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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第7話 観察者

 ギルドの掲示板の前で、俺は依頼書を一枚手に取った。


 連続討伐。

 期間は七日。

 単独可。


「……これでいい」


 条件は昨日までと大きく変わらない。

 ただ、少しだけ階層が深い。


「その依頼、やめた方がいいわ」


 背後から、声がした。


 振り返ると、見覚えのない女性が立っていた。

 年は俺と同じか、少し上。

 落ち着いた目をしている。


「理由を聞いても?」


「あなたの記録を見たから」


 即答だった。


「三日連続、同系統依頼。

 単独。

 消耗ゼロ。

 討伐速度が上昇傾向」


 彼女は指を折りながら淡々と並べる。


「この条件、成立しない」


「……成立、しない?」


「理論上、無理なの」


 彼女――セリアは、そう断言した。


「熟練度、装備、才能。

 どれを考慮しても、どこかで疲労が出る。

 判断精度が落ちる。

 それがないのは……」


 言葉を切り、俺を見る。


「前提条件が壊れている」


 心臓が、わずかに跳ねた。


「あなた、何をやってるの?」


 問いは責める調子ではない。

 だが、逃げ場もなかった。


「……補助です」


 いつも通りの答え。


 セリアは、一瞬だけ目を細めた。


「やっぱり」


 その反応に、俺は首を傾げる。


「やっぱり、とは?」


「補助職の理論、全部調べてるから」


 彼女は懐から手帳を取り出した。


「補助は一時的。

 重ねがけには制限がある。

 戦闘終了後に効果は切れる」


 ページを閉じ、こちらを見る。


「――でも、あなたの結果は、それを否定してる」


 言葉に、背筋が冷えた。


「私は分析職よ。

 数字と条件で世界を見る」


 セリアは続ける。


「だから分かる。

 これは『強い』じゃない」


 一拍置いて、言う。


「存在してはいけない挙動」


 周囲の喧騒が、遠くなった気がした。


「……大げさです」


「大げさじゃない」


 きっぱりと否定される。


「もし私の仮説が正しければ、

 あなたの補助は“減らない”」


 俺は言葉を失った。


 補助は切れる。

 そう教わってきた。

 そう信じてきた。


「確かめたい」


 セリアはそう言って、一歩近づく。


「長期依頼で。

 七日じゃ足りない。

 もっと続ける必要がある」


「……それで?」


「私が一緒に行く」


 即答だった。


「結果を観測する。

 証明する」


 そして、少しだけ声を落とす。


「もし間違ってたら、

 私はギルドで“厄介者”になる」


 自分の立場を、理解した上での提案だった。


 俺は、しばらく黙って考える。


 誰かと組むつもりはなかった。

 だが――。


「……俺のやり方に、口は出さないでください」


 それだけ条件を出した。


 セリアは、少しだけ笑った。


「もちろん。

 否定しないために来るんだから」


 こうして、俺は再び誰かと組むことになった。


 ただし今度は、

 見えない仕事を“見る”ための相手と。


 この出会いが、

 静かに、だが確実に、世界の歯車を狂わせ始めることになる。


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