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第3話 案内人はあの野良猫さん?



 私が昔の事を思い出していると「なつかしいなぁ」と夕焼けに染まる街をみて、兄が呟いた。


 兄も私と同じ事を思い出したのだろう。



「この景色、あの時を思い出すな」

「そうだね、あの時もこんな景色だったね」

「あん時はマジで焦ったかんなぁ……」

「うん、あの時は本当にごめんね。でもよく私の居場所がわかったね」



 今でも不思議に思う。何故あの場所に私が居る思ったのか、あの時の兄は「おれにふかのうはないからな」って言っていたっけ。


 その時の私は疑う事無く、兄なら出来ると納得したんだよね。


「あぁ、あの時はさぁ。面白い奴が居てな、そいつがついて来いって言ってる気がしてさぁ。ついて行ったら、お前が居たんだよねぇ」

「面白い奴?」


 兄の面白い奴って言葉に不思議に思い、兄に聞いてみると「こんな奴だったな」と言い、いつの間にか私の足元にいた黒猫を抱き上げた。



「もしかして……、猫さんの後をついて来たっての?」

「いえ~す、ざっつらいと」



 正解みたいで、抱えた猫さんの両手を挙げて、バンザイの様にした。


 にゃんこさんかわいいなぁ~。らぶりぃすぎだよ~。


いやいや、まさか猫さんが私を助けてくれたなんて……。



「にゃぁ~」



あぁ~、にくきゅうぷにぷにしたいなぁ~。


ぶんぶんぶん!ちがうちがうちがう!落ち着け私、兎に角落ち着くんだ。こういう時は円周率を……、3. 1415926535―――……。そういえば円の計算で使う円周率が3.14だったのが一時期3になったんだよね~。今はまた3.14になったらしいけど……。



「あん時の猫もこんな猫だったよなぁ」

「だって、その時のにゃんこさんだもんね~」

「マジ……」



 私の言葉が通じたのか、「にゃ~」と返事を返してくれた。


 うん、賢い猫さんだね。ご褒美にマタタビをあげようかな?確か鞄の中に入っていたはずなんだよね。お、あったあった。は~い、マタタビだよ~。



「何でマタタビを持ってるんだよお前は……」

「にゃんこ大好きな私は常に持ってるよ~」



 そっかぁ、君があの時助けてくれたんだね。マタタビに夢中な猫の頭を感謝の気持ちを込めて撫でる。



「お前わかるの?あの時の猫だって」

「当たり前じゃん。この艶のある黒い毛並み、凛々しい瞳はもうあの時の野良猫さんだよ」



 あの時もこの毛並みのおかげで泣かなくて済んだんだよね。君は私の恩人だよ。本当にありがとね。


 兄は未だに納得できていないのか、「そんな緩んだ顔で力説されてもなぁ」と言いながら首を傾げて、私と同じように猫さんの頭を撫でた。


 猫も気持ちよさそうに「にゃ~」と鳴く。って、私が撫でるより兄の方が気持ちいいの!?私は駄目だったの!?


 私の心の声が聞こえたかのように、「にゃん」っと一声。



「緩んだ顔をしてたと思ったら、今度は何泣きそうな顔してんだよ」

「だってぇ~……」



 私の表情の変化に気づいた兄は、溜息を付きながらも猫を撫でている反対の手で私の頭を撫でる。


 だんだんと私の機嫌が良くなる私に、「今度はうれしそうにしやがって、忙しい奴だな」と呆れ、野良猫もまったくだと言うように「にゃ~ん」と鳴いた。






◇ ◇ ◇






「さて、そろそろ帰るか」


 兄の言葉でこの展望台に来てから結構な時間がたった事に気づいた。展望台の街路灯も所々で灯りが付き始め、少し暗くなった展望台を明るくしている。



「このにゃんこさん、お持ち帰りしたいなぁ」

「親父が怒るぞ、猫アレルギーと猫嫌いなんだからな」



 悲しい事に家の両親は両方とも動物アレルギーで、父親が猫アレルギー。母親が犬アレルギーなのだ。ちなみに母親も犬が嫌いだ。


 私達の両親は家がご近所さんだったらしく、要は幼馴染らしい。馴れ合いもこのアレルギーから始まったと言う、よくわからない過去を持っていたりもする。


 なんでも、母が幼い頃に犬アレルギーとわかった理由と父が幼い頃に猫アレルギーとわかった理由がほぼ同じで、そこから似た者どうしって事になり、お互いに好きになり始めて結婚までいったらしい。


 そう考えると、交際歴がすごい事になりそう。軽く10年は超えているのかな?


 同じ理由ってのは、母は犬に噛まれてそこでアレルギーと判明し、父も猫にひっかかれてアレルギーと判明したという事で、二人は仲良くなったみたいだ。


 今でも娘の私ですら、「それってどうなの?」と疑問に思うが、母が「これは運命なのよ。生まれた時から決まっていたことなの!運命(でぃすてぃにー)なのよ」と発音が微妙な単語を入れつつも力説していた。父も同じように「俺達は前世から一緒だったからな」と意味不明な事を言っていた。


 まぁ、両親の恋バナはどうでもいいとして。家は両親が動物アレルギーの為にペットは飼えなかった。だからか、私は野良猫を見ると追いかけて一緒に遊び、たまに迷子になるという同じ行動をしていたのかもしれない。


 私は「またね、それとあの時は本当にありがとう」と言い、最後に野良猫の頭を一撫でしてから立ち上る。



《 約束の時が来た 》



 その時、何処からか声が聞こえた。



《 古の契約の元 》



 その声に反応するかの様に、私の足元に居る野良猫の足元に不思議な模様が浮き上がる。



「お兄ちゃん……」

「何だよ、コレ……」



 私はあまりの出来事に兄の袖を掴んでしまう。



《 導かん 》



 その言葉を最後に足元の猫が「にゃん」と鳴く


 それを合図に、いつの間にか居た6匹の野良猫が、私と兄を囲むように佇む。


 その猫達の足元にもそれぞれの猫が鳴くと、同じように不思議な模様が浮かびあがり、次第に私達と足元の野良猫を中心とし、また6匹の猫をも中に入る大きな模様が完成した。



「何か、危ない気がするのは俺だけか……」

「夢だよね、これは夢。これは夢」



 突然の事態により、私の頭は混乱するしかない。あまりの出来事で兄の頬を抓る。ちゃんと捻りを加えて、これでもかってぐらい抓る。



「痛い!捻るな!」



うん、痛いらしい。という事はこれは夢じゃない。現実なんだ。「確認するなら自分を抓れよ……」って言うけど、だって痛いじゃん。私のぷりてぃで、きゅ~とな、このもちもちホッペが腫れたらどうするのさ。そしたら責任とって私と結婚して!いや、して下さい!お兄さま!!


 意外にもいつも通りの思考が頭の中にあるって事は、意外に落ち着いているらしい。


 だけど、そんな私の現実逃避を無視して、最後に足元の猫が鳴き、周りの6匹の猫が返事をするみたいに鳴くと同時に足元の大きな模様は一際輝きを増し、私の意識はそこで途絶えた。


 最後に私が聞こえた声は、渋くおじ様的な声で



《 汝に我が魔王の力を与えよう 》


《 (よこしま)な心を持つ汝なら使いこなせよう 》



 と楽しそうな声が頭の中で聞こえた。


 って、邪な心って何!?私はピュアだよ!!純粋な心を持ったブラコンだよ!!


 否定の言葉が聞こえたのか、最後に盛大な笑い声が聞こえて、私の意識は完全に途絶えた。


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