壊れたブラウン管
ジジジ…と小さな音を立ててブラウン管は黒を映し出した。
バンバンと上から何度も叩くが、目の前のテレビは変わらない。
「あちゃー。ついに寿命かなぁ。まぁ年季入ってたもんなー。」
福島 紫乃は歯に加えた歯ブラシを口の中で動かしながら、目の前のテレビの処理について考えていた。
もしかしたらまだ修理すれば使えるかもしれない。
しかし母が先月欲しがっていた液晶テレビに買い換える良い機会なのかもしれない。
「うーーん…………………ま、いっか。」
しばらく考えた後、テレビを買い換えることにした。
父に言えば、明日中にはこのテレビとはさよならだろう。
そして明後日には液晶テレビが我が家にも舞い降りてくるはず。
長い間お世話になったよ…と、心の中でお礼を言う。
まぁコメディ番組見る時ぐらいにしか使ってなかったんだけどね。
ふと、時計を見ると針は8時をさしていた。
「やっばっっ!」
紫乃は洗面所に駆け付き、口の中から歯ブラシと唾を吐き出し、急いでうがいをする。
猛スピードで支度をして、ローファーに足を引っ掛けた。
坂道を走りながら、真っ青な空を見上げた。
今日は快晴だ。
そしておそらく自分は遅刻だ。
そんな紫乃の頭の中ではあることを思い出していた。
(朝ごはん食べ忘れたーーー!!)
腹のなく音と共に学校のチャイムが聞こえた気がした。