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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第34話 拒否の理由

 再度の呼び出しは、予想より早かった。


 応接室に通されると、そこにはロウエンと、もう一人。

 カルディア・エル・ノーヴァが席に着いていた。


「今回は、条件提示です」


 カルディアが、淡々と切り出す。


「国家案件ですが、

 成果義務は設けません」


 ロウエンが続ける。


「報酬は最低限。

 名声も、公式記録も出さない」


 前回とは、明らかに違う。


 “使う”ためではなく、

 “壊さないため”に寄せてきている。


「深層への同行も、任意。

 滞在日数の指定なし」


 カルディアは、視線をこちらに向ける。


「撤退判断は、すべてあなたに委ねます」


 国家としては、ほぼ限界まで譲った条件だ。


 セリアは、黙ったまま様子を見ている。

 判断は、俺に任されていた。


「……結論から言います」


 俺は、ゆっくりと口を開いた。


「それでも、お断りします」


 一瞬、空気が止まる。


 だが、二人とも驚きはしなかった。

 想定していた反応だ。


「理由を聞かせてください」


 カルディアが、静かに言う。


「条件としては、

 かなり配慮したつもりです」


「ええ。

 その点は、理解しています」


 だからこそ、

 曖昧に断るわけにはいかなかった。


「問題は、条件の中身ではありません」


 俺は、はっきりと言う。


「“国家案件”という枠組みそのものです」


 ロウエンが、腕を組む。


「それは……どういう意味だ」


「目的が、外部にある」


 短く、だが正確に答える。


「誰かのため、

 何かのため、

 成功すべき理由が最初から存在する」


 それは、深層において最も危険だ。


「成果義務がなくても、

 評価しないと言われても、

 “期待”は消えません」


 カルディアは、わずかに目を伏せた。


「……否定できません」


「その期待が、

 撤退判断を遅らせます」


 俺は、続ける。


「撤退が“正解”ではなく、

 “逃げ”に見えた瞬間、

 補助は壊れます」


 それは、理論ではない。

 経験だ。


「あなたの力は、

 あまりにも繊細だ」


 ロウエンが、低く言う。


「ええ」


 否定しない。


「だから、

 守れる環境でしか使えません」


 カルディアは、しばらく考え込み、

 やがて一つの問いを投げた。


「では、

 どんな依頼なら受けるのですか」


 それが、本質だった。


「“失敗が許されているもの”です」


 即答だった。


「正確には、

 失敗という概念が存在しないもの」


 セリアが、静かに補足する。


「撤退しても、

 何も失われない案件」


「はい」


 進まなくてもいい。

 結果が出なくてもいい。


「検証だけが目的で、

 進まない判断が

 最善になる可能性があるもの」


 カルディアは、深く息を吐いた。


「……それは、

 国家運用では、

 ほぼ存在しません」


「だから、断っています」


 きっぱりと言う。


 沈黙が落ちた。


 ロウエンが、ゆっくりと口を開く。


「分かった」


 短い言葉だった。


「無理に引き込めば、

 価値を壊す」


 カルディアも、頷いた。


「あなたは、

 “使う側”に立たない人ですね」


「はい」


「でも」


 彼女は、微かに笑う。


「だからこそ、

 使えないと判断できる」


 それは、皮肉でもあり、評価でもあった。


 書類は、机の上に残されたまま。

 サインは、されない。


 だが、敵対もしていない。


「本日は、これで」


 カルディアは、立ち上がる。


「拒否の理由は、

 正確に記録します」


 それで十分だった。


 部屋を出た後、

 セリアが小さく言う。


「完全に、線を引いたわね」


「はい」


「でも、嫌われてはいない」


「ええ」


 拒否は、対立じゃない。

 境界線だ。


 追放された戦闘補助師は、

 国家に従わなかった。


 だが同時に、

 国家を否定したわけでもない。


 ただ一つ。


 **壊れる前提を、

 最初から受け入れなかった**。


 それが、この世界では、

 最も理解されにくく、

 そして最も必要な判断だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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