政策実行者
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「やっぱ毎年こんなもんなんすかねぇ?」
「ん?まぁいつもより早めかも知れないけどねぇ。」
「でもそれにしても可哀想ですよね。
犯罪者予備軍の子供たちを集めて乱闘させようだなんて。」
長い廊下を歩きながら2人の大人たちが喋る声が響く。
「でもこの政策も直ぐに潰れるわ。」
「何故です?」
「こんな杜撰な計画が上手くいくほうがおかしいもの。」
飄々と答える女に男は溜め息を吐き出し、非難にも取れる問いを返した。
「・・・・・・じゃあなんでこんなところで働いてるんですか。」
「君はどうなんだ?」
「僕は・・・・・・・生きるためです。」
「あら奇遇ね、てかここで働いてるやつらなら皆だと信じたいけど。」
鼻歌でも聴こえてきそうな程に軽くいい放つ彼女に、男は哀れみすら感じていた。
彼女はもう何度も、子供たちの最期を看取ってきたのだから。
「あんた今私のことを哀れみの目で見たでしょう?」
「・・・・・別に」
「知ってる?その言葉は大抵肯定を意味するのよ」
図星をさされて言葉に詰まる。
更に彼女の目がマジな事がかなり堪えた。
「すいませんっしたー」
素直に謝ると彼女もひいたようで、彼はほっと安堵の溜め息を吐く。
そんなことをしていて気が付かなかった。
「子供が無事に帰ってきてくれただけで充分なのよ、私には。」
彼女がそう呟いていたことに。
暫く歩くと通路の奥に固く閉ざされた扉が見えてきた。
「さて、着いたわよ。」
女が発した言葉に男は視線を向ける。
「今回も生き残ったのは殺し屋の彼ですかね。」
「そうね、残念。」
そんな会話をしつつ扉の鍵を通す。
中に入ると眼鏡をかけた少年が佇んでいた。
「お疲れ様。」
そう声をかけるとそのまま横たわっている子供たちを回収し始める。
一人一人丁寧に台車に乗せていく。
大事なドナーに傷が付いたら困るから。
ところが数人を運び終えたところで動作が停止してしまった。
部屋中に鳴り響いた銃声が鼓膜に届いてくる。
そこでやっと状況を理解した。
「・・・・なんで、あんたが・・・・」
振り返った先に横たわっていた人物、
―――今やっと後悔したよ・・・・あんたに政府の機密事項を漏らしてたこと。
太いフレームの眼鏡の奥から強い光を称えた目を覗かせた彼は、
自分にそっくりな唇を弧に歪めて苦しそうに声を吐き出した。
「悪いな、母さん。」