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『家賃500Gの欠陥住宅』に住み始めたら、S級英雄たちが勝手に『聖域』認定して国家予算を溶かし始めた件 ~魔王軍が「推し活」の邪魔だと秒殺されていくのですが、私の勘違いでしょうか?~  作者: あとりえむ
【第二章】魔王軍続々襲来!?解釈違いの聖戦(レスバ)に巻き込まれて、いつの間にか伝説の演武を披露していました。

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第19話 四天王の鉄壁は、0.2秒で処理します

 王城、玉座の間。


 ギチ、ギチ、ギチ……。


 空間そのものが悲鳴を上げていた。

 磨き上げられた大理石の床が、見えない万力で締め上げられたように軋み、細かな石の粉を吐き出している。


 喉の奥に広がるのは、錆びた鉄を舐めたような血の味。

 鼻腔を蹂躙するのは、高密度の魔力がショートした際の焦げ臭さと、吐き気を催すほどの濃厚な獣の体臭だ。


「……人間ごときが、図に乗るなよ」


 玉座に座る魔王が指を鳴らす。

 その乾いた音だけが、やけに鮮明に鼓膜を叩いた。


「出よ。魔界のことわりを統べる『四天王』!」





 ドォォォォォン!!





 爆音と共に、空気が沸騰するような熱波が英雄たちの頬を撫でた。


 『不動』の玄武――腐葉土と湿った苔の匂いを放つ、山のような亀。

 『剛腕』の白虎――むせ返るような獣臭を漂わせる、筋肉の塊。

 『神速』の朱雀――鼓膜をつんざく高周波を纏った、凶鳥。

 『深淵』の青龍――皮膚がただれるような酸の刺激臭を撒き散らす、毒竜。


 バグズはガチガチと奥歯を鳴らしながら、腰を抜かした。

「ひぃ、あ……あぁ……伝説の……」


 四天王が一斉に咆哮する。

 その衝撃だけで、窓ガラスが粉々に砕け散り、破片が降り注ぐ。


 だが。


 対峙する英雄たち――レオン、クリスティーナ、ゼル。

 彼らは眉一つ動かさず、ただ無機質に、耳元のピアスへ指を這わせた。



「……障害物検知。進路妨害。破壊推奨。対象硬度、木綿豆腐。斬撃係数設定、最大」


 レオンの言葉には、一切の熱がない。



「……移動目標確認。遅延行為。あくびが出る。光速機動。すれ違いざまの風圧のみで粉砕処理」


 クリスティーナが、気怠げに聖剣の柄を握る革の感触を確かめる。



「……環境汚染源を確認。衛生法違反。直ちに殺菌。漂白。空間ごと削除。ゴミ箱へ移動」


 ゼルは変わらず不機嫌そうに呟く。




 三人の声が、完全に重なった。


「「「――『送信エンター』――」」」





 キィィィィィィィン――――……!!!


 世界から「音」が吸い出された。


 レオンが腕を振るった、その残心が空気を切り裂く音だけが響く。

 遅れて、ズズンという重い地響き。

 『不動』と『剛腕』を誇った玄武と白虎が、背後の城壁ごと、左右へスライドするように崩れ落ちる。


 切断面は鏡のように滑らかで、血の一滴すら流れる暇を与えなかった。




 パァン!!


 乾いた破裂音。

 クリスティーナが元の位置に戻った時には、空中の朱雀は赤い霧となっていた。

 生温かい霧が、霧雨のようにパラパラと降り注ぐ。




 シュワワワワ……。


 炭酸が抜けるような音と共に、鼻を突く塩素の匂い。

 ゼルが指を鳴らした空間だけが「白く」なり、青龍の猛毒も、その巨体も、黒いシミ一つ残さずに漂白されていた。




 ――静寂。




 所要時間、0.2秒。

 伝説と呼ばれた四天王は、断末魔すら上げられず、ただのデータとして処理された。


 カツ、カツ、カツ……。


 英雄たちは足すら止めていない。

 彼らが通った後には、清涼な風だけが吹き抜けていく。


 呆然と座り込む魔王の横を、彼らは「そこに誰もいないかのような無関心さ」で歩き去っていった。






────────────────────

【裏トーク:至高のミミちゃんを見守る会(Online: 5)】


@氷結の獅子

……ふぅ。処理完了。

今の亀、硬度設定ミスじゃないか?

手応えがなさすぎる。スーパーで売ってる木綿豆腐の方が、まだ包丁を入れた時に抵抗があるぞ。


@新入り聖騎士

えー? そう?

私の担当(鳥)、止まって見えたんだけどラグ?

畑に立ってる案山子かかしの方が、もっと風情があっていい動きするわよ?


@課金は酸素

レオンさん。そういえば「虎」がいませんでしたか?

亀の横に、物理最強の。


@氷結の獅子

ん? ああ。

豆腐を切るついでに、パッケージごと切ったから気づかなかった。

毛皮ラグマットにしては安っぽい手触りだったな。


@課金は酸素

そうですか。では可燃ゴミですね。

私のドラゴンの殺菌処理も完了しました。

まったく、生鮮食品売り場(予定地)にカビを持ち込まないでいただきたい。

次からは入店拒否リストに追加しておきます。


[System Alert] -----------------------------

User: @Demon_General_Bugs is screaming.

Status: SAN Check Failed


@Demon_General_Bugs

……あ、あ、あ……

嘘だろ……? 魔界の伝説が……

詠唱ですらない……「送信エンター」って……?

お前ら、ここをゴミ箱か何かだと思ってんのか!? 命だぞ!? 生き物の命だぞ!?


@氷結の獅子

うるさいな、バグズ。

我々にとって、今は「1分1秒」が惜しい。

四天王の長口上を聞いている暇があったら、フルーツ牛乳の賞味期限を確認したいんだ。


@Demon_General_Bugs

牛乳のために殺したのかよォォォォ!!

理不尽すぎるだろ!!


@課金は酸素

さて、障害物は排除しました。

残るは、そこに座っている「石ころ(魔王)」一つですね。

レオンさん、躓かないように蹴飛ばしておいてください。


@氷結の獅子

了解した。邪魔だ、どけ。


@Demon_General_Bugs

魔王様ーーーッ!! 逃げてーーーッ!!

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読んでくれてありがとう!.jpg

── あとりえむ 作品紹介 ──

監査の魔王 S級清掃員 地球の『受理』を以て、僕の存在を証明する。 至高のミミちゃんを見守る会

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