

「……」

時間を稼ぐための問いかけだったけど彼女の声は感情的に変わった。今までの、お前なんていつでも殺せるんだけど一応話を聞いてあげようかな? みたいな感じじゃない。彼女の、最上火咲の本心が初めて僕に向けて叩きつけられてくる。いや、相手は僕じゃない。その助けられなかったって言う人だろう。でも、もうどこにもいない。それが彼女の世界の話だったら彼女は元の世界に帰りたくはないのかもしれない。記憶を失ったままでいた方がよかったかもしれない。

「……同情なんてやめてよね。私にとっての救いは破壊。それだけ。……ただ、それだけなんだから!!」

「それは嘘だよ!! 君はその人の事も蛍の事も間違いなく愛している! いい!? 説教たれるつもりはないけど、言わせてもらえれば! 蛍と言い、君と言い、自己犠牲なんて見ていて鬱陶しいだけなんだよ!! 勝手にやさぐれて、勝手に諦めて、勝手に死んでいく! それがひどく気に食わない!」

「はぁ!?」

「だってそうでしょ!? どんな敵が来たって僕なら倒せる!! どんな絶望が待ち構えてたって僕なら絶対に打ち破れる!! どんなに笑顔を拒む子がいても僕なら笑顔に出来る! 絶対になんだって出来る僕がここにこうして君の前に姿を見せて声を飛ばしているって言うのにそれなのに泣き言だけで勝手に納得して諦めて僕との関係を終わらせようとしている! そんなの我慢できない! 何勝手に諦めているのさ! 誰がそんなことを許したのさ! 僕と一緒にいて絶望するのは禁止!!」

足を止めた。どころか逆に彼女に向かっていく。

「あ、あんたルール忘れてない!?」

「忘れてない!!」

勢いよく手を伸ばす彼女。それを紙一重で躱して、それから彼女の正面に向き直る。

「くっ!!」

「何度やっても無駄!!」

次々と迫り来る手や足。それでも僕を捕まえることは出来ない。何だか僕の体が仄かに光ってる気がするけど、今はそんな事はどうでもいい!

「な、何で当たらないのよ……!? あいつにだってこんなこと出来やしないよ……!?」

「でも僕なら出来る! 火核さん……いや、火咲! 僕が火咲の絶望を侵略している間、火咲が絶望で得た力は僕には決して届かないんだから!!」

「何言ってるかわからないわよ!!」

「じゃあ言ってあげるよ!! 僕に任せていれば何だって出来る! だから諦めるな!!」

「だったら私で破壊されないか、私の破壊が届かないか受け止め続けてみなさいよ!!」

膝蹴り。放たれた右の一撃を本当の意味で受け止めるのは無理だ。だから膝蹴りがギリギリで届かない距離に直立不動して攻撃を止める。

「のおぉぉぉぉぉっ!!!」

はずだった。けど、彼女の足は伸びた。いや、膝蹴りから前蹴りに変わったんだ。

ギリギリで右足に全体重を乗せ、体を傾ける事で直撃を回避。

同時。崩落した床の下からアラーム音が鳴った。僕のパラフォが告げた音だ。

「……僕の勝ちだね」

「……くっ!!!」

「僕の気持ちは伝えたよ。だからその上でまた逃げて勝手に諦めるんだったら僕の目の見えないところでするんだね。そうすれば僕に悔恨を与えられるよ? 蛍にもね」

「……もういいわ。好きにすればいいわ。礼も恨み言も言ってやるもんか」

「だったら私の方からいいですか?」

ドアが開き、和佐さんが入室した。しかも何やら妙に怖い笑顔で。

「最上さん? 部屋を壊さないでくださいな。私がここに来てから負債しか溜まっていないんですけど?」

「ふん、私の知った事じゃないわ。そしてあんたの知った事でもない。あの子みたいに社長ごっこがしたいわけじゃないでしょうに。あいつみたいに英雄ごっこがしたいわけでもない。あんたはあんたらしい事をしているだけ。だったら問題ないじゃない」

「……」

「作戦会議を始めましょう。侵略者と歩乃歌がお待ちみたいだからさ」

なんだろう。今、僕の名前が呼ばれた気がするんだけど、でもそれが僕の名前とイコールな気がしない。それに侵略者って何さ。

「……分かりました。みなさんをお連れします。第二会議室で行いますのであなた方も移動をお願いします」

「その前に1ついい?」

「はい?」

「光陰も侵略されたって事でいいのかしら?」

「……どうぞご自由に」

……? 何の話をしているんだろう。微妙に和佐さんがさっきよりも機嫌が悪いように見える。

「歩乃歌、」

和佐さんが消えてから火咲は僕に言葉を投げた。今度は確かに僕の名前を呼んでいる。

「あんたのGEARはあんた自身、歩乃歌のGEARよ」

「は? 何それ?」

「和佐から聞いてない? 世界でたった一つの概念はオンリーGEARって呼ばれるって」

「いや、聞いたけど歩乃歌のGEARって何さ」

「そう言うんだから仕方ないでしょ。そしてもう1つ」

「へ?」

「あんたには侵略のGEARも備わっているみたいね」

「GEARって複数持てるの!?」

「……非常に稀なケースだけどね。自然発生するのはもちろん、人工的にGEARを追加するのも。でも確実に存在するわ。尤も、オンリーGEARの他に別のGEARを有するのはあんたが初めてよ」

「……火咲、君は他人のGEARが分かるの?」

「何となくね。……まあいいわ、第二会議室に行きましょう。和佐をこれ以上怒らせても得はないしね」

それだけ言って火咲は部屋から出ていってしまった。

……侵略もそうだけど歩乃歌のGEARって何さ。




・第二会議室。僕と火咲が席に座って待っていると、和佐さんが眞姫、蛍、花京院くん、麗矢、星矢、ギネスを連れてやってきた。

「では、作戦会議と行きましょう。ですがその前に新しい情報が入りました」

「……UMXですか?」

「はい。8号と思しき反応が確認されています。予想襲来時間は85分後。既にセントラル軍は迎撃態勢をとっています。ですが悪いニュースはまだあります。0号が動き始めました」

「0号が……!?」

「はい。どうやら8号の襲来に合わせて動き、それを利用して別の世界へ行こうとしているのではないかと思います。8号がこの世界へ来た次元の穴を用いて転移するのであればまだいいのですが、」

「……場合によっては僕達と8号が戦っているのを利用して漁夫の利をしてくるかもしれないってわけだね。セントラルには確実に次元転送出来る技術があるんだからそっちの方が確実かも知れない。なにせ、僕達は一度0号との約束を反故にしている。卑怯を働かせられても文句は言えないよ」

「……それに8号の反応は今までのUMXのものとも違っていて、6号7号よりも強力になっている可能性が高いです。千代煌はともかく他の皆さんは注意してください」

「やっぱり0号を味方にして終億の霹靂を取りに行かせるってのはなしなんですか?」

質問したのは眞姫だ。

「ええ。表明はしていませんが反対の意は示されています。何より前回の襲撃で多くの人が亡くなりました。全滅した部隊もあります。0号への感情は怨嗟となっていてもおかしくないでしょう」

「……どの道0号と8号を同時に相手にしないといけない状況は変わらないってわけか」

「はい。そして可能であればそのまま歩乃歌さんには終億の霹靂を取りに行ってもらおうと思います」

「……でしょうね。ここで徹底迎撃に努めてもきっとセントラルは無事じゃ済まされない。反対を示している以上、そして別に可能性がまだ残されている以上0号はほぼ確実にここを攻撃すると思う。それは8号も同じ。多分千代煌でも両方を相手にして勝利は出来てもセントラルの防衛までは難しいと思う。次元転送システムの複製が不可能な以上、動かせる内に動かすのがベストだよ」

「……一筋縄では行かないとは覚悟していたけどここまで重なるなんてね」

「けど、やるしかないってんならやるしかねえだろ」

「……」

「誰が相手だろうと破壊するだけだよ」

「……皆さんの言葉を聞いて安心しました。では、最終作戦の会議をいたしましょう」

和佐さんは時計を見た。

「8号の到達まで残り82分。残り15分になったら正式な転移座標が確認出来ます。10分で移動をして、PAMTで迎撃態勢をとってください。ただし、歩乃歌さんは待機です」

「……僕は飽くまでも0号向けってわけですね」

「はい。もちろん牧島さん達だけで装置が破壊されそうになった場合は援護に向かってもらう場合もあるでしょう。ですが原則として牧島さん、花京院くん、最上さんの3人に迎撃をしていただきます」

「ん? 白百合はしないのか?」

「花京院? 白百合さんは次元転送システムがあるでしょうが」

「あ、そうか」

「和佐、あんたは結局最後まで出ないわけ?」

「あなたと違って私にはパラフォがないので。まあ原理は同じなので私のP2でももしかしたらPAMTの使用が可能かもしれませんが元の世界に戻った時にどんな事が起きるか分からないので出来るだけPAMTは手に入れないようにしています」

「まあ、あんたの場合最悪、一人で別の世界に逃げることも出来るだろうしね」

「そんな事はしませんけどね」

ごほん、と咳払いの和佐さん。

「では、作戦開始時刻を今から30分後の1730(ひとななさんまる)と致します。それまで少ないですが休息と調整を行ってください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ