第4話 追放
翌日、ギルド本部の会議室に呼び出された時点で、俺は察していた。
ここは依頼の相談や、パーティ編成の変更を正式に行う場所だ。
個人的な話し合いで使われることは、ほとんどない。
木製の長机を挟み、俺とカイルたちは向かい合って座っていた。
立ち会いとして、ギルド職員が一人控えている。
形式ばった空気だった。
「それじゃあ、始めるわね」
職員が事務的に言う。
「本日の議題は、パーティ編成の変更について。
リーダーであるカイル・グレンさんから申請が出ています」
視線が、自然とカイルに集まった。
彼は一度、息を整えてから口を開く。
「結論から言う。
レイン、お前にはパーティを抜けてもらう」
淡々とした声だった。
そこに私情はない。
「理由は昨日話した通りだ。
今後の攻略方針と、お前の役割が噛み合わない」
ブラムも、リーナも、何も言わない。
視線を逸らしている者はいなかったが、助け船が出ることもない。
それが、この判断が全員の合意であることを示していた。
「異論は?」
職員が俺を見る。
形式上の確認だ。
ここで揉めることは、想定されていない。
「……ありません」
そう答えると、職員は頷いた。
「では、手続きを進めます。
レイン・アルトさんは、本日付で当パーティから除籍となります」
紙にペンが走る音が、やけに大きく聞こえた。
「報酬の清算についてですが――」
職員は説明を続ける。
直近の依頼分は、規定通り分配。
装備は個人所有物のみ持ち出し可。
ごく普通の、追放手続きだった。
「……悪く思うな」
最後に、カイルが言った。
「これは、パーティを守るための判断だ」
「分かっています」
本心だった。
彼は、間違ったことをしていない。
少なくとも、この世界の基準では。
部屋を出る前、ブラムが一瞬だけ俺を見た。
「……達者でな」
それだけ言って、視線を逸らした。
それが、最後だった。
ギルドを出ると、昼の喧騒が耳に入る。
行き交う冒険者たちは、誰一人としてこちらを気に留めない。
世界は、何も変わっていなかった。
「……終わった、か」
独り言が、やけに軽く聞こえた。
怒りはない。
悲しみも、驚くほど薄い。
こうなる可能性を、ずっと前から考えていたからだ。
宿に戻り、荷物をまとめる。
装備は最低限。
補助用の道具も、いつも通り。
鏡に映った自分の顔は、落ち着いていた。
「役に立たなかったなら……仕方ない」
自分に言い聞かせるように呟く。
この世界では、見えるものが評価される。
見えないものは、後回しだ。
それを、今さら恨んでも意味はない。
宿を出る時、ふと立ち止まる。
これからどうするか。
答えは、もう決まっていた。
「……一人で、やるか」
ソロでの活動は久しぶりだ。
だが、やることは変わらない。
戦闘前に補助を仕込み、
無理をせず、確実に進む。
それしか、知らない。
夕暮れの街を歩きながら、俺は次の依頼を探す。
この時点ではまだ。
この追放が、自分だけでなく、あのパーティの運命をも変えることになるとは――
誰も、思っていなかった。




