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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第21話 壊れない選択

 地上に戻って二日目。


 俺は、特別なことは何もしていなかった。

 装備の手入れをして、簡単な体操をして、普段通りに眠る。


 それだけだ。


「……本当に、何も残ってない」


 セリアが、手帳を閉じながら言った。


「疲労、精神負荷、判断遅延。

 どれも、初日と変わらない」


「回復が早い、わけじゃないんですね」


「ええ」


 彼女は首を振る。


「“回復する前提”の数値じゃない。

 最初から、削られていない」


 それは、補助の異常性を示す一つの答えだった。


 深層に入った。

 判断をして、戻った。


 それだけなのに、

 結果だけが、はっきりと違う。


「……これが、“壊れない”ってことね」


 セリアの声には、感情がほとんどなかった。

 だが、それが一番の評価だった。


 その時、ギルドの入口で、人影が揺れた。


「……あ」


 セリアが、先に気づく。


 ノア・クレインだった。


 相変わらず、焦点の合わない目。

 だが、今日は少しだけ、表情が違う。


「戻ったんだな」


 ノアは、俺を見る。


「はい」


「……そうか」


 それだけで、彼は少し安心したように息を吐いた。


 俺の様子を、じっと観察する。


「……平気そうだ」


「はい」


 嘘はついていない。


 ノアは、しばらく黙ってから、ぽつりと言った。


「それが、正しい」


 短い一言だった。


「深層はな、

 “進めた奴”より、

 “戻れた奴”の方が、後で価値が出る」


 俺は、その言葉を静かに受け取る。


「……俺は、進まなかっただけです」


「違う」


 ノアは、首を横に振った。


「“進まない判断”を、

 迷わずできた」


 それは、経験者だからこそ言える評価だった。


 セリアが、横で小さく頷く。


「多くの人は、

 “行ける気がする”を信じて壊れる」


「そうだ」


 ノアは、少しだけ笑った。


「俺も、そうだった」


 それ以上、過去を語ろうとはしなかった。


 沈黙の後、ノアは背を向ける。


「……しばらくは、無茶するな」


「はい」


「深層は、逃げない。

 人の方が、先に壊れる」


 それだけ言って、彼は去っていった。


 セリアが、俺を見る。


「評価されたわね」


「そうでしょうか」


「ええ。

 深層帰還者からの、それは」


 しばらく、二人で黙って歩く。


 その途中、ギルドの職員が慌てた様子で走っていくのが見えた。


「……何か、ありそうですね」


「ええ」


 セリアは、視線を逸らさずに言う。


「進んだ側から、

 そろそろ“結果”が届く頃よ」


 俺は、何も言わなかった。


 比べるつもりはない。

 競う気もない。


 ただ、俺は戻った。

 壊れずに。


 それだけが、

 深層における唯一の“正解”だと、

 今はまだ、世界の方が気づいていないだけだ。


 そしてそのズレは、

 もうすぐ、はっきりと形になる。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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