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『家賃500Gの欠陥住宅』に住み始めたら、S級英雄たちが勝手に『聖域』認定して国家予算を溶かし始めた件 ~魔王軍が「推し活」の邪魔だと秒殺されていくのですが、私の勘違いでしょうか?~  作者: あとりえむ
【第一章】S級英雄たちの過保護が加速して、欠陥住宅(標本箱)が世界一安全な聖域になりました。

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第10話 無自覚な感謝と、英雄たちの敗北(第1章完結)

 その日の深夜。

 森は、耳が痛くなるほどの静寂に包まれていた。


 ガラス張りのリビング。

 ミミは両手で包み込んだマグカップから立ち上る、甘い湯気を吸い込んだ。


 暖炉の魔石がチロチロと燃える音だけが、心臓の鼓動のように響く。


「……あったかい」


 独り言がこぼれ落ちたその口を、ミミはすぐにカップで塞いだ。

 熱い液体が喉を通り、胃の中に落ちていく感覚。


 ここに来て、まだ数日。

 思い返せば、この家は「異常」なことばかりだった。



 あのベッドで溺れかけた時の、肺を押しつぶされるような窒息感。

 行商人の前で感じた、口の中に鉄の味が広がるほどの殺気。

 川で流したはずのハンカチが戻ってきた時の、火傷しそうなほどの熱さ。



 どれも、常識では考えられない。

 肌が粟立つような、正体不明の「何か」が、常に私の周りを取り囲んでいる。


 けれど。




(不思議……。前より、怖くない)




 ミミは自身の変化に気づいていた。


 ミミの猫耳が、ピクリと動く。

 風の音。葉擦れの音。遠くで虫が這う音。

 それらの情報が、まるで水が染み込むようにクリアに脳に入ってくる。


 肌に触れる空気の流れの中に、「視線の糸」のようなものを感じるのだ。


(あ……わかる。あそこと、あそこと、あそこ)



 ミミは無意識のうちに。

 森の闇の中に潜む「気配」の場所を、正確に特定していた。


 それは、英雄たちの強烈すぎる魔力に晒され続けた結果、ミミの防衛本能が過剰適応し――。


 ――『超高感度の気配察知スキル』――が開花し始めている証拠だった。


 だが、天然なミミはこう解釈する。


(私も少しは、冒険者として成長できたのかな。森の空気に馴染んできたみたい)


 ミミは窓辺へと歩み寄った。

 ガラスの向こうは、インクを流したような漆黒の闇だ。


 そこには誰もいないはずだ。



 けれど。

 ミミには見えていた。



 闇の奥、およそ50メートル先の巨木の枝。

 そこに設置された、隠蔽魔法付きの監視カメラのレンズの、針の穴ほどの輝きが。




「そこに、いるんだよね?」




 ミミは迷うことなく、そのレンズと「目」を合わせた。

 視線が、空間を超えて交差する。


「私、ドジだし、弱虫だし、ここも欠陥住宅で……変なことばかり起きるけど」


 ミミはそっと、ひんやりと冷たいガラスに掌を合わせた。


「でも、みんなが見守ってくれているから。ここは世界で一番、安心できる場所だよ」




 彼女は確信した。

 この家に住み着いているのは、お化けなんかじゃない。

 きっと、不器用で、ちょっとやりすぎちゃうくらい優しい、森の精霊たちだ。


 ミミは目を細め。

 カメラのレンズの奥にいる「誰か」に向かって。





 花が咲くような――満面の笑顔――を向けた。





「ありがとう。見えない精霊さんたち」




 その笑顔は。

 何の曇りもない純粋な感謝の結晶。


 そして同時に。

 隠れ潜む者たちを正確に射抜く、無自覚な「強者」の眼差しだった。






────────────────────

【裏トーク:騎士団の秘密チャットログ】


SERVER:至高のミミちゃんを見守る会(Online: 4)


@氷結の獅子

あ゛


@公式カメラマン

目が

目が合った

俺を見た?

レンズ越しに?

目が

あああああ


@新入り聖騎士

精霊

そう、私は精霊。

今日から私の種族名は妖精フェアリー

人間辞めます。

質量とかもういらない。

概念になって彼女の周囲を漂う光になりたい。


@課金は酸素

Emergency Alert.

脳内メモリ使用率1200%突破。

処理落ちします。

笑顔の輝度が……致死量を……超えて……。

あは……神々しい……。

網膜に焼き付いて……消えない……。


@氷結の獅子

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!!!!!!!

(言語中枢崩壊)


[System Alert] -----------------------------

User: @氷結の獅子 has donated 500,000,000 G.

User: @氷結の獅子 has donated 500,000,000 G.

User: @氷結の獅子 has donated 500,000,000 G.

User: @氷結の獅子 has donated 500,000,000 G.

User: @氷結の獅子 has donated 500,000,000 G.


@公式カメラマン

団長がバグった。

だがわかる。俺もだ。

この笑顔の前では、金など紙切れですらない。


@新入り聖騎士

ありがとう……。

見つけてくれてありがとう……。

私、生きててよかった……。

(遺言)


[System Alert] -----------------------------

User: @新入り聖騎士 has logged out. (Reason: Ascended / 物理的に昇天)


@課金は酸素

ダメだ、サーバーが耐えきれない。

私の心臓も耐えきれない。

録画データ……クラウドと……物理メディアと……石版に……バックアップ……完りょ……。


[System Alert] -----------------------------

User: @課金は酸素 has logged out. (Reason: System Crash / 尊死)


@公式カメラマン

視界が……白い……。

これが……光か……。

ミミちゃん……あ……りが……と……。


[System Alert] -----------------------------

User: @公式カメラマン has logged out. (Reason: Purified / 浄化消滅)


@氷結の獅子

すき

けっこん


[System Alert] -----------------------------

User: @氷結の獅子 has logged out. (Reason: Vital signs lost / 心停止)




 その夜。

 王国の裏側を牛耳る最強の戦力たちが、たった一人の少女の笑顔によって全滅した。


 だが、この平和な時間は長くは続かない。


 翌朝。

 目覚めたミミがポストを開けると、そこにはドス黒いオーラを放つ禍々しい封筒が突き刺さっていた。



『魔王軍第三師団長より、我が宿敵へ告ぐ』



 それは。

 新たな「勘違い」と、さらなる「狂気」の幕開けだった。


(第1章 完/第2章へ続く)


【作者より】

第1章を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


ミミちゃんの無自覚な成長と、英雄たちの敗北(全滅)を楽しんでいただけた方は、下の「☆」評価で応援していただけたらうれしいです


「至高のミミちゃんを見守る会」の皆様へのお知らせです。

ミミちゃんへの愛(と狂気)を英雄たちと共有できるWebアプリ(裏チャット体験)をご用意しました!プロフィールでアプリの仕様やWebアドレスをご紹介させていただいております。


【プロフィールはこちら】

https://mypage.syosetu.com/mypage/profile/userid/3015166/


ブラウザで動くので、ぜひ覗いてみてください。皆様の「ミミちゃん愛」を英雄たちにぶつけ合える場所になっています。 アプリの感想やご要望もお待ちしています!

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