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『家賃500Gの欠陥住宅』に住み始めたら、S級英雄たちが勝手に『聖域』認定して国家予算を溶かし始めた件 ~魔王軍が「推し活」の邪魔だと秒殺されていくのですが、私の勘違いでしょうか?~  作者: あとりえむ
【第二章】魔王軍続々襲来!?解釈違いの聖戦(レスバ)に巻き込まれて、いつの間にか伝説の演武を披露していました。

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第20話 魔王の咆哮は、湯上がりの一杯にかき消され

 王城、玉座の間。


 カツ、カツ、カツ……。


 乾いた足音だけが、不気味に響く。

 英雄たちは、玉座で小刻みに震える魔王に目もくれず、インカムの向こう側へ業務連絡を続けていた。


「……障害物排除完了。これより『爆乳ホルスタイン牧場』へ転移。フルーツ牛乳の確保へ移行します」

「了解。急ぎましょう。ミミちゃんの湯上がりに間に合いません」




 背中を向けられた魔王の喉奥から、煮えたぎるような重低音が漏れ出した。


「……無視、するな」


 ブチリ。

 何かが千切れる生々しい音が、玉座の間にて反響した。


「余を見ろォォォォ!! 人間どもォォォォォッ!!」




 グボォォォォォォッ!!




 魔王の皮膚が裂け、内側から汚泥のような肉が溢れ出す。

 鼻をねじ切るような強烈な腐臭――下水と腐った卵を煮詰めたような悪臭が爆発的に充満し、吐き出される熱波だけで、大理石の柱がドロドロと飴のように溶け落ちた。


 天井を突き破り、瓦礫を雨のように降らせながら、魔王は――「終焉の巨獣」――へと変貌する。

 その巨体が動くたび、空気が振動し、鼓膜が破れそうなほどの圧力が肌を叩く。


「逃がさん……! 絶望を味わえ!」




 キィィィィィィン……。




 突如、世界から「潤い」が消えた。

 舌の根が乾き、肌にまとわりついていた魔力の粒子が、掃除機で吸い取られるように消失する。


 魔王の固有結界――「絶対魔法無効領域」――。

 ゼルが指先に灯しかけた転移ゲートの光が、ジジッというノイズと共に掻き消された。


「……チッ。座標ロスト。魔力回路、切断されました」

「ハハハ! どうだ! 貴様らの手足はもがれた! 牧場へは行けまい!」




 魔王の勝ち誇った高笑いが、ビリビリと床を揺らす。

 英雄たちの足が止まった。


 その時だ。

 三人の耳元のインカムから、無機質な報告が鼓膜を震わせた。



『――こちらシャドウ。ミミちゃん、浴室から出ました』

『現在、バスタオルの衣擦れ音を確認。パジャマ着用まで、あと10秒』

『リビングへの移動を開始します』




 ピキィッ。




 レオンの拳から、骨が軋む音がした。

 室温が急激に下がり、吐く息が白く凍りつく。


「……ミミちゃんが、上がった?」



 クリスティーナが、聖剣の柄をギリギリと握りしめる。革のグリップが悲鳴を上げ、ねじ切れる寸前だ。


「はぁ? あんた、何してくれてんの?」


 彼女の声は低く、地を這うような重低音だった。


「私のパパが構築した『超高速物流転送網』を遮断した? そのせいで、ミミちゃんの喉を潤す黄金の時間を……『0秒』から『数秒』に遅らせた?」


 彼女は顔を上げ、血走った目で魔王を睨みつけた。


「私の堪忍袋の緒はもう切れたわ。……その巨体、解体して売り払っても、損害額の足しにもならないのよォォォッ!!」



 ゼルが眼鏡を外す。

 その動作だけで、周囲の空気がカミソリのように鋭く尖る。


「……牧場へのルート閉鎖。到着遅延確定。フルーツ牛乳の温度管理エラー。――弁解無用」



 レオンが一歩踏み出す。

 ドォン。

 ただの足踏みで、城の床が粉砕された。


「魔法を封じた? ……そうか。ならば手加減は不要だな。魔力強化なしの――素の暴力――で、ただの肉塊として処理できる」




 肌を刺すような殺気。

 いや、それはもはや「物理的な圧力」となって魔王の巨体を押し返していた。


「な、なんだその気迫は!? 魔法は消えたはず……ひ、ひぃッ!?」




 魔王が後ずさる。

 三人が同時に構える。

 狙うは一点。魔王の土手っ腹。




「――怒りに任せた物理てっけん制裁ィィィッ!!!!――」

「――慰謝料代わりに……ちょっとジャンプしてみろやァァァッ!!!!――」

「――牛乳が発酵したらどうすんじゃァァァッ!!!!――」




 ズドォォォォォォォォォン!!!!!




 三者三様の罵声と共に、三つの蹴りが魔王の巨体にめり込んだ。

 肉が波打ち、衝撃波が内臓を駆け巡り、背中の外皮を突き破って空気を炸裂させる。


「ごふぁっ!? て、鉄拳……カツアゲ……発酵……意味が、わから……ぬぅッ!?」

「ま、魔王様ぁぁぁぁぁッ!!」




 キランッ!


 魔王と、巻き込まれたバグズは、物理法則を無視した速度で天井を突き破り、そのまま大気圏外の冷たい真空へと投げ出されていった。






 ――数分後。


 ミミの家のリビング。

 お風呂上がりの湿った空気が、ふわりと甘く漂う。

 ミミはほかほかのパジャマ姿でソファに座っていた。


「ふぅ〜、さっぱりしたぁ!」


 彼女の手には、表面にびっしりと水滴がついた、キンキンに冷えた――「特濃フルーツ牛乳」――の瓶。


「いただきまーす!」


 ミミは腰に手を当て、瓶を傾ける。

 トクトク、ゴク、ゴク……。

 喉ごしの良い冷たい液体が、乾いた喉を潤していく音が響く。


「……ぷはぁーっ! おいしー!」




 口元に白いヒゲをつけ、満面の笑みを浮かべるミミ。



 その屋根の上、魔導モニターの正面に正座しているレオン、ゼル、クリスティーナ、シャドー。


 彼らは無言でガッツポーズをし、静かに涙を流していた。




 星空には、一際明るく輝きながら遠ざかっていく――「二つの光」――が見えていた。






────────────────────

【裏トーク:至高のミミちゃんを見守る会(Online: 5)】


@公式カメラマン

ミミちゃん、牛乳完飲。口元の白ヒゲ、確認しました。

完璧なタイミングです。お疲れ様でした。


@氷結の獅子

ッ!!!!(絶句) ……神か。 あの上唇に残った白いアーチ……。 あれは世界を分かつ地平線だ。 国旗にしよう。今すぐあのデザインを国旗にする手続きをしてくる。


@新入り聖騎士

あーーーーん!! 可愛いィィィィ!! 何あの白いフワフワ! 雲!? 天使の羽!? もう無理! 尊すぎて心臓が痛い! あの牛乳になりたい! いや、あの牛乳を作った牛に全財産(500億G)寄付してくる!!


@課金は酸素

牧場の在庫もギリギリでしたね。

さて、ミミちゃんが歯磨きをして寝るまでが「推し活」です。

気を抜かないように。


@公式カメラマン

了解。……ところで。

空の彼方に飛んでいった「アレ」からの通信が、微弱ですがまだ拾えます。


@Demon_General_Bugs

……おぼえ……てろよぉぉぉ……!

いつか必ず……この屈辱を……!

親指立てて、溶鉱炉に沈む気持ちだぜ……ミミちゃん可愛い……ガクッ(気絶)


[System Alert] -----------------------------

User: @Demon_General_Bugs has been disconnected.

Reason: Out of Range (Space)


@氷結の獅子

……フン。宇宙のデブリになったか。

まあいい。今夜はいい夢が見られそうだ。

ミミちゃん、おやすみ。


(完)

【作者より】

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


物語はここで一旦終了ですが、英雄たちの推し活は永遠です。下の「☆」評価で、今後も応援していただけたらうれしいです


「至高のミミちゃんを見守る会」の皆様へのお知らせです。

本編はこれにて一区切りですが、ミミちゃんへの愛(と狂気)を英雄たちと共有できるWebアプリ(裏チャット体験)をご用意しました!プロフィールでアプリの仕様やWebアドレスをご紹介させていただいております。


【プロフィールはこちら】

https://mypage.syosetu.com/mypage/profile/userid/3015166/


ブラウザで動くので、ぜひ覗いてみてください。皆様の「ミミちゃん愛」を英雄たちにぶつけ合える場所になっています。 アプリの感想やご要望もお待ちしています!


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読んでくれてありがとう!.jpg

── あとりえむ 作品紹介 ──

監査の魔王 S級清掃員 地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 至高のミミちゃんを見守る会

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