作戦開始
◇少年が銃弾を2発放つと同時に俺と少女が気絶したフリをする。
部屋の外から足音が聞こえてきた。
これで出口の位置は把握した。
あとは、
鍵が開く音。
その後に扉がきしむ音と足音が2つ続く。
何か重いものを引きずる音がして、それを下ろした。
一瞬動きが止まった。
その隙を見逃すつもりはない。
傍らにあった銃をとり、迷いのない動作で引き金を引いた。
「悪いな、母さん。」
彼女は驚いた様に目を見開き、脱力してゆく体に逆らえずに床にひれ伏す。
向こう側では少年が似たようなことをしている。
あっちでは若い男性を撃ったようだ。
「あんた・・・・よりにもよって政府にたてつくのね。」
どうなっても知らないわよ
とでも言いたげに此方を見据える。
それから懐に手を伸ばして、そして
「残念ね、私達が本部に連絡をする術も持たないと?」
彼女の手には携帯電話が握られていた。
俺は感情を抑えきれず口元が歪んでいくのを感じる。
「残念なのはどっちだろうな。」
「!!!?」
彼女は何をいっているのか分からずに俺の顔を見ようとして体を捩る。
しかし痺れた体がそれを阻んでいる。
俺は無言で彼女の手から携帯電話をもぎ取った。
◇携帯電話から逆探知して本部を探り当てる。
さて、
俺は引ったくった携帯電話を開き電話帳を確認する。
「・・・・・何をしていらっしゃるんですか?」
少年が声の音程を下げて聞いてきた。
しかし彼を一瞥しただけで直ぐに作業に戻る。
液晶画面を見ると登録してある番号は1つだけだった。
迷わず通話ボタンをおす。
暫くの呼び出し音。
その後、何かが切れるような音がして低い声が聞こえてくる。
『なんだ』
「本部に案内しろ。」
『なんだ唐突に命令口調過ぎて怖いんだが。
おじさん最近の若い子にはついていけない。』
「茶番に付き合うつもりはない。黙れ耳障りだ。
本部に案内しろ。」
一瞬沈黙がおち、その後オジサンがため息と共に頭を掻いている音がした。
禿げるぞ。
『しょうがねぇな。
お前の母ちゃんの色気に免じて従ってやるよ。』
「キモい。」
半ば無理矢理に本部の場所を聞き出すと間髪入れずに通話を終了する。
本当なら今すぐ携帯電話事態を真っ二つにしたい所だが勿論そんな勿体無いことをするつもりはない。
何とか我慢する。
「・・・・・そこまで考えているとは思いませんでした。」
「それは流石にバカにし過ぎだと思うぞ。」
「あまりにバカっぽかったものですから。」
眼鏡の畜生が毒を吐いてきて、俺はため息を吐いて流す。
「じゃあ聞くが、お前はどうやって携帯から本部の情報を逆探知するつもりだったんだ?」
「?・・・・・ここは施設ですよ?パソコンくらい置いてあるでしょう。」
やっぱりか・・・突然他の奴等にまで解毒剤を与え始めるから可笑しいと思ったんだ。
「なら聞くが、そのどこにあるとも知れないパソコンを探すためだけに何人犠牲にするつもりだったんだ?」
少年は真顔になって何も答えない。
恐らくは自分と俺さえ残っていれば良いとでも思っていたのだろう。
「道は確かなんですね?」
「行ってみれば分かるだろう?」
少年は大きく溜め息を吐いた。
◇本部を直接叩きます。
本部の場所を確認すると、俺は眼鏡を外し少女に渡した。
「邪魔だから持っててくれ。」
はい。
と言って受けとる少女に追加で告げた。
「ちょっと行ってくるから、待ってろ。」
「え?」
少女は不満そうな顔をする。
不満なのはこっちだと言いたい。堪えるけど。
「残念ながらこの中に医療の知識を持ち合わせてるのはお前だけなんだ。
母さんとその他17歳の野郎共を見てやってくれよ。」
「・・・・・・・分かりました。」
少女を何とか言いくるめて少年に向き直る。
「ちゃっちゃと終わらせるぞ。」
「了解。」
そして俺たちは先程2人が入ってきた扉へと歩を進めた。