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週末。

俺たちはとある場所で待ち合わせをしていた。


「お〜、やっときたか」


待ち合わせ時間から数分過ぎたのち、小走りでこちらに向かってくる由紀の姿が。

触っていたスマホをポケットにしまい彼女を迎える。


「ご、ごめんなさい……ちょっと、支度に手間取っちゃって」


「いやいや、数分くらいなんともないから大丈夫」


少し呼吸を乱す由紀は息を整えるように一度ゆっくり深呼吸。

一息ついてから、徐に俺の方を向いてきた。


「な、なんだ?」


「いえ……その」


少し控えめに視線を逸らしながら、コートを揺らす。

ああ、なるほど。


「とっても似合ってるぞ」


「そう…?…ありがと」


照れ臭さを誤魔化すように由紀は素っ気なく振る舞う。

冬の気候にしては珍しくちょっと晴れ間のある暖かい今日日。彼女の服装はコートの下にブラウンのオーバーサイズニットにワイルドサイズのブラックパンツとの組み合わせてモノトーン系に仕上げてきた。どちらかと言えば、かわいいよりカッコいい系である。


やっぱ……改めて思うけど美人だよなぁ…

芸能人と間違われても不思議ではないくらい。


「まあ、それなら支度に時間がかかっても仕方ないよな」


俺がうんうんと頷きながらそう言うと、ジトーとした視線を向けながら、「アドバイザーが使い物にならなかったのよねぇ…」とぶつぶつ呟いていた。


アドバイザーもいるなんて……さすが由紀である。


「じゃあ、さっそく先輩の服を探しに行こうか。由紀、先輩の服のサイズ聞いてある?」


「聞いたけど……これって、福城先輩にも来てもらって試着しながらの方が良かったんじゃない?」


「確かにその通り。だが、俺たちに残された時間は残りわずかだ。1日も無駄になんてしてられない。てことで、今日は二手に分かれて行動してる」


「そうなの?」


「ああ、実は今日、福城先輩には相永と一緒に清楚レッスンをしてもらってる。ぶっちゃけ、見た目は二の次で1番大事なのは福城先輩に常時清楚な心を持ってもらうこと。見た目を完璧にしても口調や態度でボロが出たらなんの意味もないからな」


「確かにそうね……」


由紀もそれには同意なのか深く頷いた。


「だから、今回は清楚レッスンを優先してもらってる。服装はまあ……サイズさえ合ってればどうにかなるだろ。今回に至っては先輩に似合う服を買おうってわけじゃないし、もしイマイチだったとしても最悪一林がメイクでゴリ押ししてくれる」


「ととの負担が凄いことになりそうね……あとで文句言われるかも……」


由紀が言う《《とと》》は一林のことだが、まあ今度会う時になにか差し入れを持っていくことにしよう。


「えっと……無線機とかはネット注文したし……やっぱ、今日は洋服だけで大丈夫だな」


「無線機??そんなの何に使うの?」


「当日の監視のためにちょっとな。トラブルが起きたら対処しなければならないし」


「それは確かにそうかもだけど、それってスマホでよくないかしら……?」


「……………」


「ゆ、幸成?」


「スゥ…………よくない。うん……」


ほら、電話料金とか?

充電とか?いろいろかかっちゃうし?


「やらかしたのね……?」


「いや……やらかしてない」


ここで認めてしまっては自腹を切った意味もなくなるということ。

もう、これは済んだものとして考えないようにしなければ。


「よし!洋服選びをするぞ!由紀、ちなみに俺はそういうの全然詳しくないから任せた!」


「はぁ……そう言うと思ったわ。だって、幸成のセンスがないことなんて、私、知ってるもの」


ため息を吐いて歩き出す由紀。

おかしいな……プライベートで待ち合わせするのは今日が初めてなのになんで知ってるんだ?と首を傾げつつも由紀の後についていくのだった。



「これで……アクセサリーも買ったわけだし、もうこのくらいでいいでしょう…」


「ふはぁ……思ったよりも結構時間かかったなぁ‥」


あれから一緒に福城先輩の服装を吟味していたのだが、由紀の拘りは俺が思っている以上につよかった。


いやはや……まさか2時間かかるとは思うわけないですやん。


「もうお昼時ね……この後だけど……とうする?」


俺の前を歩いていたら由紀がピタリと立ち止まりそんなことを聞いてきた。


「どうするって?」


「だから……もう一応、その……買い物は終わったわけだし…」


なるほど、つまり解散にするかもう少し遊んでいくかの2択ということか。


「う〜ん、どうしよっかなぁ。俺はどっちでもいいけど由紀はどうしたい?」


「私も別に……どっちでもいいわ……」


うん、その顔はどっちでもよくないね。


ツーンと気にしない素振りを頑張って見せてはいるが期待感が隠しきれてない。

そんな由紀を見ながら肩をすくめる。


「………腹が減ったし、取り敢えずランチに行こうか。その後はおいおい考えるとしてさ」


「わ、私は別にそれでもいいけど」


「そうか。よし、なら行こう」


「ええ」


少し声を弾ませた由紀が隣に並んでくる。

どうやら、ご満足いただけたようだ。


「なに食べたいとかある?」


「ええと、それなら……」


と言ってスマホを見せてきた由紀。

そこには、近辺の有名店がずらりと並んでいた。


いや、食べる気満々だったじゃん……


内心で盛大にツッコミながらも彼女とお店を決めていく。

この後、結局ランチだけでは済まず夕方まで彼女に付き合うことになったのだった。

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