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追放されたエンハンサー(戦闘補助師)、効果が見えないだけで実は上限なしでした 〜地味職だと思われて切られたが、長期戦では最強らしい〜  作者: 白石ユウト


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第16話 深層前夜

 深層探索の許可が下りたのは、条件合意から三日後だった。


 特別扱いというほど派手ではない。

 だが、通常の依頼書とは明らかに違う書式で、淡々と手渡された。


「……これが、深層用」


 紙を受け取りながら、俺は呟いた。


 階層指定、滞在上限、撤退基準。

 そして最後に、小さく添えられた一文。


――※探索継続の可否は、協力者の判断を最優先とする。


「ずいぶん譲ったわね」


 隣で、セリアが肩をすくめる。


「管理したい。でも壊したくない。

 その妥協点でしょう」


 ギルド側の思惑は、分かりやすかった。


 深層は、戻ってこられなくなる者が多い。

 実力の問題ではない。

 判断を誤るからだ。


「準備は、いつも通りでいいですか」


「ええ」


 セリアは即答した。


「変数を増やす意味がない」


 俺たちは、必要以上の装備を持たない。

 消耗品も最低限。

 深層では、持ち物より判断の方が重い。


 出発前、ギルドの通路で、見知らぬ男に声をかけられた。


「……あんたが、例の補助師か」


 振り返ると、疲れた目をした冒険者が立っていた。

 年齢は俺より上。

 装備は古く、だが手入れは行き届いている。


「ノア・クレインだ」


 名乗りを聞いて、セリアの視線が一瞬だけ鋭くなる。


「……深層帰還者」


 ノアは苦笑した。


「そんな大層なもんじゃない。

 帰ってきただけだ」


「何か用ですか」


 俺が聞くと、ノアは少し迷ってから言った。


「忠告だ」


 短い言葉だった。


「深層では、

 “強い人ほど帰るのが遅れる”」


 その一言に、余計な感情はなかった。

 経験だけが乗っている。


「力があると、行ける気がする。

 判断が冴えてる気がする」


 ノアは、視線を落とす。


「……それが、一番危ない」


 セリアが、静かに頷いた。


「あなたは、どこで撤退を?」


「覚えてない」


 即答だった。


「気づいたら、外だった。

 仲間は……まあ、生きてる」


 生きている。

 だが、無事とは限らない。


「だから言っておく」


 ノアは、俺を見る。


「“行ける”と思ったら、

 一度、帰れ」


 それだけ言って、背を向けた。


 忠告としては、不親切なくらい簡潔だった。

 だが、重さは十分だった。


「……正しい人ね」


 セリアが呟く。


「はい」


 同意する。


 深層は、敵が強い場所じゃない。

 壊れやすい場所だ。


 翌朝、俺たちはダンジョンの最深部へ向かった。


 境界線を越えた瞬間、空気が変わる。


 音が、遠い。

 距離感が、曖昧になる。


「……環境ダメージ、常時発生」


 セリアが即座に分析する。


「小さいけど、確実に削ってくる」


 俺は、いつも通り補助を仕込んでいた。

 だが、ここでは“全部”は使わない。


「疲労耐性のみ、維持」


 セリアが確認する。


「はい。他は、切っています」


「正解」


 深層では、盛りすぎた補助が判断を狂わせる。


 一歩、進む。


 魔物は、まだ出てこない。

 それでも、進んでいるだけで消耗していく感覚がある。


「……ここが、基準の壊れる場所」


 セリアの声は、低かった。


 俺は、足を止める。


「今日は、確認だけにしましょう」


「ええ」


 即断だった。


 行ける。

 だが、行かない。


 それが、深層における最初の判断だった。


 追放された戦闘補助師は、

 最強を証明しに来たわけじゃない。


 壊れずに帰るために、

 この場所に足を踏み入れたのだから。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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