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『家賃500Gの欠陥住宅』に住み始めたら、S級英雄たちが勝手に『聖域』認定して国家予算を溶かし始めた件 ~魔王軍が「推し活」の邪魔だと秒殺されていくのですが、私の勘違いでしょうか?~  作者: あとりえむ
【第二章】魔王軍続々襲来!?解釈違いの聖戦(レスバ)に巻き込まれて、いつの間にか伝説の演武を披露していました。

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第15話 深呼吸は、世界を飲み込む予備動作

 翌朝。

 昨夜の「嵐」が嘘のように、空は突き抜けるような青色だった。


 ミミは庭に出て、大きく伸びをした。

 ひんやりとした朝の冷気が、パジャマ越しの肌を撫でる。

 肺いっぱいに吸い込むと、雨上がりの森特有の、湿った腐葉土と若葉が混じった香ばしい匂いが鼻腔をくすぐった。


「んーんっ! 空気がおいしい!」




 健康のためには、毎朝の運動が欠かせない。

 ミミは、昔読んだ「異国の絵本」に載っていた、あの運動を思い出した。


「よしっ、久しぶりにあれをやろう! えーっと……」



 ミミは足を開き、誰もいない庭に向かって姿勢を正した。




「――『古代健康儀式ラ・ジオ』――、第一!」




 ミミは神妙な顔で、儀式の構え(ただの直立不動)を取った。


「まずは~、背伸びの運動から! はいっ!」


 いち、に、さん、し。

 腕を高く突き上げる。


 その背後。

 魔王軍直属の暗殺部隊長、ゼファー。

 彼は完全に透明化し、指先を構えていた。


(俺の『真空魔法エア・ヴォイド』で、その細い首の周りの酸素を抜き取ってやる。悲鳴を上げる間もなく、窒息して死ぬがいい……!)




 彼が魔法を発動しようとした、その瞬間。





「つぎは~、深呼吸の運動~! 世界を吸い込むイメージで~!」





 ミミが両腕を広げ、スーッ……と息を吸い込む。




 ゴウッ!!!!




「なっ……!?」


 風が、逆流した。

 いや、風だけではない。周囲のマナ、酸素、空間そのものが。

 恐ろしい引力で少女の口元へ収束していく。


(ば、バカな!? 俺の真空魔法が……吸い込まれる!?)


 ヒュッ、とゼファーの肺から空気が強制的に引き剥がされる。

 呼吸ができない。魔力が練れない。


 目の前の少女は、ただ「吸っている」だけなのに。

 まるで――ブラックホール――のように、森のすべてを飲み込んでいく。


「……はいて~!」




 ふぅーっ。




 ミミが吐き出した息は、キラキラと輝く光の粒子となって森へ還っていく。




 ドサッ。




 その神々しい光景の裏で、酸欠になったゼファーは白目を剥いて地面に崩れ落ちた。

 全身を痙攣させ、奇妙に手足を捩じらせている。


(……こ、これが……予備動作、だと……? この『儀式』が完成したら……世界が、消える……)




 ミミは足元の音に気づき、不思議そうに首を傾げた。


(……ん? あそこの茂み、誰かいる?)


 この森での生活で研ぎ澄まされたミミの『気配察知』能力が、倒れ伏す男の存在を正確に捉えていた。

 男は白目を剥き、苦悶の表情で奇妙なポーズのまま固まっている。


 だが、ミミの天然フィルターは、それを極めて平和的に翻訳した。




「あ、そっか! あの人は――『ヨー・ガ』――をしてるんだ!」




 異国の健康法。

 地面に寝転がって大地のエネルギーを感じる、シャバなんとかのポーズに違いない。

 そういえば、苦しそうな顔をしているのも、きっとストレッチが効いている証拠だ。


「うんうん、今日は運動日和だもんね! 私も負けてられないな!」


 ミミはニコニコと、気絶寸前の暗殺者に手を振ると、次の運動へと移るのだった。





 ――その頃。

 英雄たちが「通知OFF」のままミミの体操に見惚れている隙を突き。

 王都の上空は、ドス黒い闇に覆われていた。




『……我を無視するとは、いい度胸だ人間ども』




 昨夜の警告通り出現した――魔王(本体)――率いる親衛隊一万。

 S級英雄不在の王城は、今まさに紅蓮の炎に包まれようとしていた。






────────────────────

【裏トーク:至高のミミちゃんを見守る会(Online: 5)】


@公式カメラマン

吸った。


@氷結の獅子

吸ったな。


@公式カメラマン

今の胸郭の広がり。肋骨の浮き沈み。

完璧な黄金比です。8Kスローモーションで共有済み。


@課金は酸素

調整完了です。

不純物を除去し、酸素濃度を「最も美味しく感じる比率」に最適化しました。

真空魔法を使ってきた不届き者がいたので、そいつの分の酸素も全部ミミちゃんの方へ回しておきました。


[System Alert] -----------------------------

User: @Demon_General_Bugs joined automatically.


@Demon_General_Bugs

……は?

真空魔法が、深呼吸ひとつで無効化……?

お前ら、あの子にどんな改造手術を施したんだ……。

部下のゼファーが、肺を真空パックにされて白目を剥いてるぞ……。


@氷結の獅子

おい虫。お前また来たのか。

懲りずに我々の聖域チャットに顔を出すとは、また貧乏生活を晒されて社会的に死にたいらしいな。


@Demon_General_Bugs

くっ……! 言わせておけば!

それより見ろ!

魔王軍の精鋭ゼファーが、ただの体操教室の生徒みたいにポーズを取り始めたぞ……あいつ、完全に洗脳おちたな……。


@新入り聖騎士

ねえ、それより!

今のミミちゃんが「ふぅーっ」って吐いた息!

言い値で買うから!!

1リットル1億G出すわよ!!


@課金は酸素

……クリスティーナ様。

直後に光合成で森に還元されましたので、今はマイナスイオンになっていますね。


[System Alert] -----------------------------

Air Quality: DIVINE (Contains Mimi's Breath)

Effect: Instant Healing & Purification


@新入り聖騎士

ああああん! 私の聖なる二酸化炭素がぁぁぁ!!

森の木になりたい!!

今すぐ私を光合成できる植物に転生させて!!


@氷結の獅子

落ち着け。

まだ「第一」だぞ。

これからさらに尊い動きが来る。


@公式カメラマン

……次、来ます。

「手足を曲げ伸ばす運動」です。

ローアングル、固定。


[System Alert] -----------------------------

EMERGENCY WARNING

Royal Capital is under attack by [Demon King].

Estimated damage: Catastrophic.


[System Alert] -----------------------------

EMERGENCY WARNING……


[System Alert] -----------------------------

EMERGENCY WARNING……


@氷結の獅子

あぁ!? なんでまだ出やがる!!

さっき「通知OFF」にしたはずだぞ!!

赤い警告ウィンドウのせいで、ミミちゃんの膝小僧が見えんだろうが!!


@課金は酸素

……チッ(舌打ち)。

どうやら「世界崩壊レベル」の緊急アラートは、通常のミュート設定を貫通して表示される仕様のようです。

本当に空気の読めない魔王ですね。


@氷結の獅子

知るか!! 俺の端末に「ミミちゃんより重要な通知」など存在しない!!

ゼル、ルート権限で強制削除キルしろ!!


@Demon_General_Bugs

え、ちょ、待て。

通知を消すな、現実を見ろ!

俺のボス(魔王様)、本当に出ちゃったんだぞ!?


@新入り聖騎士

うるさいうるさい!!

今は屈伸の時間なのよおおおおおお!!

通知、強制OFFッ!!

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