第22話 連絡
ギルドの鐘が鳴ったのは、昼を少し過ぎた頃だった。
緊急招集の合図ではない。
だが、普段よりも明らかに短く、強い音。
「……来たわね」
セリアが、手帳を閉じる。
予感はあった。
進んだ側から、何かが起きる。
受付に向かうと、空気が張りつめていた。
職員たちの動きが早く、声が抑えられている。
「レインさん、セリアさん」
呼び止められ、奥へ案内される。
対応に出たのは、ロウエンだった。
いつもより表情が硬い。
「状況報告だ」
前置きもなく、そう切り出す。
「深層第一層に入っていたパーティの一つが、
予定時刻を過ぎても帰還していない」
セリアは、静かに頷く。
「ユリウスのところですか」
「そうだ」
ロウエンは否定しなかった。
「魔力反応は、断続的に確認できている。
全滅ではない」
だが、と続ける。
「判断ミスが、複数回記録されている」
判断ミス。
戦闘力が足りないのではない。
判断が、狂っている。
「救援は?」
「出した」
短く答える。
「だが、深層では
“辿り着けるか”も保証できない」
それが、現実だった。
セリアが、一歩前に出る。
「後遺症は?」
「すでに、一人」
ロウエンは、視線を伏せる。
「意識はあるが、
状況認識が不安定だ」
深層特有の症状。
ノアと同じだ。
「……死亡者は?」
「今のところ、いない」
その言葉に、ほんのわずかだが、安堵が混じった。
それでも、失敗には変わらない。
「あなたたちは、正しかった」
ロウエンは、はっきりと言った。
「撤退判断をした時点で、
すでに分岐していた」
セリアは、何も言わない。
ただ事実として受け取る。
俺も同じだった。
「協力要請は、しない」
ロウエンは続ける。
「今、君を深層に戻すのは、
検証にならない」
「……分かりました」
俺は頷く。
戻っても、できることは少ない。
それは、誰よりも理解していた。
部屋を出ると、ギルド内の空気がざわついているのが分かった。
「……思ったより、早かった」
セリアが低く言う。
「ええ」
差は、静かに。
だが、確実に表に出始めた。
進んだ者は、まだ生きている。
だが、すでに削られている。
戻った者は、何もしていない。
だが、壊れていない。
この違いが、
これから評価として、
はっきりと形になる。
深層は、残酷だ。
だが同時に、
とても公平でもある。
“行けたか”ではなく、
“戻れたか”だけを、
結果として突きつけてくるのだから。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




