共闘戦線
流石は文明の産物と言うべきか、
気付いた時には右肘の上辺りに鉄塊が激痛を伴いながら深く埋まっていく。
堪えきれなかった呻きが口のはしから漏れだし、それとともにその場に倒れこんでしまう。
少女がしゃがみこんできた。
傷口にさわるな、イタタタタタタっ。
お・・・・おい、俺を殺す気か・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・え?」
思わず自分の耳を疑った。
銃声が聞こえたから。
いや、それ事態は問題ない。
ただ銃声が聞こえた場所が・・・俺の真上だったから。
初めは少女が撃ったのだと思った。
でも・・・どこから銃を取り出したのだろうか?
ならば犯人は一人しかいないように思えた。
一番に自分の置かれている状況に気付き、銃を発見した人物。
初めから銃が2丁あったのだとしたら、うち1丁を持っている人物は一人しかいないのだ。
「・・・・・・大丈夫ですか?」
数メートル離れた場所にたっていた男が後ろに倒れたと同時に涼しい声が降ってきた。
「大丈夫じゃないのはお前の頭だろうが。」
眉間に皺を寄せつつ言い返す。
こいつに助けられたことがなんだか癪に触ったのだろう。
だが当の本人は涼しい顔を歪めない。
寧ろ微笑すら浮かべてこちらを見下ろしている。
そして微かな声で呟いた。
「・・・・・・僕はとっくの昔から大丈夫じゃないですけどね。」
その呟きの意味を聞き返す間もなく彼は少女に銃口を突き付ける。
「・・・何してやがる。」
呆然として言葉が出ない様子の少女のかわりに少年へ抗議の目を向ける。
少年は口元に弧を浮かべたまま首を傾げ、問い掛けてきた。
「あなたはどうしてそこまでその少女を庇うんですか?」
「・・・・・・・お前にそんなことを言う必要が?」
答える必要はない。
そう言ってほしくて言葉を紡いだ。
でも、そんな俺の細やかな抵抗などは簡単にスルーされてしまう。
「彼女に好意でも抱きましたか?この短時間で。」
眉間の皺が深くなってしまった。
こいつが何をしたくてこんな質問をしているのか分からない。
「それとも、彼女があなたの妹に似ているからですか?」
「・・・・・・・・・・・なんでお前がそんな個人情報入手してるんだよ。」
動揺を隠すように少年を睨み付ける。
彼はどこまで知っているのだろうか。
「質問の答えが帰ってきていませんね、あなたには妹さんがいらっしゃるでしょう?」
「それを知ってどうする気だ?」
「ただの好奇心ですよ。」
「・・・・・・妹ならいたよ」
いぶかしみながらも答えると彼が笑みを深めた。
「3年ほど前に誘拐事件が起こりませんでしたか?
その被害者は・・・あなたの妹だったのではありませんか?」
「!!!!?」
本当にどこまで知ってるんだこの男は。
動揺が隠せなくなってきた。
それでも、彼は気にすることなく喋り続ける。
「妹さんはそのまま帰ってきていませんね。」
「だから、なんだって言うんだよ。」
「だからあなたは、この政策の情報を集めていた。違いますか?」
「・・・・・・・・・」
「どういうことですか?」
震えた声で呟いたのは未だに銃を突き付けられている少女だ。
よくこの状況で声を絞り出したものだと感嘆の息がもれたが顔には出さずに少年を睨み続ける。
血でベタついた手を強く握る。
何故この状況で、俺は動くことが出来ないのだろうか・・・・・今すぐに2丁のうち1丁だけでも銃を手中に修めなければならないのに・・・・・・。
「自分が1度来ている場所です。妹が来ないとは限らない。だから、もし来てしまった場合に守ってあげられるように、政府の情報を集めていたんです。」
そうでしょう?
と俺に同意を求める。
知るか。
言い終わると直ぐに彼は少女に柔和な笑みを向けた。
「どうして2年もの間彼がこの場に出没し続けているのかが不思議でならなかったんです。
あなたを守るためだったんでしょうね。」
少女はそれを聞いて何かを言わんと口を開くが直ぐに閉じてしまった。
また別の声が聞こえたから。
「いい加減にして!!
さっきからぺちゃくちゃぺちゃくちゃと!ワケわかんないのよ」
ヒステリーを起こし叫ぶ彼女は倒れた男が持っていたはずだった銃を構えていた。
撃たれる。そう思った。
だがそれは直ぐに杞憂と終わる。
少年が放った銃弾が壁にかすって銃を持つ少女へと方向を変えたのだ。
恐らく方向転換をしている時間が惜しかったのだろう。
だからそのままの体勢から銃弾を放ったのだ。
しかしそんな神業を生きているうちに拝めるとは思わなかった。
いや、寧ろこれは死亡フラグか・・・・。
あぁぁぁおれ、
死ぬなぁこれ。
「お前あれだろ、政府直属の殺し屋だろ?」
「殺し屋とは失礼な、これでも英才教育の賜物ですよ?」
「殺しの英才教育とは、また随分と物騒だな。」
彼は不機嫌な顔をして同意をした。
ところで、と俺は切り出す。
「いつのまにやら残りが俺達だけになってるのは気のせいか?」
「あ、さっきの人が銃を乱射したときに皆・・・・・・・」
ああ成る程。
「俺はお前達と殺り合うつもりはないが・・・・・手伝わないか?殺し屋くん」
「僕が何のために態々あなたのことを調べまくったと思うんです?」
「ストーキング?」
「政策をぶっ潰すために決まってんでしょ。人使い荒いくせに給料は格安なんですよ。」
俺がアホなことを言ったのが気にくわなかったのだろう。彼の返答は冷たかった。
「さて、どうやって政府を落とそうか?」
少年に問うと、答えは驚くほどすんなりと返ってきた。
恐らくはもうずっと前から計画していた事なのだろう。
ずっとずっと暖め続けた計画は――――――…
少しの後、部屋一杯に銃声が2発鳴り響いた。




