異世界へ
ダメ出しお願いします
俺は、17歳ホームレス、佐藤 健一(さとう けんいち)だ。
俺の家族は、数ヶ月くらい前まではどこにでもあるような、普通な家庭だった。父、母、俺との3人家族だ。
しかし、唐突に父がリストラをされた。家計を父の仕事の収入のみで賄っていた俺の家族は、父がリストラされてから急変することとなった。
まず、父が『なぜ今まで真面目に働いてきたのにリストラなんか』と怒り狂った、そしてその矛先は家族に向けられた。
母も『初めは父が怒るのも仕方がない、治まるまでまで待とう』というような事を言っていたが、いつまで経っても怒りの治まらない父にもう耐えきれなくなったのか、俺に当たるようになった。
俺は、17歳になっているとは言え、それでも、まだ17歳だった。
色々な事が一気に起こりすぎたせいで、俺も混乱していた。そんな中で母に、父に、家族にリンチまがいの事を毎日されるようになったのだ。
そんな中を耐えろというのは、俺には無理だった。そして、数日経った後、家出をする決意が固まった。
あんな狂った家庭を、過ごしていくのは俺には無理だったし、どうせ毎日が金のない日々だったから、家出してホームレスになって過ごしたとしても、そう大差ないだろう。
家という建物自体は恋しかったが、両親がいるのなら全く必要なかった。
こうして俺は、家出をしてホームレスになった。
ホームレスになったら少しは楽になるだろうという俺の甘い予想に反して、生活は過酷を極めた。
両親と過ごしていた頃は、少しでも食べるものがあった。だが、家を抜けだして独り身となった今は、食べるものが本当になかった。それこそ、主食がダンボールなんて日もよくあった。『食べるものはなんとかなる』なんていう考えは、間違っていた。
しかし、飢えたから両親のもとへ帰るというのもなんだか気に食わなかった。両親のもとへ戻るというのは『俺に怒りを当てていいから、飯を食わせろ』と言っているのとほぼ同義だ。これでは、ただのサンドバック、いや、それ未満の存在だった。
こんな風に、ホームレス生活を送っていた俺に、転機が訪れる。もちろん良い方のものではない。
なんと、殺人鬼が俺を殺しに来たのだ。その殺人鬼は、ホームレスのみを狙い、そして殺していた。警察にも狙われているはずなのだが、なぜか捕まっていない。
しかし殺人鬼に狙われているという事実も、殺人鬼が目の前にいるという事実も俺にとっては正直どうでも良かった。確かに怖いが、『どうせ死ぬなら自殺よりも殺されたほうがいい』なんて考える俺には、むしろ、やっと楽になれる、と思える余裕すらあった。
そんな思考をしていたが、殺人鬼は俺に近づいてきた。もちろん抵抗する気もないし、おとなしく死ぬつもりだ。無駄に暴れて余計痛くなるのはごめんだ。
そして、俺はナイフで心臓を突き刺され、あっさりと死んだ。
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周りは、完全に暗闇で、全く何も見えない。ただ、目の前に何かが居るということははっきりと分かった。存在感とでも言うべきものが、あるのだ。
「余は、貴様らの世界で言う、『神』である。何故貴様が其処にいるのか等は、今から説明する故、しっかりと聞いておれよ」
と、目の前にいる何かが口を開いた。・・・神?
「貴様は此処に来る前に、貴様の世界で騒がれていた殺人鬼に殺されているはずだ。あの殺人鬼は、余が送った部下である。貴様等を呼ぶためには、魂の開放をしなければならなかったのでな。では、何故貴様が其処に呼んだのかについてだが、それは人間があまりにも可哀想であったからである。我等『神』と違い、貧弱な体、有数の命、頭の出来に限っては、目も当てられぬわ。」
目の前の『神』は続ける。
「そこで余は、人間の世界において、特に可哀想なもの、『ホームレス』と貴様らが呼称している者たちを余の力と権限を持ってして、楽しませることにした。」
さらに、続ける。
「楽しませ方としては、特に規定はない故、貴様ら自身が余に望みを言い、それを余が叶えるという形式をとっている。だが、規定はないとは言え、もちろん制限はある。ある程度のな。・・・しかし、余を見ても怯え出さぬその魂、余は気に入ったぞ。貴様以外のものは、すぐに過剰に怯えて、しばらく発狂するような状態であったからな。貴様は特別に望みの上限をなくしてやろう。」
これは、もしかして転生いけるんじゃ・・・?密かに生前好きだったジャンルの転生。夢の転生!なんかテンション上がってきた。なんか色々に耐性あって良かった!!あと我ながらなんて順応性!!!
「さあ、望みが決まり次第に、いつでも余に話しかけるが良い。その願い、叶えてやる。例え『神にしてくれ』という願いでもな。制限をなくすのは余が言い出したこと。その宣言、破りはしない。」
これは真剣に、何を願うか検討しなければならないな。まずは、異世界への転生。これは絶対だ。あ、容姿とか、どんな異世界かとか、そういうの細かく決めていいのかな。
「あ、あの。俺・・・私の願いは、異世界に行く。というものなのですが、どんな異世界か、とか、異世界へ行った後の容姿とか、ちょっと細かく決めてもよろしいですか・・・?」
良い・・・かな?
「ふむ・・・。よいだろう。制限がないのが、今、余が決めた規定であるからな。問題ない。」
これは、キタぞ。いろいろと。まず容姿は誰が見ても超イケメンと思うレベルのもので。どんな異世界なのかは、魔法があって、魔物がいて、冒険家ギルドもあって、・・・奴隷って、大丈夫かな。あと俺がその世界で無双できるということも必須だろう。よし、これでいいよな多分。
「えっと、まず容姿についてなんですけど、誰が見てもカッコいいと思うようなもの。でお願いします。それと、私の望む異世界が、どんなものかについてですけど、まず、魔法があって、魔物がいて、冒険家ギルドがあって・・・・奴隷制度があるところで。お願いします。それと、私をその世界において無敵という設定もお願いします。」
「魔法、魔物、冒険家ギルド、奴隷制度、貴様は異世界において無敵、という設定は承認しよう。容姿についてだが、余ができる限りのことはしよう。他にも色々と貴様の記憶の中から異世界の設定を構築していくこととする。しばし待たれよ。」
神に冒険家ギルドとか通じるんだ・・・。でも、これで夢の異世界生活!!やったねケンちゃん!!
「異世界の構築、先での貴様の設定の構築を完了した。その異世界にならって、異世界へ行くのに、魔法を唱えていくと良い。『我が望みし 彼の地へと 送り届け給え。』だ。これを唱えたあと、行き先を指定すれば行ける。ただその異世界の中に限ってだが。異世界の名前は、ヴィーナだ。まぁ、楽しんでこい。」
「あ、ありがとうございました!」
「我が望みし 彼の地へと 送り届け給え。ヴィーナ!」
目の前が一瞬暗くなる。次の瞬間、目の前に見たことのない景色が広がっていた。
2話目でいきなりあらすじ変えてしまって申し訳ないです・・・。