第13話 無自覚な殲滅園芸(ガーデニング)と、追従する段ボール
翌日の昼下がり。
庭には、雨上がりの湿った黒土の匂いと、若草の青い香りが立ち込めていた。
ミミは腕まくりをして、地面にしゃがみ込んでいた。
爪の間に冷たい砂が入る、ザラリとした感触。
「ふぅ……。精霊さんたち、いつもお掃除してくれてるから。今日くらいは私が頑張らないとね!」
ミミの後ろには、頼もしい相棒が控えている。
ウィィィン……ガシャン。
昨日進化した――「魔導段ボール(自律駆動ロボモード)」――だ。
ミミが動くたびに、まるで忠犬のように背後をついてくる。
「ありがとう、ロボさん! えーっと、次はこれかな?」
ミミの視線の先に、一本の奇妙な「雑草」があった。
紫色の葉脈がドクドクと脈打ち、地面にへばりつくように根を張っている。
(うーん、なんだか強そうな雑草……。根っこが深そう)
ミミは茎を両手で掴んだ。
植物が「キチチチ……」と嫌な音を立てて抵抗した気がしたが、ミミは気にせず腰を入れた。
「んーーっ、よい、しょぉぉぉぉッ!!」
ブチブチブチブチィィィッ!!!
地面が揺れた。
ミミの手には、自身の身長よりも長い、のたうち回る根っこが握られていた。
「わあ、すっごく長い! 大物だぁ!」
ミミが無邪気に喜んでいる、その数キロ先。
ズガァァァァァァン!!
黒い煙がモクモクと上がる。
「えっ? 今の音……雷かな?」
ミミはキョトンとして空を見上げたが、雲ひとつない快晴だ。
ウィィィン。
段ボールロボが「気にせず作業に戻りましょう」と言わんばかりに、ゴミ袋を差し出した。
「そうだね! お掃除の続き、頑張ろう!」
彼女は知らない。
今引き抜いたのが、魔王軍の前線基地へ魔力を送る「大動脈」であり。
その遮断によるエネルギー逆流で、基地の一つが壊滅したことを。
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【裏トーク:至高のミミちゃんを見守る会(Online: 4)】
@公式カメラマン
抜いた。
@氷結の獅子
抜いたな。
@公式カメラマン
録音完了。
今の「よいしょぉぉ!」の語尾の伸び、120点。
波形が美しい。
@課金は酸素
物理的な種明かしをしましょう。
1. シャドウが0.01秒前に地中の根元を切断済み。
2. ロボがアームから「超音波振動」を発し、土壌を一時的に液状化させた。
開発者(私)の勝利ですね。
@新入り聖騎士
ちょ。アレ、爆発とかどうでもいいのよ!
ミミちゃんが今捨てた、その「紫の草」!
@新入り聖騎士
それ、魔界深層の『魔導繊維・原種』!!
あれでミミちゃんの「最高級ふわもこパジャマ」を特注で作る予定だったのよ!?
捨てないで!! ロボのゴミ袋に入れないでぇぇぇぇ!!
@課金は酸素
あ。
ロボの自動焼却機能、作動しました。
@新入り聖騎士
ぎゃああああああああ!!
私の夢がぁぁぁぁ!!
@公式カメラマン
……おや。ミミちゃん、仕上げにジョウロを取り出しました。
@課金は酸素
タンクの中身、最高純度の――「聖水」――を入れておきました。
水道水だとカルキで手が荒れるので。
[System Alert] -----------------------------
Alert: High-Concentration Holy Mana Detected.
Terrain Status: PURIFIED (Garden of Eden Mode)
Value: Unmeasurable
@新入り聖騎士
……は?
一瞬で焼け野原が、光り輝くお花畑になったんだけど。
@氷結の獅子
当然だ。
ミミちゃんが歩いた後は、すべてが聖地となる。
@課金は酸素
……おや。団長、クリスティーナ様。
来ますよ。
[System Alert] -----------------------------
WARNING: Massive Hostile Force Detected.
Enemy Count: 10,000+ (Demon Lord Army Main Force)
Status: ENRAGED
@公式カメラマン
……どうやら、パイプを引き抜かれて本気でキレたようですね。
地平線が黒く埋め尽くされています。
@氷結の獅子
ふっ。
ちょうどいい。最近、チャットとストーキングばかりで体が鈍っていたところだ。
おい、野郎ども。
――行くぞ。蹂躙の時間だ。




