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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第5話 独りになっても変わらない

 ギルドの掲示板は、いつも通り騒がしかった。


 張り出された依頼書の前で、冒険者たちが条件を読み、報酬を比べ、仲間を探している。

 その中を、一人で歩くのは久しぶりだった。


「……低層討伐、か」


 俺が選んだのは、単独でも受注可能な簡易依頼。

 三階層から四階層にかけて出没する魔物の間引き。


 報酬は安い。

 だが、今の俺には十分だった。


「ソロ?」


 受付の職員が、少しだけ眉を上げる。


「はい」


「……気をつけてね」


 それ以上、何も言われなかった。

 追放されたことは、もう共有されているのだろう。


 ダンジョンに入ると、空気が変わる。

 湿った石の匂い、足元の不安定さ。


 懐かしい感覚だった。


 俺は、いつも通りの手順で準備を始める。


 身体強化。

 反応速度の調整。

 疲労軽減と集中力維持。


 誰も見ていない場所で、淡々と仕込む。


「……これでいい」


 補助を終え、ゆっくりと進む。


 最初の魔物と遭遇したのは、通路の曲がり角だった。

 反射的に距離を取り、様子を見る。


 だが、魔物の動きが遅い。


「……?」


 こちらが何かしたわけではない。

 それでも、間合いを詰めるのが妙に遅かった。


 剣を抜き、一歩踏み込む。


 体が、軽い。


 思ったよりも深く踏み込めた。

 剣は自然に魔物の急所を捉え、一撃で沈めた。


 被弾はない。

 息も乱れていない。


「……たまたま、か」


 そう思いながら、先に進む。


 二体目、三体目も同じだった。

 避けやすく、当てやすい。


 気づけば、戦闘が終わっていた。


「……おかしいな」


 立ち止まり、自分の体を確かめる。


 違和感はない。

 むしろ、調子がいい。


 パーティの時と同じ補助。

 同じ手順。


 変わったのは――人数だけだ。


「……一人でも、同じか」


 そう呟いてから、胸の奥が少しだけざわついた。


 これまで、当たり前だと思っていた感覚。

 それが、自分一人でも成立している。


 それはつまり。


 俺の補助は、誰かがいなくても――。


 考えを振り払うように、首を振る。


「……深く考える必要はない」


 依頼をこなすだけだ。

 いつも通りに。


 その日の討伐は、想定よりも早く終わった。

 消耗品も使わず、傷もない。


 ダンジョンを出る頃、空はまだ明るかった。


「……楽、だな」


 それが感想だった。


 ギルドに戻り、報告を済ませる。


 受付の職員が、書類に目を落とし、固まった。


「……え?」


 小さく声を漏らし、もう一度確認する。


「この時間で、単独で、ここまで?」


「はい」


「消耗は……?」


「ありません」


 職員は、しばらく黙り込んだ。


 それから、困ったように笑う。


「……変わった人ですね」


 その言葉に、俺は少しだけ首を傾げた。


 変わっているのは、自分なのか。

 それとも、基準の方なのか。


 まだ、その答えは出ない。


 だが一つだけ、確信があった。


 独りになっても、俺のやることは変わらない。

 補助を仕込み、無理をせず、確実に進む。


 それだけで、今日も無事に帰ってこられた。


 ――それが、何を意味するのかを理解するには、まだ時間が必要だった。


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