3.保健室で
「大丈夫?」
「え」
「さっき目が覚めてからかなり具合悪そうじゃない。今だって顔が真っ青よ。」
私の傍に立って心配そうにのぞき込んでくるのは美少女。ふわふわで長い栗色の髪の毛で顔はフランス人形?のようだ。
そういえば目が覚めてから、いろいろと思い出してそれどころじゃなかったから気にしてなかったけど、ここどこ?
「……ここは?」
「ここは学校の保健室よ。あなたうちの生徒でしょ?」
私は白いベットに横たわっていた。周りには薬品の棚や、もう一つベットがある。なるほど、保健室か納得。
「えっと、あなたがここまで運んでくれたんですか?」
「か弱い女の子の私に運べるはずないじゃない。ちょうど保健室にいたら男子生徒があなたを運んできたのよ。」
その男子生徒なんて優しいんだ。重かっただろうに……。
「……あれ?あなたは私の目が覚めるまでずっと私についていてくれたんですか?」
私が倒れてからだいぶ時間がたっているような気がする。その男子生徒が運んできてくれてからどれくらいたってるのかは知らないけども。
「そうよ。あまりにもうなされているようだったから気になっただけ。あなた名前は?」
「橋田千夏です。」
「そう。じゃあ、私からあなたが保健室で休んでいること先生に伝えとくからあなたはもう少し休んでなさい。それと、私もあなたと同じ1年だから敬語やめてよね。」
この子、終始不機嫌な顔で喋ってるけど案外いい子っぽいなー口調きついけど。てか、なんで1年ってわかったんだろ。
「あの、ありがとう。あなたの名前は?」
「私は篠宮春乃。じゃ、お大事に。」
名前だけ告げると篠宮さんはさっさと保健室から出ていった。
篠宮春乃かーぽいなー。けど、この名前どっかで……
「……ああ!あの子キャラクターだ!!」
篠宮春乃とは、ある攻略キャラの妹でゲームでは兄のルートの時に主人公を邪魔するキャラだ。
なるほど、どうりで美人な訳だ。
しかし、こうなるとよりここが乙女ゲームの世界だと実感が湧くなぁ。
そういえば、私が記憶を思い出したのはたぶんあの場面を見たからだろう。
主人公と攻略キャラが出会う場面。ゲームはそこから始まっていたしね。でも、なんで思い出したのかわからん。
栞や、栞のお兄さん、そして前世の自分の事を思うと思い出したくなかった。あの二人には生きていて欲しいな……。
今こんなことを言ってても仕方ない!とりあえず思い出したことをまとめよう。
私が思い出したのは
・前世の記憶。
・ここが乙女ゲームの世界であること。
・乙女ゲームの内容。
この3つかな。
前世の記憶と言っても全部ばっちりと覚えているわけじゃなくて、私が乙女ゲームを始めてそれから死ぬまでの記憶しかない。
それと、乙女ゲームの内容もこれまたばっちりと覚えていない。栞ほど熱中してプレイしていたわけではないので覚えている内容は曖昧だ。
主要なキャラとかは覚えているんだけどねぇ。1番推してるキャラがいたわけでもないし……あれ?そういえば私が転生したこの橋田千夏というキャラ、死ぬルートあるんじゃなかったっけ?
い、いやぁぁぁあまた死ぬのは勘弁っ!え、誰のルートだっけ。そうだ、栞が教えてくれないんだった。くそっ!!!回避もできない!
……待てよ。前世の私はたしか全キャラ一通りクリアして、その中では橋田千夏が死ぬルートはなかった。ということは、他にも実は隠しキャラみたいなのがいてそのキャラのルートで橋田千夏死ぬとかじゃないかな!?
よし、なら話は早い。主人公を隠しキャラ以外の攻略キャラ、誰でもいいからくっつけよう!そうすれば、私はきっと安全だ。
その時、学校のチャイムの音が鳴る。
「ん?今何時……10時!?やばい、そういえば今日は入学式だ!!!」
勢い良くベットから飛び起きると、チャリンと何かが床に落ちた。それを拾い上げる。
「何これ、ブレスレット?」
私が拾ったのはシルバーの星のチャームが7つ着いた、可愛いブレスレットだった。
篠宮さんの落し物かな?また会えたら聞いてみよう。
とりあえず、今は急がないと!!!
私は寝転んでたせいでぐしゃぐしゃになった制服を整えて、ベットを綺麗にし、保健室を走って後にした。
次からやっと、ちゃんと攻略キャラ達がでてくる…かも。
読んでくださってありがとうございますm(_ _)m