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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第38話 最後の確認

 制度改訂から数日。


 ギルドの空気は、以前よりも落ち着いていた。


 誰もが慎重になったわけではない。

 深層へ挑む者は、相変わらずいる。


 だが、戻ってきた者に向けられる視線が違う。


 「成果なし」ではなく、

 「適切な判断」。


 その違いは、小さいようで大きかった。


 資料室で、セリアが手帳を閉じる。


「これで、一区切りね」


「はい」


 深層は消えない。

 事故もゼロにはならない。


 だが、壊れる前提は減った。


「満足?」


 唐突な問いだった。


「……何に対してですか」


「世界が、あなたの基準を採用したこと」


 少し考えてから、首を横に振る。


「俺は、何もしていません」


 事実だ。


 誰かを説得したわけでもない。

 制度を提案したわけでもない。


「ただ、戻っただけです」


 セリアは、わずかに笑う。


「だから残ったのよ」


 英雄なら、対立が生まれた。

 主張すれば、反発もあった。


「あなたは、押し付けなかった」


「押し付ける理由がありません」


「ええ」


 セリアは立ち上がる。


「だから、“思想”として残った」


 使われる力は、反発を生む。

 だが、壊れなかった例は、否定しづらい。


「……これで終わり、ですか」


「いいえ」


 即答だった。


「深層は続く。

 事故も起きる。

 制度も、いずれ揺らぐ」


 世界は、完璧にはならない。


「でも」


 セリアは、静かに言う。


「“戻るのが恥じゃない”という前提は、

 簡単には消えない」


 それだけで、十分だった。


 夕方、俺たちは浅い階層へ入った。


 特別な目的はない。

 ただ、確認だ。


 数体の魔物を避け、

 必要最低限の補助だけを使い、

 適当な地点で立ち止まる。


「今日は、ここまでにしましょう」


「ええ」


 迷いはない。


 そして、その判断は

 “成功”として記録される。


 帰還後、受付で報告書を提出する。


「適切な撤退ですね」


 職員が、自然にそう言った。


 その言葉に、違和感はなかった。


 以前なら、

 「早いですね」と言われていた。


 今は違う。


 俺は、特別扱いされていない。

 称賛もない。


 ただ、

 壊れない判断が、普通になった。


 ギルドを出ると、夕焼けが街を染めている。


「これで、本当に満足?」


 セリアが、もう一度聞く。


 少しだけ考え、答えた。


「はい」


 最強にならなくていい。

 英雄にならなくていい。


 ただ、壊れずに戻る。


 それが普通になったなら、

 それで十分だ。


 追放された戦闘補助師は、

 世界を変えたわけではない。


 ただ、

 壊れない選択を、

 最後まで守っただけだ。


 そしてその選択は、

 静かに、この街に根を下ろしていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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