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「諸君、今日はよく集まってくれた」
「だからどうして、部室を使うんですか?轟部長ホントに怒られちゃいますよ」
放課後に集った作戦決行メンバー。
そのなかの相永が呆れた様子で言葉を吐く。
「大丈夫!顧問の寄越先生は、出張のため不在!つまり、部室を使っててもバレない」
「それ……後で告げ口されたら終わるんじゃない?」
「…………こほん。話を続けようか」
「いま、思考放棄しましたね」
「したわね」
ちょっと外野が騒がしいなぁ…
大丈夫バレないよ、きっと……多分
だんだん不安になってきたので後のことは考えないことにした。
まあ、なんかあったらキタ部長に土下座しに行けばいいし。
「改めて、今回は作戦発表会に集まってくれて感謝する。今日のうちにある程度固めたいから疑問点とかあれば積極的に言ってくれると嬉しい」
「わかったわ。それで……肝心の福城先輩はどこなの?」
「主役が見当たりませんが」
「もうちょっとで……来るはず。一応、連絡はしたし」
こんな日に近くなど勘弁してほしいがそれを含めて福城先輩だと言うことを忘れてはいけない。
「悪ぃ、おくれた」
そんなことを考えているとタイミングよく福城先輩がやってきた。
「未開先輩にバレませんでしたか?」
「ああ、アイツは2次試験に向けて家で勉強してる。だから、学校には来てない」
「そうですか。なら、よかったです」
もし学校にいたら、一発でバレてた可能性あったよな。なんたって、福城先輩だし。
「で?今日は作戦発表と聞いてきたが……三末。大丈夫なんだよな」
「絶対とは言い切れませんけど、高い確率で成功すると思います」
「わかった。じゃあ、さっそく聞かせてくれ」
「はい。今回、俺が考えた作戦は一言で言うと福城先輩清楚化計画です」
「清楚化?」
「計画?」
「なんだそれ?」
3人揃って首をかじけられた。
まあ、これだけ聞いたらそうだよな。
「このままだとわからないと思うので詳しく説明しますね。端的に言えば、先輩の見た目をあのチャットのキャラそっくりに仕上げて未開先輩とデートさせようという計画を立ててます」
「福城先輩を清楚にするの?」
「ああ、話したと思うけど未開先輩が好きなのは猫を被った清楚な福城先輩だ。そのまま行っても違和感が拭えないだろ?だから、ファッションとかメイクとか口調とかを全て未開先輩の理想に極限まで近づけるんだ」
「なるほど…」
「それで、デート中に小出しにと城先輩風味を出していく。例えば、口調を戻すとかな。そうして、デートが終わる前にフィナーレとしてウィッグを取ってネタバラシ。どうだ?これなら、いつもの福城先輩と清楚な福城先輩の違和感も取り除けるし、なんなら未開先輩の方がデート中に気付くかもしれない」
「おおっ……!それはすげぇな!」
よし、福城先輩には好感触だ。
あとは、2人の意見だけど……
「まあ……元々難易度が高い案件だったし、幸成の案が最善策かもしれないわね」
「そうですね……対案を出すにしても他にいいものが浮かびません」
「なら、この計画を実行する運びで準備に入るってことでいいか?」
「私はそれでいいわよ」
「私も異論ありません」
「アタシもだ」
「じゃあ、決まったことですしそれぞれの役割分担を決めましょうか?」
「役割分担?」
福城先輩が首を傾げた。
まあ、残念ながらまだ何にも準備ができていないものでね。これから、揃えなければならないものがたくさんあるんだ。
「計画は練っていたんですけど、その備品とかはまだなんにも用意してなくて」
「備品だと?例えば、何があるんだ?」
「1番の目玉だと、やっぱり清楚系の衣装ですね。福城先輩持ってたりしますか?」
「そんなの持ってるわけねぇだろ」
「ですよねぇ……」
なら、衣装係も必要と。
「あと、メイク係もいりますね。清楚系にするとなると福城先輩のいつものメイクだと合わないですし……誰か適任がいれば…」
「幸成」
「ん?由紀どうした?」
「それなら、力になれるかも…」
「本当か?」
「ええ、具体的には私の友人になるんだけど、メイクがとっても上手い子がいて……」
「ああ、一林か?」
俺がそう尋ねると由紀はコクリと頷いた。
「福城先輩、もう1人助っ人を呼んでもいいですか?」
「もうこのさい構わん。好きにしてくれ」
「わかりました」
「じゃあ、私の方から連絡入れておくわね」
「頼んだ」
「あの、私は何をすればいいんですか?」
「ああ、相永には福城先輩の口調矯正を頼みたい」
「口調矯正ですか?」
「そうだ。残念ながら今の福城先輩をそのままにして放り出すと、多分一発でバレる。だから、福城先輩のチャットを参考に福城先輩の口調を完璧に仕立て上げてくれ」
「と、とりあえずやってみますが……な、なんか……私の難しくないですか?」
「このなかで一番口調が綺麗なのは相永なんだ。1番適任だと思う。頼むこの通り」
「はあ……仕方ないですね。わかりましたよ。」
小さくため息を吐く相永だったが了承してくれたようだ。よし、あと残ってるのは……
「幸成、私は何をすればいいの?」
まだ役割をもらっていない由紀が不安そうな目でこちらを見る。
大丈夫だ。しっかり、役割は用意してある。
「ああ、そうだな。由紀は俺と一緒に当日使う備品や先輩の服を見に行こうか」
「買い物?」
「そうだ。今度の週末、2人で買い物だ」
〇
『ねえ、ちょっと、いい?』
その夜、みぞれさんから突如チャットが届いた。
福城先輩の計画をより完璧なものとするために入念な準備をしている時だった。
『どうした?なんかあった?』
やっていたことを一旦中止して、スマホを手に取る。
俺が返信するとインジケーターが表示された。
『いや、そこまでのことじゃないんだけど』
『?』
みぞれさんにしては、はっきりせず曖昧な言い回し。不思議に思って首をかじけた。
『そ、その……ラッキーさんは、どんな服装が好み?』
『え?服装?』
急になんなんだ。
脈略もなんにもない質問に反射的に返信する。
『うん、服装』
『急なだなぁ……なんでまた?』
『その……実は今度、彼とお出かけすることになったの』
彼って……きっと、みぞれさんが言ってた気になってる人のことだよな。
ついにお出かけする仲までになったのか。
『それは、めでたい!おめでとう!』
『そ、そんな祝うほどのことじゃないから』
『でも、内心嬉しいんだろ?』
『嬉しく……はあるけど!今は、そんなことを話してる場合じゃないの!』
『そうだな、服装の話だったな』
小っ恥ずかしいのか露骨に話題を変えようとするみぞれさんの話に乗ってやることにした。
察するにどんな服装をしていけば男子ウケがいいかわからないから俺に聞いてきたということだろうが……
けどなぁ……
男子だってそれぞれ好み違ったりするからなぁ……
俺が好きな服装なら胸を張って勧められるがそれではいけない。
だって、俺がデートするわけじゃないんだし。
『う〜ん、服装って言っても好みが色々あるからおすすめするのは難しいな。俺とその人の好みが一緒ってわけじゃないだろうし』
『で、でも……奇跡的に同じってこともあったりするんじゃない?』
『いや、それはないんじゃないか?』
アブノーマルな趣味をしている自覚はないけど、この季節……つまり、冬コーデもそこそこあるわけだし。
的確にアドバイスできる自信がない。
『ラッキーさんの趣味はどんな感じなの?』
『唐突にエグいこと聞くなぁ……』
なんか方向性まで怪しくなってしまいそうだ。
『これ、本当に言わなきゃダメか……?』
『うん。参考まででいいから教えて』
『………参考にならなくても怒るなよ?』
『もちろん。怒らないわ』
そこまで頼まれてしまっては仕方ない。
あまり乗り気ではなかったが俺はみぞれさんに理想のコーデを話した……ら
『ばか……』
『え…?』
『さ、さすがに2次元に影響受けすぎよ。そんな格好出来るわけないでしょ!』
と言われた。
マジかよ。
俺の理想のコーデ、ダメだったらしい。
でか、アウトなんか。
じゃあ、これからは胸にしまって墓までもってこ……
質問に答えただけなのに何故か心が傷ついたのだった。




