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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第25話 組織の誤算

 その日の夜。


 ギルド本部の最上階、普段は使われない会議室に灯りが入っていた。


 円卓を囲んでいるのは、ロウエンを含めた数名。

 いずれも、現場を離れて久しいが、意思決定に関わる立場の者たちだ。


「……報告は以上です」


 書類を置いた職員が下がる。


 しばし、誰も口を開かなかった。


「再現できない」


 最初に言葉を発したのは、白髪混じりの男だった。


「数値に落とせない。

 条件を揃えても、同じ結果が出ない」


「しかも、本人に自覚がない」


 別の女が、静かに続ける。


「操作も、誘導もできない。

 命令すれば、拒否される」


 円卓の中央で、ロウエンが腕を組んだまま聞いている。


「……当初の想定では、

 “優秀な補助職”だった」


 ロウエンが、低く言った。


「囲い込み、管理し、

 必要な場面で使う」


 それが、一般的な発想だ。


「だが、違った」


 ロウエンは、はっきりと否定する。


「彼は、兵器ではない」


 一人が眉をひそめる。


「では、何だと?」


「……構造だ」


 ロウエンは、そう表現した。


「戦況を変える力ではない。

 判断基準そのものを、変えてしまう存在だ」


 沈黙が落ちる。


 それが、どれほど厄介か。

 ここにいる全員が理解していた。


「管理できない存在は、危険だ」


 誰かが言う。


「管理しようとした時点で、

 価値が失われる」


 ロウエンは、即座に返した。


「今回、それは証明された」


 ユリウスの件。

 深層の分岐。


「もし彼を前線に押し出していたら、

 今ごろは――」


 言葉は、最後まで続かなかった。


「……誤算だったな」


 年配の男が、ため息をつく。


「囲えると思ったのが、間違いだった」


「いや」


 ロウエンは、首を横に振る。


「囲えないことが、誤算だったんじゃない」


 視線を、円卓の一人一人に向ける。


「“使える”と思ったこと自体が、誤算だ」


 彼は、利用される存在ではない。

 配置できる駒でもない。


「では、どう扱う」


 問いが投げられる。


 ロウエンは、少しだけ考え、答えた。


「選ばせる」


 即答だった。


「条件を出させ、

 それを守る」


「……主導権を渡すのか?」


「すでに、渡っている」


 そう言い切る。


「今さら取り戻そうとすれば、

 壊れる」


 円卓の誰も、反論できなかった。


 議論は、結論に向かう。


「監視は、最小限」


「記録は、本人の許可範囲のみ」


「介入は、要請があった場合に限る」


 通常では、あり得ない扱いだ。


「国家からの問い合わせは?」


「保留だ」


 ロウエンは、短く答える。


「今、表に出す段階じゃない」


 彼らは理解していた。


 この補助職は、

 “表に出した瞬間に壊れる”類の存在だ。


 会議が終わり、部屋を出る直前。


 誰かが、ぽつりと呟いた。


「……世界の方が、

 追いついていなかっただけか」


 ロウエンは、振り返らずに答える。


「そうだ」


 追放された補助職が異常なのではない。

 異常を測れない世界の方が、未成熟だった。


 その事実を、

 ようやく組織が理解し始めただけだ。


 一方その頃。


 俺は、セリアと簡単な食事を取りながら、

 次の探索計画を話していた。


「深層は、しばらく間隔を空けます」


「ええ」


 即答だった。


「今は、近づきすぎない方がいい」


 何かが動いていることを、

 俺たちは、まだ知らない。


 だが確かに。

 世界の歯車は、静かに噛み合い直し始めていた。


 その中心に、

 追放された戦闘補助師がいるという事実だけが、

 これから先、重くのしかかっていくことになる。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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