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最大の武器

俺の乗っている生物はワイバーンと呼ばれるドラゴンで今、目の前にいる金髪の美少女が魔王軍直属・黒の竜騎士:マリナ・スティングレイさんらしい。俺はワイバーンの上で事情を説明し、敵でないことを何とか分かってもらった上で、この異世界・サダルトリアのこと、転生人と呼ばれる人間がいることを教えてもらった。


「で、その転生人ってやつが、一人で魔王軍を追い払ったと…」


「ええ。それはもう一瞬の出来事でした。辺り一面に雷鳴が轟き、竜騎士団はたった一度の攻撃で総崩れになったのです」金髪が風に揺れる。地球人と似ているが耳が尖がっていて、目の奥が翡翠色に輝いている。本当に漫画に出てくるエルフのような姿かたちをしていた。


「はえー。で、これからどうやって戦うんですか?」


「魔王様に頼るしか……。でも、あの力では五分五分。いや、もしかしたら」


俺の知っているRPGでは良くも悪くも魔王はラスボスでそれなりに強い存在の筈だ。それを部下が倒せないかもと言うんだから転生人っていうのは半端ではない強さなのだろう。

…あの、そんなやつをどう倒せと?


「大智、そろそろ魔王様の領土に入ります。しっかり掴っててください。魔王城もすぐにつくでしょう」


雲の上を飛んでいて地上の様子は分からなかったが、領土に降りるのだろう、ワイバーンは降下し始めた。


雲の下に降りたとき、そこには火の海が広がっていた。

「そんな…馬鹿な!!!」隣にいたマリナが驚いたように声を荒げた。


目を凝らすと、街のようなものは全て焼かれ、火は山林に燃え移っていた。空には黒煙が上がり、まるで魔王領の地上には地獄絵図のような光景が広がっていた。


ヒュン!!


地上から火の玉が飛んでくる。

マリナさんがワイバーンを操作し、咄嗟に回避したが、周りを同じように飛んでいたドラゴン隊が次々と撃ち落されていく。


「転生人か…!!」


「まじすか!これ全部!?」


「やつの力なら可能です。この火の海も、おそらく奴の大魔法でしょう!」

マリナの操縦捌きにより、なんとか戦線を離脱し、地上に降り立った。マリナは疲れ切り、ワイバーンに背を預け、大きく肩で呼吸をしていた。


ピピッ!!

英美から無理やり持たされたポーチから音が鳴った。

ポーチの中で光るスマホの画面には英美の顔が映っていた。


「おいー、どうなってんだよこれ。俺、死にそうなんですけど」


「ごめん。まさか空中のドラゴンの上に転送されるとは思わなかった。でも情報は全て入ってきてるから安心して」


「はぁー。……で、これからどうすればいいのよ」

「私たち異世界特別管理委員会の目的は転生人の追跡と捕縛。つまり、今その地上で暴れている転生人・岡田康男を拘束すれば任務完了。晴れて地球に戻って来れるわ」


「雷とか炎とか操ってる岡田さん相手にどうしろって言うんですかね」



「大丈夫よ。効かないから」衝撃的な言葉が英美の口から吐かれた。



「……効かないとはなんぞ」


「転生人のチートスキルを無効化する。それはイッカン最大の武器にして、イッカンが生まれた理由。実験に基づいて出した結論よ。自信をもってぶっ潰して」


「ぶっ潰すって、こんな状況じゃ近づくのも困難だぞ?」


「いるじゃない後ろに心強い仲間が」


俺が後ろを振り向くとマリナと目が合った。

「いや、あんまり無関係の人を巻き込むのはあれじゃない?」


「じゃあ転生人のところまで徒歩で行く?こっちの画面で推測するに、岡田康男がいる場所までは徒歩だと二日かかるわよ」


「マリナさーん!相談があります!!」背に腹は代えられない。



「転生人の下まで辿り着ければ俺たちの勝ちみたいです」


「?どういうことです」


「俺と転生人は同じ星の人間らしいです」

その言葉が口から出た瞬間、俺の首筋に槍の矛先が向いた。

「い…いや、ただ同じ星の人間ってだけで、俺は魔王軍につきます。俺には転生人を倒す力があるらしい…です」


「その言葉をどう信じろと?」マリナの翡翠色の瞳が鋭く睨む。


「信じてもらうしかない…」その時、俺の真上に雷が落ちた。


「あぶなっ……!」マリナの言葉が聞こえる前に俺は雷に打たれた。しかし、身体にまったくダメージはない。この雷は岡田康男が放った魔法なのだろうか?


「……無傷!?」


「みたいす」


「……ワイバーンに乗ってください。転生人の傍まで送ります。一か八かですが、あなたが最後の希望です」

最後の希望とは、随分とハードルを上げられたものだ。こっちはやっと状況が呑み込めてきた段階だというのに。


ワイバーンは羽ばたき、ふたたび空へと舞い上がった。


地上は見渡す限り、焼野原が広がっている。

ほとんど隠れる場所がない空中で、火の玉や雷が容赦なく俺たちを襲ってきている。


ここまで無事なのは一重にマリナの技巧によるところだろう。

チッ!!

「イタッ!!」

何かの破片が頬をかすめる。触ると血が出ていた。

「……あれ、ダメージないんじゃないの?」俺はスマホに映っている英美向けて話しかけた。


「ああ、言い忘れてたけど、ダメージを負わないのは転生人からの攻撃のみ。その異世界に元々住んでいる住人からの攻撃は普通にもらうわ。」


「おいおいおいおい、聞いてないんですけど!!じゃあ、普通にドラゴンとかに喰われたら死んじまうじゃんか!?」


「頑張れ」


ここで根性論を出してくるか英美よ。よし決めた、一生心の中で恨もう。


画して岡田康男討伐作戦が始まった。


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