4.お菓子っ!
走って保健室から出たものの教室がわからない!この学校が舞台の乙女ゲームをプレイした事があるとはいえ学校の構図なんてでなかったし、無駄にこの学校広い……。
そしてここはどこだろう。
「迷った。」
あまりに必死にあてもなく走ってたので保健室にも戻れない。え、どうしよう。誰かいないかな。
適当にそこらへんの教室を開けてみる。いないか〜今入学式だからねぇ。いるはずないよね。
「……いい匂い?」
どこからともかく食べ物の、それもお菓子の匂いがする。どこだどこだ。
たどり着いたのは化学準備室。基本授業では使わず、先生の机とかあるとこだよね。
しかし、化学準備室に似合わない甘い匂い……なんだろ。
「失礼します。」
とりあえずノックして入ってみた。するとそこには白衣を着た先生らしき人がお菓子を作っていた。
「え、ちょ、誰だ!!?」
入ってきた私に気づいたらしくお菓子を作っていた手を止め顔を上げる。なんとその先生はイケメンだった。そして、この人も攻略対象のキャラクターではないか!ええ!
高田浩一郎。主人公がいるクラスの担任で、だらしなく着た服やぼさぼさの髪で一見不潔そうだが、そこはイケメン、その見た目がどこか大人の男の色気としてでている。イケメンってなんてお得。
「えっと、お菓子美味しそうですね…?」
「そうだろう?今回は新しく和菓子に……って違う!お前生徒か!今は入学式の最中のはずだ、なぜここにいる?」
「具合が悪くて保健室で休んでたんですけど、元気になったんで入学式に戻ろうかなと。」
「ここは入学式の会場じゃないぞ?」
ですよね。もう少し心配してくれてもいいじゃないか。とは思うがこれは私が悪いのでなんとも言えないね。正直に言おう
「……迷いました。」
「あーこの学校広いしな。お前1年か。名前は?」
「橋田千夏です。」
「橋田……橋田…ああ、お前俺のクラスの生徒だわ。」
まじか。と言うことは主人公と同じクラス……うーん、いいのか悪いのか。
「仕方ない。少し早いが教室に行くか。めんどくせぇ。少し待ったら体育館の入学式が終わって全員教室に来るはずだ。」
「いいんですか!ありがとうございます。」
案内してくれるということですかね。それはすごく助かる!ごめんなさい、見た目的にめんどくさがりそうだと思って!
「ただし条件がある!」
「はぁ」
「その、……見ただろ?」
「何をですか?」
先生はちらっと後ろの、作りかけのお菓子に目線をやる。ああ、なるほど。
「お菓子作ってたことを黙ってて欲しいんですか?」
そういえば乙女ゲームでは甘い物好きでお菓子作り好きな事を見た目に似合わないからというだけで隠している設定だったな。
「よくわかったな。」
「別に誰にもいいませんよ。その代わりそのお菓子食べさせてください!」
いい忘れていたが、実は私もお菓子大好き。この先生の作るお菓子はプロ並みに美味しい……らしい。乙女ゲームで言ってた!主人公と美味しそうに先生が作ったのを食べているシーンがあって、その時お腹の空いていた私には衝撃の飯テロだった。……ともかく、先生の作ったお菓子を食べてみたいというのは前世からの願いなのだ。
「別にいいが、自己満足で作っているものだからお前の口に合うかわからないぞ。」
「いいんです!ぜひ!」
先生はなんかとても驚いているが、そんな先生の背中を押してお菓子のところへと行く。
うわー美味しそう!これは、きなこ餅?
「ほら」
「ありがとうございます!」
もらった爪楊枝できなこ餅をさして口へ運ぶ。んんーうまっ!これはまた期待どおり、いやそれ以上!!!
「もう一個!いいですか?」
先生が頷くのを確認してもう一つ口に入れる。おっいし!もちもち!これはやみつきになりそう〜
「そんなに美味しそうに食べてもらえると、餅から作った甲斐がある。」
「え、餅から作ったんですか?ここで?」
学校で何してんだ。けど美味しい!
さらに先生が爪楊枝に刺した餅を私にくれるので遠慮なく頂く。むふふ幸せ。
もぐもぐしている私を見て先生がふっと笑う。くっ!イケメンの笑顔はいらないっお腹いっぱいです。てか、今ちょっと馬鹿にしただろ。
「そろそろ行くぞ。遅れる。」
「はい。あ、ご馳走様てした。」
「口元拭いとけよ。」
自分の口元をとんとんと叩いていう。その仕草に妙に色気があってくらりと来てしまう。まぁ実際来てないけどね!
あ、先生は白衣についてるきな粉落とさなくていいのかな。まあいいか、言わなくても気づくでしょう。
ふぅ、食べ物を食べたことで少し落ち着いた。私って単純なのかと思わなくもない。しかし美味しかったなーきな粉餅。
きな粉餅美味しいですよね。ちなみに私の1番好きな餅は醤油のやつです(b*‘ω‘ *)b