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『家賃500Gの欠陥住宅』に住み始めたら、S級英雄たちが勝手に『聖域』認定して国家予算を溶かし始めた件 ~魔王軍が「推し活」の邪魔だと秒殺されていくのですが、私の勘違いでしょうか?~  作者: あとりえむ
【第一章】S級英雄たちの過保護が加速して、欠陥住宅(標本箱)が世界一安全な聖域になりました。

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第11話 静寂の殺戮庭園と、鋼鉄の箱入り娘

 その日の深夜。

 森は、恐ろしいほどの静寂に包まれていた。


 奥の寝室。

 ミミは今日も、部屋の半分を埋め尽くすほど巨大な「王家御用達の最高級ベッド」を頑なに避け。

 その隅っこに置かれたボロい段ボール箱の中で丸まって眠っていた。


「むにゃ……お魚……焼けてる……」


 ミミが可愛らしい寝言を言いながら、コロンと寝返りを打つ。



 重力が彼女の体をわずかに浮かせた、そのコンマ数秒の世界。




 ――時が、止まる。




 影が走った。

 それは物理的な速度を超えた、職人ごときの神速。


 ミミの下にあった古い紙箱が「存在しなかった」かのように消え去り。

 代わりに鈍い魔導の輝きを放つ「揺り籠」が、ミクロン単位の誤差もなく滑り込む。


 ふわり。


 着地したミミは、入れ替わったことにすら気づかない。

 ただ、新しい箱の吸い付くような感触に「ふにゃ……」と頬を緩め、さらに深い安らぎへと落ちていった。


 数分後。

 庭の暗闇に、鼻を突くような硫黄の腐臭が漂い始める。

 重い鎧が擦れ合う、不快な金属音。


 魔王軍先遣隊、五人の精鋭(自称)が敷居をまたいだ。


「ここか……宿敵が潜むという、呪われた館は」


 リーダー格の魔族が、ガラス張りの家を見て鼻で笑う。


「愚かな。結界どころか、壁一枚すらありはしない。我ら魔界の精鋭を前に、あまりに無防備――」




 彼が、その「無防備な庭」に三歩目を踏み出した、その瞬間。




 『――排除シマス』



 どこからともなく、無機質な駆動音が響いた。





 ――ドォォォォォォォォン!!





 夜の静寂を無惨に切り裂く、凄まじい爆発音。

 地中に埋設されていた『対軍用極大殲滅地雷』が火を吹いたのだ。


 巨大な火柱が夜空を焦がし。

 魔族たちは悲鳴すら上げられず、その慢心ごと文字通り「爆散」して夜風に溶けた。


 だが、奇跡のような光景があった。

 これほどの轟音と衝撃があったにもかかわらず、ガラス張りの家は微動だにせず、音一つ漏れていない。


 ミミはただの一度も目を覚ますことなく、幸せそうな寝息を立て続けていた。




 翌朝。

 ミミは、朝陽の暖かさで目を覚ました。


「ふぁ……あ、よく寝たぁ……」



 ミミが「うーん!」と大きく背伸びをした、その時だった。




 ウィィィン、ガシャンッ、ガコォォォン!




「ひゃうっ!?」


 ミミの動きに反応し、段ボールが重厚な機械音を立てて激しく変形を始めた。

 側面から装甲板が展開し、内蔵された空調が最適な温度の風を送り始める。


「わあぁ……! 昨日の箱が、ロボットになったぁ!」


 ミミは目を丸くして、ハイテク化した箱の壁をペタペタと触る。


「やっぱり施工ミス物件はすごいや! 寝てる間に進化しちゃった! ラッキー!」


 ミミは上機嫌で、新しくなった──「魔導段ボール(変形モード)」──を抱え、ひょいと庭へ飛び出した。


 そこでミミの足が止まる。


(……あれ? なんだかお庭が、すっごく綺麗……)


 昨日まで転がっていた石ころ一つ、枯れ葉一枚落ちていない。


「お掃除の精霊さんも、夜中に頑張ってくれたのかなぁ。ありがとう、精霊さん!」




 ミミは感謝を込めて空に手を振った。


 その「精霊」たちの正体が。

 昨夜、魔王軍を粉砕し、徹夜で庭の芝生を原子レベルで整地した騎士たちだとは。


 彼女は、知る由もなく。






────────────────────

【裏トーク:騎士団の秘密チャットログ】


SERVER:至高のミミちゃんを見守る会(Online: 4)


[2:00 AM - ミミの睡眠中]


@氷結の獅子

おい、見たか。今ミミちゃんが「おしゅし……」って言ったぞ。

この発音の柔らかさ、王国の音響言語学者が一生かけても到達できない至高の響きだ。国宝に指定しろ。


@課金は酸素

来ますよ。寝返り、カウントダウン。

三、二、一……今です!


@氷結の獅子

キターーーー!!

コロンといったぞ!! 丸まったぞ!!

この無防備な回転! 惑星の自転より美しい軌道を描いたぞ!!


@課金は酸素

……シャドウ(公式カメラマン)ですね。

あいつ、本当に寝返りの0.1秒に合わせて「魔導段ボール」の換装をやりやがった。

ミミちゃん、箱が入れ替わったことにすら気づかず、新しい最高級防振クッションに「ふにゃ……」って頬ずりしてます。


[2:15 AM - 魔王軍接近]


[System Alert] -----------------------------


WARNING: Perimeter Breach Detected.


Hostile Entities: 5

Threat Level: D (Insect)


@氷結の獅子

ゴミ掃除の時間か。

ミミちゃんの黄金の安眠を妨げる不敬者に、慈悲など不要だ。

地雷の出力を最大にしておけ。塵も残すな。


(……ドォォォォォォォォン!!)


@新入り聖騎士

ちょ、ドカンといったわね。

……うわ、今の爆発でミミちゃんが起きちゃうんじゃない!?


@課金は酸素

防音壁と耐震魔法は、先ほどシャドウが段ボールに仕込んだ追加モジュールと完全に同期しています。

ミミちゃんの夢の中では、今、心地よい小鳥のさえずりが流れているはずです。


[2:20 AM - シャドウ合流]


@公式カメラマン

……ただいま戻りました。

業務報告。害虫駆除、完了しました。

ゼノ(課金は酸素)、あとは重力魔法で原子レベルまで整地しておけ。


@公式カメラマン

ミミちゃんの体温が、新素材に馴染む際の沈み込みは正確におよそ3.2ミリ。

まさに天使が雲の上に降り立ったかのような質感でした。

当然、最高画質スローモーションで記録済みです。


@課金は酸素

……あー、世界を滅ぼすための重力魔法が、庭掃除に使われて泣いている……。


[7:30 AM - 起床直後]


@氷結の獅子

起きた!! ミミちゃんが起きたぞ!!

背伸びをした!! ああッ、その瞬間、段ボールが変形トランスフォーム!!

我々の愛(予算)が形になったぞ!!


@課金は酸素

……フッ。

あの変形音の重厚感にはこだわりましたからね。

ミミちゃんの「ラッキー!」という言葉一つで、先ほど溶かした予算(高級住宅3軒分)の半分はペイされました。


@公式カメラマン

……ミミちゃんが庭の「綺麗さ」に気づきました。

昨日届いた魔王軍の脅迫状を『不要なゴミ』として手にしながら、お礼を言うために「空」を見上げています。

この角度……100億Gの価値がありますね。


@氷結の獅子

お掃除の精霊さん、か。いい響きだ。

お前ら、ミミちゃんに降りかかるゴミは1mmも残すなよ

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