第14話 条件
応接室に、静かな時間が流れた。
ロウエンも、ハロルドも、急かさない。
だがその沈黙は、「軽い条件では済まない」と告げていた。
俺は、一度だけ息を整える。
「条件は、四つあります」
そう切り出すと、ハロルドがペンを構えた。
「一つ目。行動の自由」
はっきりと言う。
「指定依頼を受けるかどうかは、俺が決めます。
拒否した依頼について、理由の説明義務は負いません」
「……管理下での自由、か」
ハロルドが低く呟く。
「二つ目。同行者の指定」
俺は、セリアを見る。
「分析役は、彼女に限定します。
変更は認めません」
セリアは何も言わなかったが、背筋がわずかに伸びた。
「三つ目。補助内容の非公開」
この条件で、空気が変わる。
「俺が何をしているか、
どんな補助を使っているか。
それは、記録対象にしないでください」
「……それでは、再現性が――」
ハロルドが言いかけるのを、俺は遮った。
「再現できないから、危険なんでしょう」
短い沈黙。
ロウエンが、ゆっくりと頷いた。
「続けろ」
「四つ目。長期検証の継続」
俺は言う。
「途中で、打ち切らない。
都合が悪くなったからといって、
結論を急がない」
それは、管理する側にとって一番嫌な条件だった。
ハロルドは、明確に顔をしかめる。
「それは、こちらにとってリスクが高い」
「分かっています」
俺は、落ち着いた声で答える。
「だから、条件です」
全て言い終え、黙る。
しばらくして、ロウエンが口を開いた。
「……理由を聞いてもいいか」
「はい」
「なぜ、そこまで自由にこだわる」
少し考えてから、答えた。
「縛られた瞬間に、
俺の補助は壊れます」
それは、確信に近い感覚だった。
「検証のために条件を歪めたら、
意味がなくなる」
セリアが、静かに頷く。
「彼の言う通りです」
彼女は、ロウエンを見る。
「この力は、
“都合よく使える”ものじゃない」
ハロルドは、ペンを置いた。
「……要求としては、過剰だ」
「そうでしょうね」
否定はしない。
「だから、受け入れられないなら、
俺は協力しません」
言い切った。
追放された時とは違う。
今回は、選択肢がある。
ロウエンは、目を閉じて数秒考えた後、言った。
「条件一、二、三は受け入れられる」
ハロルドが驚いた顔をする。
「ロウエン――」
「だが、四つ目」
ロウエンは、視線を上げる。
「長期検証については、
定期的な中間報告を条件にする」
「結論を急がない?」
「急がない。
だが、途中経過は共有する」
それは、最大限の譲歩だった。
俺は、セリアを見る。
彼女は、わずかに頷いた。
「……分かりました」
そう答えた瞬間、部屋の空気が変わる。
ハロルドが、静かに言った。
「君は、自分の立場を理解しているな」
「いいえ」
俺は否定する。
「ようやく、同じ目線に立っただけです」
ロウエンは、小さく息を吐いた。
「では、合意としよう」
そうして、条件は成立した。
追放された補助職は、
誰かに使われる存在ではなくなった。
これからは――
どう使わせるかを、選ぶ側になる。
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