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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第27話 深入りしない

 ギルドからの依頼書は、いつもより厚かった。


 封蝋付き。

 提出元は、ギルド運営部――ではない。


「……国家案件ね」


 セリアが、依頼書の端に刻まれた紋章を見て言う。


「はい」


 内容を開く前から、重さは伝わってきた。


 深層第二帯域の長期調査。

 想定滞在日数、十日以上。

 成功すれば、前例のない報酬と名声。


「“成功すれば”って書いてある時点で、

 相当無茶ね」


 セリアは、淡々と指摘する。


「撤退基準が、曖昧です」


「ええ。

 つまり、“成果が出るまで戻るな”ということ」


 俺は、依頼書を閉じた。


 内容自体は、魅力的だ。

 深層を安全に調査できるなら、世界にとって価値がある。


 だが――。


「受けません」


 答えは、すぐに出た。


 セリアは、驚かない。


「理由は?」


「補助が壊れます」


 それだけだった。


「滞在日数を成果に結びつける設計は、

 判断を歪めます」


 深層では、

 “どこまで行ったか”や

 “何日耐えたか”が、最も危険な評価軸になる。


「名声が出る案件ほど、

 撤退が遅れる」


 セリアが、静かに補足する。


「深層と、一番相性が悪い」


 その通りだった。


 俺は、依頼書を封筒に戻す。


「今回は、やりません」


 それ以上の説明は、必要ない。


 数時間後、ロウエンから呼び出しがあった。


「断ったな」


「はい」


 責める調子ではない。

 確認に近い。


「理由は、聞かせてもらえるか」


「“深入りしない”ためです」


 ロウエンは、一瞬だけ考えた。


「……妥当だ」


 短く、そう言った。


「国家案件は、

 成功の定義が危険なことが多い」


 彼自身、理解している。


「評価が先に立つと、

 撤退できなくなる」


「はい」


 それが、深層で一番多い失敗だ。


「惜しいとは思わないか」


 ロウエンは、率直に聞いてきた。


「思いません」


 即答だった。


「惜しいと思う時点で、

 もう基準がズレてます」


 ロウエンは、小さく息を吐いた。


「……変わらないな、君は」


「変わる必要がありません」


 それが、俺の立場だ。


 応接室を出ると、

 廊下の向こうで、別の冒険者たちが依頼書を覗き込んでいた。


「すげぇ条件だな……」


「成功したら、一気に名が売れるぞ」


 そんな声が、遠くで聞こえる。


 俺は、足を止めない。


 深層では、

 “名前が残る”よりも、

 “戻れること”の方が価値がある。


 それを、俺はもう知っている。


「……正しい判断ね」


 セリアが、隣で言う。


「はい」


「面白くはないけど」


「ええ」


 だが、この物語は、

 派手な成功の話じゃない。


 壊れないために、

 深入りしない話だ。


 追放された戦闘補助師は、

 世界を救おうとはしない。


 ただ、

 壊れる選択肢を、

 一つずつ削っていくだけだ。


 その積み重ねが、

 いつの間にか“最強”と呼ばれる理由になることを、

 世界はまだ、理解していない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

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