表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の木の棒 前編  作者: 木の棒
最終章 そして伝説へ
52/52

最高話 空白が木になります

 私はいま、普段騎士様達が訓練に使っている「水の間」に来ています。


 先日、ティア様から新たな神託が下ったことを聞きました。

 それは、私の身体が弱くて心配なので、辛いだろうけど少し身体を鍛えるという内容だったそうです。


 その神託を聞いた時、私はドキッとしました。

 自分の身体が弱いことを気にしていたからです。

 聖樹様とご一緒に聖樹草茶作りをするだけで、私は筋肉痛になっていました。


 身体を鍛えないといけない。

 聖樹様のためにも、私は神託のお言葉を胸に刻みました。


 私は騎士様達の訓練のように、訓練所を走ったり、筋肉トレーニングをすると思っていました。

 でもティア様が提案して下さった訓練は違いました。


 その訓練は…「水泳」という名の訓練でした。


 泳ぐことが出来る人は極1部の人達だけ…というのは平民の中では今でもそうですが、騎士様達の中では、これはもう古い常識です。

 騎士様達は全員泳ぐことが出来ます。

 魔術師様達も8割以上の方が泳ぐことが出来るとか。


 川に落ちても大きな川でない限り、そもそも人が溺れるなんてことはありません。

 そのため、泳ぐということは大きな川付近での戦いを念頭に置いた、特殊部隊の人達だけが取得すれば良い技能だったのです。


 その常識を変えたのがティア様でした。


 ティア様は実戦で泳ぐ機会が無いとしても、身体を鍛えるために泳ぐことは最高の訓練である…という新しい理論を唱えました。

 その理論を最初はみんな疑っていたそうです。

 でも、次々に新しい発明をされるティア様の理論です…試してみる価値はあると判断され、この「水の間」が作られました。


 騎士様達はティア様から「水泳」を教わり、それを訓練の一環として取り入れたのです。


 すると…水泳で訓練していた騎士様達の身体にバランスの取れた見事な筋肉がついていったそうです。

 その効果を認識した騎士様達は、我先に水泳による訓練をしたとか。


 「水の間」はいくつも作られました。

 水泳の訓練を希望する人が増えたためです。


 いま私が来ている「水の間」は…なんと私のためにティア様が新たに作って下さった水の間です。

 しかも…私のためだけに5種類もの水の間をご用意して下さったのです。


 私はティア様になんとお礼を言ったらいいのか分かりませんでした

そして、このご恩にどうやって報いたらいいのか。


 このご恩に報いる方法は1つ…私は水泳を習い、己の身体を鍛えることです!


 ティア様がご用意して下さった水の間は、様々な訓練が出来るようになっていました。




 1つ目…ただ水が溜められて幅4m、長さが10mほど直線状の水の間


 2つ目…幅は2m、長さが50mほどの円状であり、水が一方方向に流れている水の間


 3つ目…10mの高さから、特殊の素材で出来た筒のような入口があり、クネクネと円を描くように下に落ちていく水の間


 4つ目…温かい温水で身体を休め癒す、ジャグジーと言われる水の間


 5つ目…世界に1つしかない特別な水の間



 私に水泳を教えて下さるのは、なんとティア様なのです。

 女王様から直接水泳を教えて頂けるなんて…ティア様の深い愛情と慈しみに、私はただただ尊敬と感謝の念を抱くばかりです。



 水泳の訓練をする際には「水着」と言われる、これもティア様が発明された特別な訓練服を着ます。

 水着にはいくつかの種類があるのですが、女性騎士が通常訓練で着るのは「競泳水着」と言われる水着です。


 私も競泳水着を着ると思っていたのですが…ティア様が私のために、特別な水着を用意して下さりました。




 スクール水着




 それは失われた神聖語で、天使が水遊びをする際に着ていた服を意味するそうなのですが、ティア様も解読段階の言葉なので、あまり気にしないでと仰っていました。



 ティア様は「ハイレグ水着」という水着を着ていらっしゃいました。

 その姿こそ、まさに天使でした。



 私はティア様と2人きりでの水泳訓練と思って緊張していました。


 そんな私の緊張を和らげるために…なんとマリア様も一緒に訓練してくれることになりました。



 マリア様は「マイクロビキニ」という水着でした。

 その姿は、女神そのものでした。



 そして訓練を始めようとした時…聖樹様がこの水の間に置かれていることに気付きました。

 どうして聖樹様が?


 ティア様は信じられないことを仰いました。

 なんと…聖樹様を「浮き輪」の代わりに使うと仰ったのです。


 私は目が点になりました。

 神聖なる聖樹様を…浮き輪代わり?


 ティア様は優しく教えて下さいました。


 「聖樹様は本当にニニのことを大切に思っていて下さっているの。魔力でニニを空飛ぶ能力の応用で浮かせることが出来る。ニニを守りたいからそうしてくれと神託を下さったわ」



 私の目からは涙が零れ落ちていました。


 聖樹様が私のことを…気に入って下さってるとは思っていました。

 あのおじさんから聖樹様を譲ってもらってから、ずっと聖樹様は私のためにお力を貸して下さったのですから。


 私はマリア様から聖樹様を受け取ると、ティア様に強い意志と…声で、



 「よろしくお願いします!」



 私の訓練が始まりました。

 マリア様も一緒です…辛くても…きっと乗り越えてみせます。








 いま、私達は4つ目の水の間ジャグジーで休憩しています。

 訓練はどれも大変でしたけど、楽しくもありました。



 1つ目の水の間で水泳の基本を教わりました。

 聖樹様を持ったまま、手を前に出すと、聖樹様の魔力で浮力を得て浮かんだ私は、一生懸命脚を動かしました。



 2つ目の水の間では、流れに身を任せ…逆らわずに水と1つになることを学びました。

 聖樹様をマリア様と共に握り、その浮力と水の流れに身を任せました。

 慣れない私達は最初、聖樹様にしがみついてしまいました。

 幅もそれほど広くないので、2人で聖樹様に抱きつくようにマリア様と密着しました。



 3つ目の水の間は…楽しかったです。

 訓練なのに、こんなに楽しくて良かったのでしょうか?

 ティア様から聖樹様を抱きしめるように…股の間で挟んで胸で抱きしめるような体勢で滑り落ちてくるようにとの指示でした。



 そして今、私達は4つ目の水の間、ジャグジーで休憩しています。


 この後待っている、世界で1つしかない特別な水の間。


 その訓練に耐えられるように身を休めているのです。



 「ニニ大丈夫か?無理せず、十分に休んでからにしよう」



 ティア様が私の身体を気遣って下さいます。


 でも私はやる気に満ちていました。

 こんなに楽しい訓練なら毎日だって出来ます!


 私は大丈夫ですとティア様に伝え…3人で5つ目の水の間に向かいました。




 そこは、私が想像することが出来ない水の間でした。


 いえ…水なのでしょうか?


 それは透明で…ヌルヌルしています。


 香りは…なんだか良い香りがしてきます。


 身体に纏わりついてくる感じもしますけど、水は軽く動くことは出来ます。


 ティア様は、この水は特殊な魔法によって出来ていて、一定の負荷を身体にかけて鍛えることを目的にしているそうです。


 負荷…と言えるほどの負荷は感じませんが…。


 聞くと、初めての訓練なので負荷は軽くしているとか…なるほどです。


 ティア様が聖樹様を、この特殊な水の中央に置きます。


 そして、それを私とマリア様で、どちらが早く取りに行けるか競争するそうです。


 聖樹様を取ったら、しっかりと抱きしめてティア様のところまで持っていく。


 聖樹様を取れなかった方は…相手から聖樹様を奪っても良い。



 私は、ティア様は本当に天才だと思いました。


 このヌルヌルとして滑る特殊な水は、滑って聖樹様を相手に取られないようにするためのものだったのです。



 ティア様が聖樹様を中央に置きます。


 そして…合図と共に、私とマリア様は走るように泳いでいきます。



 私は聖樹様を取れたら、絶対に滑って落とさないように…強く…強く握りしめようと思いました。









 おしまい♡


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 再度棒を手にしたのはゴブルンジュニアだったりするのかな?
2020/08/05 10:07 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ