無自覚無感想
今回は大分減ったな・・・・
無感情にそんなことを思い、推測する。
恐らくは俺と眼鏡少年の神った動きを見て生き残る自信が消失してしまったのだろう。
初めに集められていたのは18人、そのうち自殺者が11人。
「残りは7人か・・・意外と早く終わるかもな」
1人、これからの段取りに思案を巡らせていると隣から小さな呟きが聞こえてきた。
「どうして・・・そんなに飄々としていられるんですか?」
消え入りそうでありながらも明らかに俺に向けられた言葉。
それに疑問を抱いてしまった自分に戸惑いを覚えた。
もう、
人が死んでも何も感じなくなっているのだろうか・・・・・と。
「・・・そんなに飄々としてるか?俺は」
酷く困惑したまま少女に尋ねる。
すると少女は眉でハの字を描いてコクンと頷いた。
「・・・・・そうか・・・・・・・・・・もう、沢山殺したからな。俺も狂ってきてるのかも知れない・・・・・・。」
そこでふと少女の方をみて唖然としてしまう。
「なんで・・・君が泣いてるんだよ。」
少女は何故かその両目からポロポロと涙を流し、此方を見上げてくる。
「だって・・・・凄く悲しそうな顔をしてるから・・・・・・・」
思わず眉間に皺を寄せてしまった。
そんな悲しそうな顔をしている俺は、
沢山の人を殺した事を悔やんでいるのだろうか?
それとも
自分が人間らしく無くなったことが悲しかったのだろうか?
そんなことを考えていた口元に嘲笑が浮かぶ。
もう、自分のそんな感情すらも分からなくなっていたのだから。
「君と話してると・・・自分が人間に戻っていくみたいだな・・・。凄く、苦しくなる。」
「え?」
丸い目を更に丸くした少女が首を傾げる。
俺はそれに答えるように笑い掛けた。
「でも、不思議と悪い気はしないな。」
久しぶりに笑った気がした。
何時からだろうか?
俺が笑えなくなってしまったのは・・・・・・。
とその時、部屋の空気が甲高い悲鳴によってかき消される。
声に導かれて壁の方に目を向けると、1人の男が部屋の中央に立っていた。
思わず舌打ちをする。
奴はこの狭い空間で銃を手にしているものこそが王者になれるということに気付いてしまったのだ。
「・・・・・・・やべぇな」
そう口の中で呟くと少女が困惑した表情を浮かべていた。
「・・・だってさっきは・・・・・」
「は?あんなの相手を油断させるための話術だろう?一々相手の言ってること信用してると、あんた死ぬぜ?」
態と突き放したような言い方をすると少女は居心地が悪そうに視線を逸らす。
怖がらないなんて
珍しいこだな・・・落ち着いてるわけじゃないから経験者ではないんだろうけど・・・・・・
では一体何なのだろうか?
何がここまで少女を鈍感にしてしまっているのだろうか?
「・・・・・・怖くないのか?」
俺からの突然の問いに少女は理解出来ないとばかりにえ?と聞き返す。
そこでもう一度、今度はもう少し丁寧に同じ質問を繰り返した。
「お前はあの銃をもった男に射殺されるかも知れないんだぞ?それなのに怖くはないのか?」
「大丈夫です!だってあなたが側にいるもの!!」
「なんだその彼氏にでも言うような台詞は!!キラキラした目で俺を見るな」
「どちらかというとお父さんです!」
「そんな細かい設定要らんわ!!もういいから大人しくしてろ!」
そんなやり取りを済ますと自分達が危機的状況にあるということを思い出した。
ヤバいという思いと共に振り返ると今にも発砲してしまいそうな男の姿。
奴は俺のことを睨み、叫んだ。
「なにが“メリットがない”だ!銃を持ってる奴が一番強いに決まってる!!
ここにいる馬鹿な連中は騙せても、俺のことは騙せないと思え!」
呂律の回りきらない様子の彼は既に正気を失っているようにも思えた。
そして彼は、引き金をひく。
絶え間なく響く銃声に隣の少女が怯み目を強く瞑っている。
俺は無意識のうちに少女を後ろ手に庇った。
次の瞬間、狙いを定めることすらしていない筈の銃弾が俺に迫っていた。