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給与25万円より。出張、異世界へ

2027年・4月12日

東京都・杉並区

プルルルルルルル!!!!

ベッドの横に置いていたスマホに着信が入ったのは何か月ぶりだろうか。

着信先は大学時代の理工学部の友人、桜庭英美だった。


「なんだよ。こんな朝早く……」


「残念ながら、もう午後12時を過ぎてるわ。再就職先は見つかった、遠野君」


「いーえ、失業保険でぐうたら生活してますが何かー」


「そう。なら暇でしょ。うちの研究所来ない?見せたいものがあるんだけど」


「えー。めんどいわ。だって今働いてるの筑波だろ?遠いし」


「いいから来い」


「…はい」英美には数々の弱みを握られている。断れば、容赦なく、俺に不幸が訪れる。


午後15時・茨城県つくば市・近未来研究所


「いらっしゃい。大学のOB会以来だから1年ぶりね」

ピッシリとしたスーツに溢れんばかりの巨乳。ナイスバディだったが、性格の悪さは折り紙つき、というか悪魔。長い黒髪をポニーテールで束ねているのは変わっていない、唯一変わったとすれば、黒縁の眼鏡をコンタクトに変えたことだろうか?


「どーも。そちらは順調なようで」俺は胸元にある副所長という文字を見て、英美に深々と頭を下げた。


「止めてよね。さあ、こっち来て」


研究所のエレベーターに乗る。英美がなにやらパネルにIDカードを通したのが見えた。

エレベーターはどうやら地下に降りているようだった。



「はい。これ、読んどいて」一枚の紙切れが渡された。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

異世界特別管理委員

所属・特別行政法人:未来研究所

業務内容:異世界における転生人の追跡および捕縛 

勤務地:異世界全般

雇用形態:正社員

給与:月額25~28万円

   残業代全額支給/交通費全額支給/その他住宅手当あり

   賞与/昇給あり

休日・休暇:週休二日:繁忙期に至ってはこの限りではない/特別休暇有

福利厚生:未来研究所内ジム・食堂無料 その他/保養所あり

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……」

「読んだ?」


「えっと、馬鹿にしてる?」


「まさか。本気よ」英美がそういった直後、エレベーターの扉が開いた。


「……なんじゃこら」


俺の目の前に現れたのは地下の巨大な研究施設。スーツを着たスタッフが慌ただしくフロアを動いている。そして一際目立つ中央にそびえる大きな透明の筒、あれは一体なんだろうか?


「あれは異世界転送装置:オクルクン」俺の心を読むように英美が言った。誰が名付けたかは一目瞭然。英美のネーミングセンスはずば抜けて異質だ。


「今から遠野くんにはオクルクンを使って異世界に行ってもらいます。そこで転生してチート能力を発現した転生人を追跡・捕縛してきて下さい」


「はい?」


「大丈夫。安全性はマウスを数匹使って実証済みだから」


「おーい、俺はマウスじゃないぞ、人間だ。そもそも転生人ってなんだし」情報がない。こいつは頭がいいが何かずれている。


「いいから行け。教授に進言して大学を卒業させたのは誰だったかしら」耳元で英美が耳打ちする。


「うっ……」


「はい。これ持って」

英美は考える間も与えず、小さなポーチを俺に持たせ透明な筒に押し込んだ。


「待て、俺はイエスなんて言ってないぞ!!


英美が近くの女性スタッフに何かを指示している。そして笑顔で筒の中に閉じ込められた俺に手を振った。


化け物め……。

俺の意識は謎の技術によって一瞬にしてなくなった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――

――――

「あったま、痛い」

なんか背中がゴツゴツしている。目を開けると、景色が驚くほど速い速度で変わっていくのが分かる。


「はい?」

俺の目の前には黒い鎧を着た騎士が立っていた。そしてその人は俺に大きな槍を向けている。一突きされたらお陀仏な代物というのは一目で分かった。


「sdf\e//h」][:@[1:w?」


「はい?」何を言っているのか聞き取れない。


「lcedp\@@\お前はどこから現れた?」途中から言語が日本語になり、聞き取れるようになった。もしかしたら英美たちが何かをやってくれたのかもしれない、ドラ○もん的な。


「えーっと、遠野大智です。25歳独身、失業中です。どうも」

「なんだ、その恰好?まさかお前もあの男の仲間か?」


「あの男?はて、全く知らないんですが、教えてほしいくらいっすよ」

ため息をついて横を見ると、俺は遥か空の上にいることに気づいた。そしてこれは何かの生物の背の上だということも。


「うぉぉおおおおおぅぅぅ!!!!」俺は驚き、背の上でバランスを崩した。


あ、死んだ。と思った俺の手を黒の騎士が咄嗟に掴んだ。黒の騎士の顔を覆っていた仮面の鎧が取れ、長髪の金髪美少女が現れた。


「…あ…あざます」


異世界、訳わかりません。


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