被害妄想野郎
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「銃が本物じゃない!?」
少年の作戦を聞くと彼は驚きの事実を発表してきた。
「はい。正確には本物ですが・・・中身が弾丸ではないんです。」
「はぁ!!?じゃあなんだ、俺は玩具ごときの力で体が動かんくなってるって言うのか?」
笑顔ではい。と頷く彼に悪意を感じる。
俺は何だ?思い込みの激しい被害妄想野郎か?
表情に苦悩を滲ませている俺が見るに耐えなかったのか横にいた少女が結構な助け船をだしてくれた。
後光がさして見える
「銃に籠められていたのは本当に弾丸じゃなかったんですか?
だとしたらこの血やそこら中に転がっている死体は一体何なんでしょうか?」
その質問には彼はこう説明した。
カプセルの薬と同じだと。
銃弾の型のカプセルに血糊と薬を入れておく、
発砲したことによる衝撃でカプセルが壊れて血糊とともに薬が拡散する。
そしてその薬は、弾との摩擦で出来た傷口から染み込んで行くのだと。
「薬・・・とは?」
「麻痺作用のある物です。だから、お兄さんも動けなかったのではありませんかね」
お兄さんとかいう鳥肌もののワードを無視していると少年が続ける。
「まぁ、偽物とはいえども銃にかわりはないので撃たれた人は痛いでしょうけど。」
嘲笑混じりに言った言葉が憎たらしい。
体が思うように動いたなら今頃鉄拳のひとつも飛んでいただろうに、
非常に残念でならない。
さて、
そう切り出した彼が懐から取り出した物は小さな注射器だった。
「何ですか?これは」
「解毒剤ですよ、お兄さんにうってあげてください。」
彼女は頷き、俺の腕に針を向けてきた。
慣れた手付きで人様の腕に細長い管を射し込んでいく。
なんか……
慣れすぎてないか?
そう思い彼女を見上げると俺の心情を読み取った少年が説明をくれた。
「彼女は救護班ですよ。」
「・・・・・は?」
思わず語気が荒くなってしまった。
それもそうだろう、こんな少女が医療関係の知識をもって
しかもこんな危険なところでの救護にあたっているのだから。
俺の考えに私情がないとは言わない、
でも危険すぎる。
銃なんてもの使わずに殺される可能性だってあったのに・・・
「珍しいですね、冷静さを欠いているのですか?」
少年は俺のようすがおかしいことに気付いたのだろう、彼は不思議そうにそう呟いた。
「普段の洞察力ならもう気付いているのではありませんか?
あなたの妹さんが居なくなったのは
ただの誘拐事件によるものではありませんよ?」
鈍器で頭を殴られたかのような衝撃に目を見開きながら少年をみやる。
彼は面白そうに微笑んだ。
俺が目に見えて動揺している事が可笑しいのだろう。
だが奴はその動揺を治める時間を与えてくれるほど優しくはなかった。
声のトーンをおとしていい放つ。
「あなたの母親が、妹さんを政府にうったのではありませんか?」
「違う」
彼の言葉を力強い声で否定する。
違う。母さんはそんなことを望んでなどいなかった。
でも彼女には、
政府を諭す事が出来なかったのだ。
「・・・・・・こいつは、妹じゃ・・・ないんだ。」
自分の声が思いの外弱く聞こえてきた。