第2話 思い出の場所
最初の掲載から時間がかかりすぎてすみません。私用で執筆の時間が取れなかった(TT)
大好きなお兄ちゃんと恋人っぽくお互いのクレープを食べ、お互い微妙な味から何とか立ち直り、口直しとして自分達のクレープ食べていく。
もう口直しとして食べても、最初の美味しさが無いんだよね。あの一口目の幸せの味が。
「うぅ~、折角のクレープがぁ……」
「流石はおっちゃんの新作……。こればっかりは、予想外だ。最初の味が懐かしいくてしょうがない……」
兄も同じみたいでクレープを食べるスピードが若干遅くなっている。
私のクレープがもう激甘のクレープになっているから、兄のクレープはもう梅干しを食べている感じのはず。クレープの形をした梅干し……、嫌だ、もう嫌がらせのレベルだよ。おじさん、まだ自分が独り身だからって、これは恋人達への嫌がらせでしかないよ。お互いの食べ物の食べさせっこが出来ないって悲しすぎるよ。
「もう名前通りの味しかしねぇよ。もうクレープの形をした梅干しだぞコレ」
確かおじさんが言ってた新商品の名前は『うめぼすぃーつ(ほし)』。おじさん、もうスイーツじゃなく、梅干しみたいだよ。もう甘くなく、酸っぱいだけらしいよ。
兄は何とか最後の一口まで食べていき、「何かご飯がすごく恋しいんだが……」って食べ終わった後の感想がそれなの?
まぁ、梅干しだから解らなくもないけど。お兄ちゃん、それデザートだからね。一様だけど。
「口直しに私のクレープ食べる?」
「いや、食べたいけど……、俺にとってそれはもう砂糖の塊でしかないからいらない」
「まぁ、どんまいだよ」
まぁ、私も何回かおじさんの『おまかせ』に悲しい思いをしたんだよね。でもうまくしたら美味しいのが300円で食べられるから、つい頼んじゃうんだよね。
私が食べた『おまかせ』で一番美味しかったのは、『ミルフィーユ風クレープ』が美味しかった。
クレープ生地を4枚使い、それぞれの間に、生クリーム・チョコクリーム・カスタードクリームを挟み、トッピングとして好きなアイスを一緒に巻いて完成。
ミルフィーユ風とかじゃなくて、普通にミルフィーユの一歩手前なんだけどね。後もう何枚もクレープ生地重ねたら、もうミルフィーユだからね。っていうか、普通にミルフィーユで食べたかったのは私だけじゃないはずだ。
ちなみにこのクレープは人気はあったが、クレープ生地を4枚使う為、あまりも注文数が多いとクレープ生地がすぐに無くなり、冷めた生地でないと使えない為にお蔵入りとなった。
◇ ◇ ◇
「兄さん、この服どう思うかな?」
「良いとは思うぞ」
私達は今、ショッピングモールに来ていた。
所々に私達と同じ制服姿学生が見える。午前中で入学式が終わるので、入学式に参加した在校生の2・3年生と新入生は午後からは自由だ。在校生は部活をするのも良し、また帰宅するのも良しで、新入生は帰宅する他に部活見学や学校施設の見学などをする生徒や、折角の午後からの自由なので近くのショッピングモールへと遊びに行ったりと人それぞれだった。
ちなみに私と兄は、ショッピングモールへと買い物と言う名のデートへ来ていた。
大好きな人との買い物=デートと言わずして何と言うか!
そして今現在は、私の服を探しに来ている。
「さっきから同じ言葉だよ、何か違う言葉が欲しいのでが、お兄さまどうでしょうか?」
「ってか、どんだけ試着するんだよ……」
「どんだけって、まだ5着しか試着しか試着してないよ?」
そう、まだ5着しか試着してないのだ。それなのに兄の方はもう飽きているみたいだ。確か3着目辺りから「良いとは思うぞ」しか返してくれてないから、多分飽きたのだろう。そんなんじゃ彼女との買い物も満足にできないぞ!と私は思ったりする。
「他に言う言葉は無いの?」
「無いな」
「もし彼女がいたらどうするのさ、同じ言葉ばっかじゃ彼女も機嫌が悪くなるよ?今は兄さんはフリーだからいいけどさぁ。彼女が出来た時に色々な褒め言葉があった方が良いと私は思うのですがどうでしょうか?」
「どうでしょうかって聞かれても、その時じゃないと判らねぇしなぁ。それに今、違う言葉が出ても妹のお前に言ってもなぁ」
今の言葉、なんかすごくムカついたよ。ってあれ?私今、兄に彼女が出来た時の事を話してた?いやいや、兄に彼女が出来ちゃまずいんだって!私以外の女性は駄目なんだって!例えばもし兄に彼女が出来て、今みたいな感じになって、兄が色々な感想を言ってきたら進展しちゃうじゃないのよ。なら兄は今のままで良いのかもしれない。
「そうだよね。兄さんに彼女なんか出来る訳がないよね~。年齢=彼女いない歴だもんね~」
「お前だってそうじゃないか、浮いた話の一つや二つ無いのかよ?まぁ、お前じゃ相手が可哀想か」
うん、完全にムカついたよ。よし、今日は勘弁してあげようと思ったけど……、今の一言は駄目だよ。
兄さんに選んで貰おう。洋服と一緒に下着も選んで貰おう。うん、そうしよう。
「それじゃ、次に行きましょうか。お兄さま」
「行くって何処にだよ」
兄が逃げないようにしっかりと腕を絡ませる。「って、骨があたっていたいから」……って、お兄さまそれはどういう意味ですか?胸の感触より、骨の硬さですか。胸じゃなくて骨ですか、あぁそうですか。
「れっつごー」
「痛い!ひ、肘極まってるから!!ちょっ、だから関節決まってるって!!」
「あははー」
絶対に選ばせてみせます!
◇ ◇ ◇
「ったく、ひどい目にあった……」
「えっとぉ、ごめんね兄さん」
あの後、冗談抜きで兄を下着売り場まで強制連行して選んでくれたのはいいんだけど……、周りの視線がちょっとね。
下着を手に持っている兄を見るお客さんの軽蔑の視線、女性店員さんのあの時の目はすごく怖かったです。
もしあの視線で、兄が違う方向に目覚めたらどうしよう。新たな扉を開けてしまったら……。私も開けるしかないの?
いや、大好きなお兄ちゃんが望むのなら開けよう。私はどんな扉でもお兄ちゃんが望むなら迷わず開けよう。
でも、できれば普通が良いかな……。って思っちゃう私は悪くないはずだよね。
「お前も好きだよな~、この場所が」
「まぁ、思い出の場所だからね~」
気付けばもう夕方。
最後は家の近くにある展望台へと来ていた。
ここは私のお気に入りで、初めて兄を好きになった場所。
きっかけは私の迷子。
野良猫を追いかけて、気が付いたらこの展望台へと来ていた。あの頃の私の行動範囲は自分の家が見える所までだったから凄く狭かった。
そんな私が大好きな猫を追いかけて自分の行動範囲を超えてしまったのだ。見ず知らずの土地で、小学1年生の私は怖くて泣いてしまったのを覚えている。
それから泣き疲れて寝てしまい、気づくと真上にお日様はもう沈みかかっていて、夕焼けが街を染めた景色に私は心を奪われていた。
「にゃ~…」と足元から聞こえる声に気が付き、足元を見ると私が追いかけていた野良猫がいつの間にかやって来ていた。
「猫さん……」
私はその野良猫を抱き締め、自分以外の体温を感じまた泣きそうになった。その時に兄はやって来たのだ。買ったばかりの新しい靴を泥だらけにし、まだ春先の寒い時期なのに着ている服の色が濃くなるまで汗をかいた姿で。
「やっと見つけた!この馬鹿!どこ行ってたんだよ!!」と私の頬を叩き、「心配したんだからな……」って、私を優しく抱きしめてくれた。
私はまた泣いた。安心したのもあり、一番は兄がこんなにも私を探してくれたのがうれしくて。
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